ジュリアンの逆襲④
セイラ(母)side
目の前の主人……
あの間抜け面の男を、どうして私は一途に想っていたのかしら…
あー、初恋を拗らせてしまった私って本当にバカみたい。100年の恋も覚めちゃったわね。
*****
――15歳の頃。
「お父様、エイディラン家の三男・ナオト様と結婚できるなんて、嬉しくて舞い上がっちゃいますわ!もうすぐナオト様は私のものですもの!」
「セイラ、良かったな。ポーツ家から支援金も渡したし、結婚も安心だ」
三日後の結婚式が待ちきれず、胸が高鳴る毎日。けれど、ある日見てしまったの…
ナオト様が他の女性と抱き合っているところを。
「お父様、ナオト様が……」
泣きながら訴えると、父は衝撃の事実を告げた。
「セイラ、ナオト殿には昔から両思いの相手がいるらしい。しかし身分が違うので結婚はできない」
結婚しても、ナオト様はあの女と繋がっていた――私の心は闇に沈む。
でも、その闇を逆手に取ることに決めたの。
そして、私とナオト様の赤ん坊――ジュリアンが誕生。
だけど、彼女の瞳や髪の色はナオト様と違う。ナオト様の冷たい視線に胸が痛む。
「セイラ、この子は本当に私の娘なのか?」
愛する人に疑われるなんて……
こんなに愛しているのに、それと同じくらい憎い。
さらに、愛人の子が生まれたと聞き、私は涙が止まらなかった。
髪も瞳も旦那様そっくり
プライドをズタズタにされ、悔しさと悲しさが混ざる。
その悔しさを小さな復讐に変えることにした。
旅芸人を使い、旦那様の溺愛を独占。情事を装ってアンナを授かる計画――。
成功するかは分からないけど、私の精神を守るためには必要だったの。
*****
――時は流れ、
ジュリアンが成長した頃。
ランディー伯爵から夫の不正に関する書類が届く。
夫は裏で愛人の息子を家督に迎え入れようと画策していたのだ
――馬鹿な人。
書類を見て私は決意する。
「ジュリアン嬢との婚約は白紙に戻します」
――その言葉を受け、私は娘に向き合う覚悟を固めた。
久しぶりに目の前のジュリアンを見た時、息を飲む。曾祖母の肖像画と瓜二つ――やっと気づいた、私は娘に酷い仕打ちをしていたと。
「久しぶりね、ジュリアン。見ない間に綺麗になったわね」
「……」
「婚約は破談になったわ。ジュリアン、貴方、ポーツ家の家督を継ぐ気はないかしら?」
一瞬の驚きの後、力強く頷くジュリアン。
「お母様、私が家督を継いでもよろしいのですか?」
「もちろん。貴方はポーツ家の正統な血筋ですもの」
彼女の笑顔に、私も心の底から微笑む。
これから、娘には軽蔑の眼差しを向けられるかもしれない。
でも、私が犯した罪は、この身で償う――その覚悟だけは、できているのだから。




