ランディの決意
ランディSide
最愛の妻を亡くしてから、ようやく一年が過ぎた。
心の整理もつき、娘ローラのためにも、亡き妻のためにも、これから前向きに生きようと決めていた。
最近、いくつか再婚の話が舞い込むようになった。
娘の成長を考えれば、新しい母親を見つけるのは悪くない。しかし、現実はそう簡単ではなかった。
どの話も、なかなか上手く進まず頓挫してしまったのだ。
だが、また新たに話が舞い込んだ。
相手の女性は最近婚約を破棄されたらしく、心に傷を負っているらしい。
まずは娘に会わせ、反応を確かめたいと思った。
しかし、そんなに甘くはなかった……。
目の前にいるのは、まだ幼すぎる少女。
礼儀正しく挨拶してくるその姿に、思わず興奮してしまいそうになった自分を戒める。
それに、ポーツ伯爵の理不尽な言動を目の当たりにすると、ジュリアン嬢に同情せずにはいられなかった。
二回り以上年上の男に嫁がせようとするなんて、娘を傷つけるだけだ。
これは娘のためにも、絶対に避けねばならない――。
◇ ◇ ◇
少しの間、ジュリアン嬢と話す機会が訪れた。
父親との確執や婚約破棄の話を少しずつ聞くうちに、その境遇に深く同情する。
「ジュリアン嬢、この結婚について、どう思っているんだい?」
「まず、結婚とか無理ですよ!
私はまだ14歳ですし、ローラちゃんの継母になるには若すぎます。貴方の妻になるにも、幼すぎます!」
しっかりとした口調に頷くランディー。
年齢の差や状況を考えれば、その通りだ。
「ランディー様は、お相手の女性がどんな方か、確認なさらなかったのですか?」
「恥ずかしながら、子持ちの男が再婚するのは難しくてね。
いくつか話はあったんだが、上手く纏まらなかった。
相手も婚約破棄されたと聞き、傷を抱えているなら会ってみたいと思ったんだ。
まさか歳が二回り以上も離れているとは思わなかったが……」
シュンとする自分に、ジュリアン嬢が優しく微笑む。
14歳とは思えぬ大人びた雰囲気を纏っており、感心すると同時に複雑な気持ちが胸に去来する。
◇ ◇ ◇
そして、事件は次の日に起こった。
ポーツ伯爵の横暴な言動により、ローラの本音を聞くことができたのだ。
「ローラ、新しいお母さんはいらないのかい?」
「違うもん!お姉ちゃんはわたちのお母しゃまにならないもん!
わたちのお母しゃまは一人だし、お星さまになって見守ってるんだもん!
お父しゃまの奥さんもわたちのお母しゃまだけだもん!」
この言葉を聞いた瞬間、ランディーの決意は固まる。
娘のためにと考えていた結婚だが、悲しませるだけなら、するべきではない――。
そしてその決断は、ジュリアン嬢の運命にも大きく影響を与えることになるのだった。




