父親の陰謀
「ジュリアン、喜べ!明日、ランディー伯爵がお前に会いに来るぞ」
……えっ!?
知らない間に婚約話が進んでるんだけど。
「お父様、こないだ私の方からキッパリお断りしましたよね?」
「生意気言うな!
我が家の財政はアンナの婚約で火の車だ。
ランディー家からの援助が来るから、早めにお前を嫁に出す」
……はぁ?
結局、金かよ!?
私、売られるの!?
「お父様、アンナの婚約で家が火の車って……どういうことですか?」
「アンナの婚約の口利きで、金をバラ撒きすぎたのだ」
……は?
目が点になる。
父親、言ってることがもう正直すぎて怖い。
そして私の婚約が、アンナの損失補填……って、なんなのそれ。
(私って本当に貴方の娘だよね!?
橋の下で拾われてきたんじゃないの……?)
「お父様、私も貴方の娘ですよね?」
「何が言いたい……」
「酷い仕打ちに胸が痛みます!」
父親、顔色ひとつ変えず冷たい眼差し。
「何を馬鹿なことを……。
我が娘に間違いないだろう。
ポーツ家の長女として生まれたのなら、その身を投げ出すのは使命だ!嬉しいことだろう」
「……アンナは?」
「アンナは、私の宝だ!」
……ぶん殴りたい。
虐待の一種じゃないの、これ?
呆れすぎて涙も枯れるわ。
新たな“ミッション”
断罪は回避したけど……新たな課題が舞い込んできた感じ。
私に、この危機を乗り越えられるのだろうか…
◇ ◇ ◇
馬車に揺られ、ランディー伯爵とその子が我が家へ到着。
「お父しゃま、新しいお母しゃまは……」
五歳くらいの可愛らしい女の子が、舌足らずで話しかける。
……可愛いな。
すると、じっと見つめた後、いきなり抱きついてくる。
「こんにちは、初めましゅて、ローラでちゅ」
そして、ランディー伯爵も端正な顔立ちで登場。
34歳にはとても見えない、若々しいイケメン。
「初めまして、ランディースカイです。」
「ジュリアンです。
長旅お疲れ様です。ゆっくり休んでください」
私の挨拶に、少し戸惑っている様子。
「お心遣いありがとう。
しかし、本当に君がジュリアンかい?まだ子供に見えるが」
……え、年齢確認してなかったの?
父親が慌てて顔を出す。
「遠路遥々お疲れ様。ジュリアンは確かに幼く見えるが、賢い娘だ。良い妻、良い母親になるであろう」
ランディー伯爵、父親をギロリと睨みつける
「娘の母親になる女が、こんな青臭い小娘では話にならん!
ポーツ殿、話が違うではないか!」
……まあ、一理あるよね。
だって私、まだ十四歳だし。
青臭いって言われても目を瞑ってあげる。
父親の顔、急に蒼白。
……やっと重大さに気づいたか。
「兎に角、お疲れだろう。
少し休んでから、詳しい話は明日にでもしよう。
ジュリアン、ランディー様のお相手をして差し上げろ。
全く、気が利かん娘で困る」
苦笑いしながら、ランディー伯爵とお嬢ちゃんを部屋へ案内。
「さっきは口が滑ったとはいえ、酷い言葉を言ってしまった。すまなかった」
……顔面だけでなく中身もイケメンだ。
「いえいえ、こちらこそ。
私のような子供が相手で驚かれましたよね?」
(精神年齢はおばちゃんだけど)
心の中で舌を出す。
「それにしても、君は本当にこの婚約に納得しているのか?」
……嫌々だよ。
私の意見なんて通るわけがない。
「……でしたら、ランディー伯爵の方から断って頂けませんか?父は私の言葉に耳を傾けませんから」
俯く私を見て、ランディー伯爵は察したようだ。
同じ父親として、信じられない、あり得ないと呟いている。
(……良い人じゃん、ランディー伯爵)




