ケイゴとランチ
「あーマジでビビった……。
また流されるところだったわ!」
自分で決めたことだ。
これ以上レンと関わらないようにしなきゃ。
◇ ◇ ◇
「なぁ、今度アンナとレンの婚約披露パーティー、大々的に開かれるんだろ?」
「そうみたいだよね」
最近の日課になりつつある、あの大きな木の木陰。
レジャーシートを敷き、弁当を持参して昼食をとるのが唯一の楽しみだ。
「それにしても、この卵焼き上手すぎるな!」
気づくと、ケイゴが私のお弁当のおかずをつまみ食いしている。
「もう、たくさんあるからゆっくり食べなよ!」
取られまいと口いっぱいに卵焼きを頬張る私。
「取らないから、もっと食べろよ」と言うケイゴに笑いながらも、つい頬が緩む。
「アンナとレンの婚約パーティー、出席するのか?」
ため息が出る。
元婚約者と現婚約者との“共演”?
しかも、私を笑い者にしたいのか、アンナの力を誇示したいのか……居心地が悪すぎる。
「出来るなら出たくない!だって一緒に行くパートナーもいないし」
「俺がパートナーじゃ不服か?」
目が輝くケイゴに、思わず両手を握り感謝の意を示す。
「えっ!?もしかして、私のパートナーとして一緒に出席してくれるの?」
「別に嫌ならいいんだけど……」
「わぁー!絶対一緒に行く!
ケイゴがパートナーなら、惨めな思いしなくて済むもん!」
「何で俺じゃ惨めな思いしないんだよ?」
「そりゃ、その顔面は眼福対象だからよ!」
「ガンフク!?」
ケイゴの疑問に答えず、興奮しすぎた私は勢いで約束を迫る。
「今更やめたとかナシだよ?絶対、絶対だよ!約束ね!」
耳まで真っ赤にしたケイゴが、「オゥ……」と気のない返事をする。
よし、これで悩みが一つ解決した。
「しかし、ベントウって便利だよな」
この世界には弁当なんてものはないらしい。
でも、婚約破棄された令嬢として注目される私にとって、視線を避けられる弁当持参は最高の作戦だ。
お抱えシェフにレシピを渡し作ってもらったお弁当。
今日のメニューは卵焼き、ウィンナー、唐揚げにパン。
「しかしこの肉もうまいな!こんな上手い唐揚げ、初めてだぞ!」
「でしょでしょ!味もついてて美味しいでしょ?」
本当はおにぎりも作りたかったけど、この世界には米がほとんど出回らないらしい。
パンだけじゃ飽きるけど、仕方ない。
口にいっぱい頬張るケイゴがむせそうになったら、私が水を差し出す。
「生き返った!」
魔法瓶代わりの細長い水筒の魔道具も、中の水は昼頃まで冷たさを保ってくれる。
準備万端の私のランチに、ケイゴは満足げだ。
ちゃんとデザートもある!
今日はシュークリームを持参。
お抱えシェフに作ってもらったものだけど、かなり美味しい。
「あ、もうクリームついてるよ!」
口元についたクリームを指で拭い、それを舐める私に、目の前のケイゴは真っ赤になって固まる。
意識されると、こちらまで照れてしまうじゃないか!
「ご、ごめん」
「……べ、別にいい」
お互い意識しまくりで、居心地が悪いけど……ちょっとドキドキする瞬間。




