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ジュリアンの暴走

「おはよう、ジュリアン」


「おはよう、ケイゴ」


お互い照れくさそうに視線を外す。

なんだか、妙に気まずくて――調子が狂う。


「今日も派手な化粧は封印してるのか?」


「もう封印に決まってるじゃん!

あの魔女みたいなメークなんて二度とやらないよ!」


 今日もナチュラルメイク健在!

ドリルみたいにきつく巻かれた髪は緩く束ねてポニーテール風に。

この世界ではあまり見ないスタイルだけど、絶対可愛いから流行らせたい!

だって、ウナジ見せたもん勝ちじゃん!


「今日のジュリアンも可愛いな」


ボソッと頬を染めながら言うケイゴ。

……プレイボーイかよ。


「もしかして、口説いてる?」


「はぁ?口説いてねーよ!

たまに褒めてやればこれだ!

これから絶対褒めてやらねー」


「ごめん、ごめん!そんなに怒らないでよ!」


 両手を合わせて上目遣いで謝る私に、

彼は照れくさそうに「分かればいいんだよ」って顔。


……可愛い奴だな。


 その瞬間、視界に飛び込んできたのはアンナとレンの姿。

ラブラブ光線全開の2人を見て、ケイゴも参ってるみたい。

……まぁ、自業自得だよね、私。


性格悪いな、私。

でも元は悪役令嬢だもの――仕方ない。


 最近、ジュリアンの意識と完全に融合したのか、

過去の辛い思い出も、彼女の思考も全部鮮明に甦ってきた。


 でも体が鈍ってるのが困りもの。

この世界、メイドさんがほとんど全部やってくれるから、

自分で動こうとするとソラが必ず止めに入るんだよね。

忠誠心、方向性間違ってるよな……。


このままじゃ太っちゃうかも――。


   ◇ ◇ ◇


休み時間、裏庭へ向かう。

誰もいないから、軽く体を動かすチャンス!


「よし……ドレスの裾が長すぎる……」


 周りをキョロキョロ見渡すけど、誰もいない。

よし、今だ!とスカートをまくり上げ、足を露出させる。


「ミュージックスタート!!」


鼻歌を歌いながら、体を動かす――

「イージー・〇・ダンス!イージー・〇・ダンス!」


 前世でハマってたエクササイズを思い出す。

毎日頑張ってたけど、甘いもの食べちゃって全然痩せなかったっけ。


「イージー・〇・ダンス!イージー・〇・ダンス!踊る君を見てる……イージー!」


 夢中になりすぎて、気づいたら目の前に――

驚愕して固まってるレンが立っていた。


 思わず、たくし上げていたドレスの裾を慌てて下ろす。

……なんでここにいるの?

真っ赤になって固まる俺様を前に、心臓がバクバク。


「お前がやってるのは何だ!」


「エクササイズダンス!?」


 変なものを見るような目で私を見ているけど、

頭が可笑しくなったと思ってるのかしら……。


 顔から火が出そうなくらい恥ずかしい……

このままじゃ罰されちゃうんじゃないかって思うくらいだ!


すると、レンの次の言葉に――


「その不思議なダンスを、どこで習ったんだ!

俺もやってみたい!」


……えっ?

不敬罪とかじゃなくて、むしろ興味津々?


 心の中で突っ込んだけど、返事はなし。

……やっぱり、レンって謎すぎる!


「えっ!?このダンス、踊りたいのですか?」


「そうだ」


まさかの返事に戸惑う私。


「ジュリアンはどこで習ったんだ?」


 ……前世のことなんて口が裂けても言えない。

黙っていると、レンの目が真剣すぎて余計に困る。


「もう、婚約破棄したからといって、俺と話さないつもりか?」


「そういう訳じゃ……」


 正直、面倒くさい。

元とはいえ会えば誤解も生まれるかもしれないし……。


「レン様、私たちはもう婚約破棄した間柄です。

アンナという新しい婚約者がいるのに、私と逢瀬していると、変な誤解を招きかねません」


「まだアンナと結婚することが決まった訳じゃない!

あくまで婚約者としているだけだ!問題なんてないだろう?」


必死すぎて、上手く断れない私。


「ジュリアンとは婚約破棄したが、幼馴染みとしての縁は切れてないだろう?」


……そ、そうね。


「わ、分かりました!

今日だけ、一緒に踊りましょう!!」


 私の言葉に、レンは嬉しそうに笑う。

この笑顔、やっぱり好きだった……。


 思い出が次々に溢れる。

婚約中は、こんな風に笑顔を交わす時間なんてほとんどなかったのに。

お互いの思いが、ボタンの掛け違いみたいにズレてしまってたのね……。


「まずは右足を横に動かして、次に左に移動して、右手は胸でグッパ!」


「グッパって何だ?」


 あっ、そりゃ分からないよね。

真剣な顔で聞かれると、笑いのツボに入っちゃう私。


「クックックッ、ヤバイ、腹痛い!クックッ」


 涙目で笑い転げる私を、レンはキョトンと見ている。


「手を握るのがグーで、手を広げるのがパー、ちなみにこれはチョキです」


「えっと……握るのがグーで、広げるのがパー……こうやるのか?」


「クスクス、そうです!」


「な、何が可笑しいのだ?」


 少しムッとした顔で抗議するレンが可笑しくて仕方ない!


「可笑しくないです!じゃ、次のステップ行きます!

ここはバッと後ろに腰を捻って……」


 見よう見真似で必死についてくるレンの姿、面白すぎる!

昔、もっと交流していたら、違う未来があったのかもしれないな……。


 ふと、昔の努力していた自分を思い出して、少し切なくなる。



「その歌は何っていう歌なんだ?」


「イージー・〇・ダンスですか?……うーん、説明は難しいですね……」


 前世の人気曲とは言えないし、ここは嘘も方便。


「内緒ですが……私が作りました」


……。

一瞬、空気が固まった気がする。


 や、やばい!嘘ついちゃった!

神様に懺悔しなきゃ……。


「す、凄い才能だな……

ジュリアンは音楽の女神に愛されているんだな……

それなのに俺は、お前を蔑ろにしすぎていた。

本当のお前を見ようともしなかった……これは罰かもしれないな」


 レンが髪に触れて、愛おしそうに見つめる。

ドキドキして心臓が爆発しそう……。


 おい、なんなんだこの空気!?

また接吻寸前じゃないか……。


「レン、そろそろ戻らないと。

久しぶりに子供の頃に戻ったみたいで楽しかったわ。

でも、もうレンと二人きりで会うことはできない」


 そう言うと、私はその場を立ち去った。


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