表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/33

ケイゴの優しさ


「……もう、泣き止んだか?」


 少しだけ間を置いて、ケイゴがそう聞いてきた。


「うん……ごめん、ありがとう。ケイゴの洋服、汚しちゃったよね」


胸元を見下ろしながら言うと、


「別に。たいしたことねぇよ」


ぶっきらぼうな返事。


でも――

自分の言葉に照れたのか、視線が微妙に逸れる。


 ……なにそれ、可愛いんですけど。


 普段は俺様全開なのに、

こういうところで不器用な優しさ出してくるの、反則でしょ。


「……ごめんね。

私の醜態、見せちゃって」


 そう言うと、ケイゴは少しだけ困ったようにして、軽く頷いた。


それから、沈黙。


でも、不思議と居心地が悪くない。


 むしろ――

胸の奥が、すーっと落ち着いていく感じ。


……なんだろう。

ケイゴといる時間って、やけに癒される。


そんな空気をぶち壊すように、


「……それにしても」


ケイゴが私の顔をまじまじと見て、


「その顔面。

マジで“お前誰だよ”なんだけど?」


「ふふ」


思わず笑ってしまう。


「清楚バージョンよ。

やっぱり男の人って、こういうのに弱いのね?」


そう言って、軽く肘でグリグリ。


……すると。


「っ……!」


 ケイゴの耳が、一気に真っ赤に染まった。


……え、なにこの反応。


 もしかして、見た目に反して純情?

ずっと女遊びが激しいプレイボーイだと思ってたのに……。


「さっきは助けてくれて、ありがとう」


素直に言うと、


「べ、別に助けたわけじゃねぇし…必然的に、そうなっただけだ」


……はいはい。


完全に照れてるじゃん。


さっきより顔赤いし。


ほんと、可愛い奴。


「……レンとの婚約は、どうするんだ?」


ふと、真面目な声になる。


「もう解消してるよ。

アンナが新しい婚約者だし。

皆、それを望んでる」


「……ふーん」


なんとも気の抜けた返事。


「……レンが、諦めなかったら?」


その一言に、胸が少しざわつく。


「……ねぇ」


私は空を見上げた。


「レンって、何考えてるんだろうね?

あんなにアンナにご執心だったのに……

私がちょっと綺麗になっただけで、心変わりすると思う?」


「……」


 少し考えてから、ケイゴが鼻で笑う。


「やっぱりお前、ジュリアンだな」


「え?」


「その、自信満々なところ。

そこは全然変わってねぇ」


……それ、褒めてる?


「ねぇ、それって褒めてるの?」


「クックックッ、褒めてねぇだろ」


「……クスッ」


気づけば、同時に笑っていた。


「……なにかあれば」


ケイゴが、少し低い声で言う。


「……俺を呼べ」


胸が、ほんの少し跳ねた。


「え、もしかして……

私に惚れちゃった?」


「ばっ……馬鹿言うな!!

そんなわけねぇだろ!!」


真っ赤になって全力否定。


……いやいや、冗談なんだけど。


「もう、プレイボーイなのか、ただの純情ボーイなのか、理解に苦しむわ!」


ケイゴが眉をひそめる。


「なぁ……

お前、時々変な言葉使うよな。

“ぷれいぼーい”って、なんだ?」


………あ、


……現代用語、またやった。


「えっとね……

色んな女性と浮き名を流す、恋愛マスターって意味」


「……ますたー?」


さらに眉間に皺。


「……簡単に言うと、恋多き男ってこと!」


すると、ケイゴの表情が一気に渋くなる。


「別に、そんなんじゃねぇし。

向こうから来るから、拒まないだけで……」


……それ、普通にプレイボーイ発言です。


 やっぱり間違っても――

ケイゴに惚れたら火傷する。


絶対。


絶対に。


……でも。


 そう思えば思うほど、

胸の奥が、ちくりと痛んだのは、気のせい、よね……


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ