おばちゃんが転生した?
他サイトで投稿していた小説を改訂してアップしてます。
「貴様とはこの場を借りて婚約を破棄する!
ジュリアン・ポーツ、今日限りで俺の前から消えろ!」
「レン様……なぜ、そのような戯れを?」
「貴様が俺の可愛いアンナを虐めていたからだ」
「覚えはございませんわ!
なぜ私ではなく、その女を信じるのですか?」
「アンナへの侮辱は許せん。問答無用だ」
冷たい視線が突き刺さる。
……ああ、終わった。
どれだけ否定しても、結末は変わらない。
私は、あの女に負けたのだ。
◇ ◇ ◇
耳元で、かすかな声がした。
「お嬢様……お目覚めください」
張りつめていた空気が、ふっと消える。
代わりに、小鳥のさえずりが耳に届いた。
眩しさに目を細める。
……夢?
「おはようございます、お嬢様」
声をかけてきた女性は、私の顔色をうかがいながら立っている。
その様子が、どうにもおかしい。
「ここは?」
「高熱を出されておりました」
……お嬢様?
嫌な予感がして、自分の手を見る。
白くて細い。どう見ても私の手じゃない。
……は?
慌てて体を起こし、鏡の前へ向かう。
背後で、メイド服の女性が落ち着かない様子で立っていた。
鏡に映っていたのは、見覚えのない美少女だった。
……誰!?
いや、綺麗すぎでしょ!
私は三十路の子持ちおばちゃんのはず。
出産してからは体型も崩れて、夫に「詐欺だ」なんて言われる側だったのに!
「お嬢様……大丈夫でしょうか?」
心配そうな声に、口が勝手に動く。
「大丈夫よ、ソラ」
その瞬間、頭の奥がじん、と熱くなる。
一気に、記憶が流れ込んできた。
伯爵令嬢、ジュリアン・ポーツ。
……待って。
それ、私が前世でハマってた乙女ゲームの悪役令嬢じゃない?
ここって、まさか……ゲームの世界?
思い出される未来。
断罪。
婚約破棄。
追放。
「……詰んだ」
思わず漏れた本音に、ソラが固まる。
そうだ、彼女は私の専属メイドだった。
こうして私は、前世の記憶を思い出した。
死因も名前も思い出せない。
でも三十路で子持ちだったことだけは、やけに鮮明だ。
医者に診せられ、体調は問題なし。
それを聞いて、ソラはようやく安堵の息をついた。
……この子、優しかったよね。
つまり前の私は、相当ひどい令嬢だったはずだ。
大丈夫。
まだ、やり直せる。




