45.道連れ
「……お願いよ、カリスト様。こんなことはもう止めましょう。アルフォンソは私達の大切な息子ではありませんかっ!」
オフェリア様?
「昔の、あの優しかった頃のカリスト様に戻って!
……私を愛していると……言ってくれたではありませんか……」
オフェリア様の瞳から綺麗な涙がポロポロと溢れ出す。
……嘘。まさか、まだ国王のことが?
こんなに気持ちの悪い男なのに、それでもまだ愛していると言うの?!
「オフェリア……そうだな。もちろん今でも愛しているよ。そんなお前が命がけで産んでくれた子だ。私とて出来ることなら命までは奪いたくはない」
「では!」
「分かったよ。こちらにおいで、オフェリア。二人きりで話をしよう。私達は話し合いが足りなかったようだ」
「カリスト様……」
止めて、そんなの嘘に決まってる!
「お待ち下さい、王妃様!これは罠です!!」
「……エスカランテ、ごめんなさい。私はもう一度だけカリスト様を信じたいの」
うそ……今さら愛の為に私達を裏切るの?
ありえないっ!
「オフェリア様!」
「ルシアさん、巻き込んでごめんなさい。絶対に貴方の命は助かるようにするわ。
──ね、耳をかして?」
突然耳もとで囁かれる。でもそれは国王を止める秘策でもなんでもなくて。
「あ……え?」
「しーっ。内緒よ?」
思ってもみなかった話を突然されて、止めようと思っていた言葉が言い出せなくなる。
ねえ……どうしてそんなに綺麗に微笑むの?
まるでもう何も思い残すことはないかのよう──
「エスカランテ。カリスト様が信じられないというなら、貴方はここで二人の盾となっていて」
「……かしこまりました」
「母上……駄目です……!」
「こんなに傷付いて……ごめんね、アルフォンソ。もう少しで終わるから」
そう言ってアルフォンソ様の額にキスをした。
優しい……母としての愛。
「愛しているわ」
「母上!」
ゆっくりとオフェリア様が立ち上がる。
もうこちらを振り向く事はなく、国王のもとに向かって行った。
「カリスト様。私は本当に貴方様をお慕いしておりました」
「なぜ過去形なんだい?」
「……どうか信じさせて下さいませ」
「もちろん。愛しているよ、オフェリア」
そう言って国王がオフェリア様を抱きしめた。
そして──
「エスカランテに多少傷が付いても構わん。奴らを殺せ」
分かっていたけど!このド屑っ!!
今、魔法が使えないのが本当に悔しい!
こんな奴、永遠に毛根死滅させてやるのに!!
「カリスト様は私を騙したのですね」
「君だって本当は分かっていただろう?それでも私を選んだ。今までと同じだよ。そんな愚かな君は本当に愛おしい。愛しているよ、オフェリア」
まるで本当に愛しているかのように嬉しそうに口付ける。気持ち悪い、オフェリア様が汚れるから止めて!
「……さようなら、あなた。
『盟約は成された!捧げし3つの魂を糧に、カリスト・エルディアに死の祝福を!!』」
オフェリア様の叫び声と共に鮮血が飛び散る。
隠し持っていた暗器で自分の首を切った!
「オフェリアっ!何を……ッぐっ!!」
突然国王が苦しみ出す。
胸を抑えながらオフェリア様に手を伸ばした。
「お、前、何を……した!」
「……呪い…よ…あなた、を……殺す…、無効化……出来ない……辺境伯…夫妻……と、私から……プレゼント……」
「私の防御魔法は完璧なはずだっ!」
だめ、きえちゃう……
「早く装置を止めて!オフェリア様が死んじゃうっ!馬鹿みたいに喋ってる場合じゃないでしょう!!」
「……だめ……」
オフェリア様がそっと国王の頬を撫でる。
どうしてそんなに優しくするの!
貴方の人生を狂わせた男なのにっ!!
「オフェリア……だめだ……死ぬなんて許さない!」
「……あなたは…、さびしがりやだか…ら……わた、し…が…一緒…に……」
「だめだ、いくな、逝かないでくれっ!」
あ……オフェリア様は、もう……
「ぐあっ、クソックソッ!!」
胸の痛みに耐えながらもオフェリア様を離さない。
なに……まさか本当に愛していたとでも言うの?
魔法で縛り、利用して、監禁までしていたのが愛?
……狂ってる……
「……ハハッ、呪いだと?この程度の痛み……残念だなオフェリア。私の防御魔法の方が……上だっ!
ぐっ、そうだ、お前のクローンを造ればまた…」
「これ以上、母上を汚すな!」
「動かないで、出血が酷くなる!」
アルフォンソ様の顔色が悪い……早くしないと助からない!いやだ、いやだ、死ぬなんてダメ!どうしてこんなに役に立たないの!医療魔法士なのに!!
「うるさい!お前がさっさと死なないから!
早くアルフォンソを殺せっ!!」
「やめて!オフェリア様を本当に愛しているなら、あの方の望みを叶えてよっ!アルフォンソ様を助けて!!」
「うるさいっ!お前も一緒にあの世へ行け!
──撃てっ!」
ズンッ!
重い射撃音が、響き渡った──




