42.撹乱作戦
痛い痛い痛い!ちょっと!?オフェリア様は我慢強いにも程がありますっ!!
リンクして大正解。こんなの絶対に心臓が止まってた。と言うより心臓が破裂してたわ。
「大丈夫かルシア」
「……死ぬかと思いました。オフェリア様はもう少し正確に症状を教えて下さい。我慢し過ぎは危険ですよ」
「あの、ごめんなさい?」
絶対に分かってないわ。……本当にずっと我慢を強いられてきた人なんだ。
「いいですか、これからの課題ですよ。痛かったら痛いとすぐに言うこと!」
オフェリア様が驚いている。こんなことを言われるのは初めてなのかしら。
「ふふ、分かりましたわ。貴方は本当に素敵な女性ね。アルフォンソのそばに貴方の様な人がいてくれて嬉しいわ。これからもよろしくお願いしますね」
「……ありがとうございます?」
やだ、美人の笑顔は素晴らしすぎるわ。
アルフォンソ様の側にって言われても、ねぇ。
「殿下!解呪成功です!」
「ありがとう、感謝する。さて、この後どうしようか」
ドォーンッ!!
今までで一番の衝撃音。でも、音の出処が違う?
「なんだ?別の攻撃か!?」
「これは……リカルド達が来たか」
「来ましたね。それも王宮に思いっきり攻撃してるみたいですね。迷いがないなぁ」
いや宰相閣下、そんなにのん気に話さないで!でもリカルド様が来てくれたのね。よかった、間に合った!
「どうやって合流しようか。このまま私達が人質になったらお終いだ。宰相と母上を必ずリカルド達に合流させる。それが最優先だ」
「そんな!殿下だって!」
「エスカランテ、もちろん私も死ぬつもりはない。だが、絶対に勝つ為にはあなた達が必要なんだ。
あとルシア。君は母上に付いてくれ。必ず二人を無事に連れ出したい」
ずるい。そうやって私を守ろうとするなんて!でも、助ける為と言われたら従うしかない。
「分かりました。オフェリア様、私から離れないで下さいね。傷なんて全部治しまくりますから!」
「……分かったわ」
「でもどうします?結界を解いた途端、攻撃が来ますよ。せめて少しでも不意がつければ」
「あ、はいはい!私がやります!」
「ルシアが?」
「はい。不意を突けばいいんですよね?」
◇◇◇
「くそ、結界が硬いな。殿下の仲間にこんなに強力な結界が張れる人間などいたか?」
「分かりません!それより、辺境の奴等が来ました!」
「焦るな。殿下達さえ捕らえることが出来たらどうにでもなる!とにかく急いで結界を壊すんだ!そろそろ向こうも限界のはず……」
バンッ!
突然扉が開いた。
「な、殿下?」
パサッ
「……は?」
パサパサパサッ
「な、な、ギャ──!!俺の髪がっ!!」
「俺もだ!」
「やめろ、やめてくれー!!!」
なんで!髪が、俺達の髪が抜け落ちていく!
これが殿下の呪いなのか!?
「いやだ、死にたくない!」
「助けてくれ!!」
「殿下、お許し下さい!」
「エスカランテ、今だ!」
バリリッ!
しまった、宰相閣下の電撃攻撃!
だが、髪に気を取られ、誰一人防御魔法を使うことが出来なかった。
◇◇◇
まさにそこは地獄絵図。
「ありがとう、ルシア。やっと毛根死滅魔法をこの目で見る事ができたよ。素晴らしいね!」
「お褒めに預かり光栄です」
輝く頭がそこかしこに転がっている。
殿下以外の男性陣はすっかり顔色を悪くしていた。
「こんなに大人数に掛けて魔力は平気か?」
「オフェリア様の魔石のおかげで可能でした。この魔石……ありがたいけど危険ですね。威力が強過ぎます」
どうやらこれも駄目魔法具の一つのようだ。
「20年以上の凝縮した魔力ですもの。少しだけ普通の魔石より強力なのよ」
絶対に嘘だわ。
「怖い女達だな……俺は二度とルシアには逆らわんぞ」
「……私もだ」
コソコソとガランさんだけでなく、宰相閣下まで何かを囁いている。
「さあ行こうか、リカルド達に合流するぞ」