41.攻撃
なに、何が起こったの?
さっきまでアルフォンソ様と笑っていたのに。
リカルド様からゲンコツだって……
「結界を張った!でも長くは持たない!王妃様の解呪を急いでくれ!」
セシリオの結界が無ければ危なかった……
それは突然起きた。宰相室への攻撃魔法。
王宮には攻撃を防ぐ為の結界が敷かれているにも関わらず、攻撃が届いた。
それは、誰かがここの結界を解いたからだろう。そんな命令が下せる人間は国王陛下だけだ。
「この魔石を使いなさい!」
王妃様がセシリオとガランさんに魔石を渡してくれた。
「あなたも念の為持っておいて」
「ありがとうございます。お借りします」
宰相室にいるのはたったの8名。どうしたらいいの?
「大丈夫だ、ルシア。信じてくれ」
「でも、このままでは!」
「私の勘が大丈夫だと言ってる。今は母上の解呪のフォローを頼む」
本当だろうか。私達を安心させるためではなく?
……この人を信じて付いて行くと決めたのは自分でしょう。覚悟を決めなさいよ!
「取り乱して申し訳ありません。ガランさんの補助にまわります」
「ああ、頼む」
今私に出来る事をしよう。王妃様の負担を少しでも減らさなければ。
「ルシア、悪い。まだ完全に読み込めてない。王妃様への負担がデカくなる可能性が高い」
「分かりました。オフェリア様、時間が無いため解呪が少し強引なものになります。お体に負担がかかる危険性がありますが本当によろしいですか?」
「もちろんよ。この時をずっと待っていたの。よろしく頼むわ」
「分かりました。バイタルチェックの為お体に触れますね。リラックスしてください。ガランさんお願いします」
「セシリオ大丈夫か?」
「殿下、魔石のおかげでなんとか。攻撃もここを突破するのが目的で殲滅させるつもりは無いようです」
「……そうか。宰相と母上は生かしておきたいのだろう。よし、手伝うよ」
「え、ありがたいですが、殿下は魔法が使えたのですか?」
「補助魔法だけどね。得意なのは強化魔法。君の結界の強度を上げるぞ」
「え、え、え!?すげぇっ!!じゃない、凄いですね!これならかなり持ちそうです!」
ちょっと待って。なんだかすごい会話が聞こえた気がする。アルフォンソ様の強化魔法って魔法自体に付与出来るの!?
今は結界だからいいけど、攻撃魔法を強化されたら……アルフォンソ様が味方でよかった!
さぁ、こちらも急がなくては。
「この魔法は五重掛けだ。一つ外すごとに対象に攻撃が加えられる。エスピノは攻撃の相殺、ルシアは保護のタイミングを合わせてくれ」
「分かりました」
なんて嫌らしい魔法なの。解除したら死ぬ様に仕掛けられてるなんて。チェスティ国もこんな危険な魔法はしっかり封印もしくは完全破棄して欲しかった!
生き残れたら絶対に抗議してやるんだから!
思ったより時間が掛かる。それに攻撃が重いっ!
エスピノさんが相殺してくれてもかなりの反動が来る。保護を掛けてはいるけど、オフェリア様もかなり苦しいはず。泣き言一つ言わずに耐えてくれているけど、解呪はまだあと2つ。このままでは……
「オフェリア様、私と魔力でリンクさせて下さいませんか」
「……リンクする?」
「はい、このままでは最後までオフェリア様の体が持ちません。リンクすることによってオフェリア様への攻撃を分散させることが出来ると思います」
「そんな!あなたの体への負担が大き過ぎるわ!」
「ですが、もしオフェリア様に何かあれば、この計画は失敗に終わります。それに勝算が無いお話はしませんよ。私は博打師ではありません。医療魔法士ですから。無理な治療法は提示しませんよ」
魔石を使って事前に保護魔法を掛け、リンクすることによって攻撃を分散。確実に生存率が上がる。
それに私自身、魔法が使えるようになってからずっと自分に保護魔法を掛け続けている。人を助けたかったらまず自分の安全から。お父様の教えはちゃんと守ってる。
「ルシア、危険は無いと信じていいんだな?」
アルフォンソ様が聞いていたらしい。
大丈夫、オフェリア様は救ってみせるわ。
「もちろんです。最高の医療魔法士だと認めさせて見せますよ!」
「とっくに認めているさ。それでも心配はさせてくれ。二人とも無事じゃないと駄目だから。間違えないで」
あ、私の心配もしてくれてたのか。そっか。
……うん、頑張りますよ。なんだか力が出た。
「もちろんです!オフェリア様、よろしいですか?」
「……分かりました。お願いするわ」
よし、解呪まであと少し!




