21.酔っ払いの夜
ただいま、バレリアノ。
あの後は特に問題なく、無事辺境にたどり着いた。夕食とお風呂をいただき、なんとなく寝付けなくて中庭を歩く。最初に来た時はヘロヘロですぐ寝ちゃったのよね。
駄目だなあ、いつの間にか帰って来た気分になっている。1年だけでしょココは。
やがてウルタードに帰る。
ん~、でも帰りたいのかな。今までは帰って結婚するって思ってたけどそれは無くなった。
治癒院は好きだけど、医療魔法士長にはなりたく無い。私はずっと治療を続けたい。
書類仕事ばかりは嫌なのよね。
でもこの国で医療魔法士として続けられるのか。男尊女卑のこの国で?
でも免許はあるし、なんでか王子が友達だからいけるか?
いや、家族にも相談しなきゃだし、院長にも相談……
すでにちょっと乗り気ね、私。
でも危険がいっぱいのエルディア国。
悩むなぁ……
「ルシア?こんな時間にどうした?」
しまった、心配させたかしら。
すぐに戻るつもりだったのに、リカルド様に見つかってしまったわ。
「すみません、少し寝付けなくて散歩を。起こしてしまいましたか?」
「いや、俺もまだ起きてた。ルシアは酒は飲めるか?良ければ少し付き合ってくれ」
「やった。いいんですか?」
「ああ、アルには内緒な」
リカルド様がお酒を召されるなんて珍しい。私が眠れないって言ったからかな。でも、お言葉に甘えよう。
「おいしい!」
「意外と飲める口か」
「リカルド様こそ。普段はあまり飲まないですよね?苦手なのかと思っていました」
「変事があった時、酔っていては困るからな。まあ、今日はアルがぐっすり寝ているから何もないだろう」
なるほど。危険探知機が寝てるということは安全ということなのね。
「じゃあ私ももう少し飲んじゃいます」
「程々にな」
特に話す事も無く、静かに杯を重ねる。
無言が嫌じゃないなぁ。
「大丈夫か?」
ん?お酒が?──それとも、振られたことが?
「意外と平気です」
「……そうか。ルシアは……ウルタードに帰るのか?いや、詮索してすまない」
あら。それを聞いちゃうんですか。
「どうしようかな~って。さっきも考えてました。私ね、ここについた時、ただいまって思ったんです。帰って来れたなって。まだ少ししかいないのに困りますよね」
「困るのか?」
「だって一年で帰るのに」
そう、1年。セシリオにエルディア行きを聞いた時は長いと思ったのに、今は短いと思う。
「……ずっと居ればいい」
「え?」
「ルシアが……ずっといてくれたら嬉しいよ」
「!!」
本当に?このまま残ってもいいの?
「あの!本当は残りたいって思っていたんです!でも私はウルタードの人間だし迷惑かと」
「迷惑なわけない。ずっとここに。……俺のそばにいてくれないか?」
真剣な眼差し。嘘じゃない。本気で言ってくれてる!
「……よかった。さっき中庭を歩きながら、どうやって私の思いをお伝えしようか悩んでいたんですよ」
嬉しい、嬉しい嬉しい嬉しいっ!
「ルシア、じゃあ」
「はい!こんな素敵な職場なかなか無いです!リカルド様はいい上司だし、職場のみんなもいい人ばかりだし!よかった~」
嬉しくて、グイッと勢い良くお酒を飲んだ。
おいしい〜〜、よし、もう一杯。
「……職場……上司……」
コクコクとお酒を楽しんでいると、リカルド様が何やらボソボソ呟いている。
「あ、もちろんラファとリコも大好きですよ!」
そう、ラファもリコも可愛いくて愛しい。
あれ?リカルド様がなんともいえない顔をしてる。酔ったのかな。なんか楽しい。わたしも酔ってるかも。
「んふふ、なんだか楽しいですね!」
「酔ってるな、そろそろ寝たほうがいい」
「えー、もう少しお話ししましょう」
「……いや、これ以上は駄目な気がする」
だめ?なにが?たのしいのに。
「リカルド様のけち」
「……うん。可愛いからもう寝なさい。部屋まで送ろう。おいで?」
なんだろう。リカルド様が甘い……気がする?なんかフワフワするし、そのせいかな。
差し出された腕に掴まる。
わー筋肉かな。私と全然違う。
「ん、固くて太い」
「な!?」
なんで驚くの?だって本当なのに。そのまま腕をペタペタ触る。あれ?なんか体がへにょってするわ。
「な~んかふわふわしますね、リカルド様」
「……酔うとこんなにタチが悪いのか……」
またボソボソ言ってる。何?ん~立てないかも。そのままぽすっと倒れ込む。あったかい。
「きもちいい……」
「ちょっ!いや、さすがに困る!」
うるさい。せっかく気持ちいいのに。
あれ、変だわ。なんかすっごく眠たい……
「……ねむいです」
「おい?」
「……おやすみなさいませ」
「え!?」
もうむり、ねむい
ゆらゆらゆれる。なんだかきもちいい。あったかくてあんしんする。ふふっ。
「困ったお姫様だ。おやすみ、良い夢を」




