11.プロポーズ
「ルシア、一緒に王都に行かないか?」
リカルド様がそうおっしゃったのは私が目覚めてからしばらく経った頃だった。
「一緒にって、王都に行くご予定が?」
「ああ、グラセスの件でな。さすがに伝令だけで終わりにはできないからな。何より君が見付けてくれた魔法のことがある。あれは世に出してはいけないものだ。厳しく取り締まる必要がある。エルディアだけの問題じゃないだろ?」
「そうですね」
「各国に今回の件が伝わる。グラセスはこれでしばらくは大人しくなるだろうな」
女性はまだ目覚めていない。魔法契約は解除したけれど、回復するかは分からない状態だ。
女性の無事を知った少年は泣きながら何度も感謝の言葉を繰り返していた。
グラセスには二人は死亡したと報告したようだ。魔法の解除が間に合わず、遺体は爆発による損壊が激しく返すことはできないとしたらしい。
家族には二度と会えないけれど、お互いを守る為だからと。たぶん、リカルド様はバレリアノで二人を引き取るつもりなのだろう。その件もあるんだろうな。
「私はまだ契約期間が残っています。王都に戻っても大丈夫でしょうか」
「今回は発見した魔法の為に来てくれると助かる。私では分からないことだらけだしね」
それならガランさんもいるのに。私がセシリオに会いたがっているのを知ってるからよね。
……あれからも彼からの便りはなく、ただ、無事に式が終わったことだけしか辺境には伝わってきていない。
「それにラファエルも連れて行くんだ。お医者様兼遊び相手を頼めるか?リコは移動が長いから今回は留守番なんだ」
リコと同列?可愛い枠だと納得しよう。
「ありがとうございます。ご一緒させていただけると嬉しいです。よろしくお願いします」
これでやっとセシリオに会える。
話したい事がたくさんある。はやく、このモヤモヤを無くしてしまいたい。
……彼を信じたい。大丈夫。だよね?
◇◇◇
バレリアノの馬車は素敵!こちらに来たときは本当に大変だったけど、今回は楽しい。
リカルド様とラファ、女性騎士のイリス様と同じ馬車に乗っている。イリス様は伯爵令嬢なのに騎士だなんて格好良すぎるのよ。スレンダーなキリッとした美女でついドキドキしてしまったわ。すっかり仲良くなれて嬉しい。本当にバレリアノはいい人が多いと思う。
「ラファは疲れてない?」
「だいじょぶ!みんなでおでかけ、たのしーね!でも、りこだいじょぶかなぁ」
「王都でリコへのお土産を探しましょう。きっと喜んでくれますよ」
「うん!おうと、おうと、まーだっかな!」
歌っちゃって可愛いなあ。
「ラファエル様はルシア様のことが本当にお好きですね、微笑ましいわ」
「るーちゃんだいすきー!」
「これは国に帰る時は大騒ぎですね」
「かえる?へんきょお?」
「違いますよ、ルシア様の本当のお家です」
あー、その話は危険!慌てて指でバツを作る。イリス様も失言に気付いた様で、
「ラファエル様、お城が見えてきましたよ!」
と慌てて外を指差す。
「るーちゃん、らふぁといっしょだもん」
駄目だ、誤魔化せてない。
「えっと、ラファ?すぐの話じゃないのよ?」
「ずっとらふぁのおうちにいるの!……やだぁ~、るーちゃんいないのやだも、さびしいよぉ!!」
やだ、泣かせちゃった!
「ラファエル、ルシアが困ってるよ。男の子は女の子を守るんだろ?」
「だって~~!いっちゃうって!ぱぱもままもいっちゃったの、るーちゃんもいっちゃうの、やだよぉ!」
「そしたらラファが会いに行けばいいだろ?」
「……いつもいっしょがいい」
ううっ、私まで泣けちゃう!そうよね、ご両親を亡くしてまだ一年だもの。お別れは辛いよね。
「そうよ!私だって会いに来るわ。それにまだまだ一緒にいるのよ?そんな先のことで泣かないで?」
駄目だ。こっちを見てくれない。こんなに懐いてくれて嬉しいけど、次期辺境伯を連れて帰るわけにはいかないのよ~。
「そだ!けっこん!るーちゃん、らふぁとけっこんよ!ずーっとなかよしなの!」
わー、まさかのプロポーズ来ました!




