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伝説の一族〜キャンピングカーで転移した先は母の故郷のようです〜  作者: 梅丸みかん


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6, 聖霊獣ベガの昔語り【1】

 この世界は地球とは全く異なり、魔法や魔獣が存在するのだ。もちろん、吾輩のような聖霊獣や精霊もである。まるでアマネがいつも読んでいたファンタジー小説の様だと思わないか?


 え? なんで吾輩が其方が読んでいた小説の内容を知っているのかだと?


 もちろん知っているとも。何と言っても聖霊獣は保護対象者の考えが読めるのだからな。吾輩の保護対象者はクレハであったが、クレハの命で其方も生まれた時から吾輩の保護対象者に含まれたのだ。いつも傍にいた吾輩が其方のことを何でも知っているのは当然であろう。

 

 クレハはこの世界から去る直前まで其方のことを案じておった。地球ではマナが足りなくて只の犬のように暮らすしかなかったがそもそも我ら聖霊獣は人の言葉を理解し、主人に助言を施し導く役割を持つのだ。我らは古から存在する知恵者なのだ。長い歴史を通して何度もこの世界に顕現し、レーナ一族の者達を導き保護してきたのだ。


 だが、地球ではその役割をこなすことができなかった。人の言葉を理解することはできたのだが、其方らに助言の言葉を伝える術がなかったのだ。少ないマナでは自分自身の姿を保つのが精一杯だったのだ。


 この世界には地球と違ってマナと呼ばれるエネルギーが満ちておる。一部の人間達は身体に取り込んだマナエネルギーを身体の中で魔力に変換させ魔法を使うことができるのだ。


 だが、無限樹海と言われる密林の奥の小さな郷に居住する希少なレーナ一族だけは違った。彼らはマナエネルギーそままの力を使うことができたのだ。


 クレハはその希少な一族の一人であり、その上次期首長とも呼ばれるほど身体に内包されるマナエネルギーの量が多かった。


 レーナ一族はどの国にも属していなかったが、彼らにはその必要がなかったのだ。何故なら、一族だけで暮らしていたとは言え、自給自足をし、高度な文明を築き上げていたのだから。


 レーナ一族は一人一人特殊能力(ギフト)と呼ばれる力を持っていた。個々が持つ様々な特殊能力(ギフト)は生活を豊かにし、更に霊元石と言う樹海の奥にある礦石に宿るマナエネルギーを自由自在に使いこなせる力があったため、エネルギー不足に陥ることもなかった。


 霊元石と言うのは深緑色の丸い石のことだ。さっきアマネが見つけたハンドルの奥に付いていた石と言えば分かるだろう。


 霊元石に宿っているマナエネルギーを取りだして使えるのは唯一レーナ一族の血を受け継ぐ者だけなのだ。


 密林の奥だというのに、郷には機能的な建物が建てられ、豊かな菜園と自然の恵みで衣食住には不自由することなくどの国よりも恵まれていた。更に彼らを助けていたのは吾輩の様な聖霊獣たちだ。


 聖霊獣と言うのは魔獣が命を落としたときに神格化したものだ。聖霊獣は神霊界にいるが、時々吾輩のようにレーナ一族の中に気に入った者がいるとその者と契約して守護聖霊獣として一生仕えるのだ。


 そのせいで魔獣はレーナの郷を襲うことも、逆にレーナ一族が魔獣を襲うこともなかった。お互いにテリトリーを守っていたせいもあるがな。


 魔獣は縄張り意識が強く、自分のテリトリーを侵害されるとその者を攻撃する性質がある。レーナ一族は魔獣の性質を知り、決してその領域を侵害することはなかったのだ。外界の人間達は恐れてこの魔獣が多く生息する無限樹海に滅多に足を踏み入れなかった。魔獣のおかげでレーナ一族の郷は守られていたのだ。


 だがやがて、人間達は魔道具と呼ばれる物を使い、魔獣を懐柔して操るようになった。自分達の欲のために。魔獣には魔法の力があるせいもあったのだろう。


 レーナ一族は彼らとは違う。もちろんレーナ一族にも欲があるのだろうがそれは自分達や仲間を幸せにしたいと言うことが根本にある。


 争ってまで他人の物を奪おうとすることはなかったし、魔獣を己らの欲のために利用するという考えもなかった。いつだって自分達のできる限りのことを精一杯やっていたのだ。自分のために、家族のために、そして一族のために。


 その思いが溢れていた一族だから、それはそれは平和に暮らしていた。お互いを思いやり、何の憂いもなくみんな笑顔が絶えなかった。


 我らが具現化するためにはレーナ一族と契約を結び守護霊獣になるしかなかったのだが、純粋さと清浄さを併せ持つレーナの一族と共にいるのが心地よかったこともあるのだ。


 だがやはり、どんな世界でも物質世界では永遠なんてあり得ないのだ。


 ああ、大丈夫だ、アマネ。泣きそうな顔をしていたからって吾輩は聖霊獣だから本当に泣くことはない。それにあの事件も今思うと必然だったのかも知れない。神が起こす出来事に偶然なんてないのだ。


 ん? 神様なんて本当にいるのか? ああ、神はいるとも。アマネの育った地球にもな。


 もちろん、神とは姿が見えるものではない。


 神はどこにもいないように見えて、本当はどこにでもいるのだ。


 神は全てを傍受していて、全てを感受しているのだ。


 例えば、説明の出来ないほどの奇跡のような出来事が地球にも溢れているのを知っているか?


 神は時には罰を与え、時には褒美を与えることを。


 ああ、また話が逸れてしまったな。


 今までアマネに伝えたくて伝えられなかったからついつい余計な事まで話してしまうな。


 とにかく、平和だったレーナの地に招かれざる者が訪れた時から彼らの運命は大きく揺らいだ。クレハがこの世界から地球に渡ることになったのもその者たちのせいであったのだ。


 ある日、郷から少し離れた場所でレーナの民の若者達が傷ついた一行を発見した。彼らはその一行を見捨てることが出来ず郷に連れてきたのだ。


 レーナの民はみんながみんな心優しく純粋だからな。


 だが、それが仇となった。


 傷ついた一行はこの世界で最も大きな国であるクラメイル帝国の調査団だったのだ。クラメイル帝国に限らず、この世界の人間達の魔力は次第に低下し、魔術を扱える人間が減少していることは深刻な問題だったようだ。


 資源も枯渇しつつあり、新たな資源を求めて無限樹海と呼ばれているこれまで人間が踏み入れることがなかった場所を調査することになったらしい。


 何の疑いも無かったレーナの民達は彼らを快く受け入れた。人当たりが良く、友好的だった彼らはレーナ一族にこれまで知らなかった新しい文化を教えてくれたのだ。


 特にレーナの民の若者達は新しい文化に魅了され、故郷を後にする者もいた。


 クレハの兄であるタクトも何度もクラメイル帝国を訪れ帝国の姫君を愛することになり、ついには婚姻を結ぶことになったのだ。


 タクトはレーナ一族首長ハナの息子であったからな。つまり、国に例えれば王子様と言う事になるだろう。まあ、クラメイル帝国の規模に比べたらあまりにも違いすぎて王子様なんて呼べないかも知れないが。


 レーナの首長にはマナの力が一番強い者が選ばれるのだ。


 その時のレーナの首長は先見の力を持つ巫女ハナだったが、いくらタクトが彼女の息子でも次の首長になれるとは限らなかった。実際に妹のクレハの方がマナの力が強かったからだ。


 あのまま順当にいけばきっと次の首長になったのはクレハだったのかも知れぬな。


 ん? 先見の力がどんな力か?


 未来を見る力だ。


 と言っても数時間前ほどしか見えないとハナは言っていたがな。

ここまで読んでいただきありがとうございます。

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