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伝説の一族〜キャンピングカーで転移した先は母の故郷のようです〜  作者: 梅丸みかん


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43、不思議な乗り物キャンピングカー

 瞼を開けると天井にある照明が室内をぼんやりと照らしていた。窓のない空間は時間を曖昧にさせる。


 私は上半身を起こしベッド脇のサイドテーブルに置いていたスマホで時間を確認した。


 六時十二分。

 ちょっと早いけどそろそろ起きようかな……


 日本とこの世界の時間の流れには差異があるのに、スマホに表示される時間とこの世界の日の出と日の入りはほぼ違和感がない様に思えた。


 私はここに来てからスマホの時間を見ながら何時に日が沈んで、何時に日が昇るのかずっと確認していたのだ。


 再びベッドに仰向けになり天井をぼんやりと眺める。地下室なので鳥の囀りと共に目覚めることはできなかったけど、マナトさんとササラさんに出会って安心したせいかぐっすり熟睡することができたようだ。


 昨日のことを思い浮かべていると暖かな温もりが右腕に絡み付いて来た。

 ふと見るとそこには天使の寝顔がある。頬を緩ませながら柔らかな緑銀の髪をなでると同じ色のまつ毛がゆっくりと持ち上がった。


 焦点の合わない眼差しが私の姿を捉えると、安心した様に微笑む姿はまるで天使だとしか思えない。


「もう、朝なの?」

 私の可愛い天使……レイトが耳触りの良い少し高めの声で尋ねた。

「そうよ。眠いならまだ寝ててもいいわよ」

 私の声に首を左右に振るレイトは私と同様にどうやら熟睡できた様だ。


「ふむ、吾輩も起きるぞ」

 足元にいたベガが伸びをしながら眠そうに言った。


「そう? じゃあご飯の支度をしに行くけど一緒に行く?」

「もちろんだ」

「僕も一緒に行くよ」

 ベガとレイトが答えたがまだ寝ている者がいた。


「あら? シルマはまだ寝ているみたいね。じゃあ、シルマはお留守番ということで」

「待つのじゃ。もう起きたのじゃ。無論、妾も一緒に行くぞ」

 私の言葉にレイトの枕の脇で寝ていたシルマが慌てて起き上がった。


 着替えを済ませ、レイトと二匹の聖霊獣と共にキャンピングカーに向かった。昨日宣言した通り、朝食はご飯を炊いてみんなにご馳走するつもりなのだ。レイトは私の考えを読んだのかとても嬉しそうだ。


 やっぱり、レイトはパンよりもご飯の方が好きらしい。


「おや、起きたんだね」

 後ろから声をかけて来たのはササラさんだった。肩には黒いカラス……聖霊獣のギエナがとまっている。赤い瞳が私たちの先にいるベガとシルマを捉えるとそちらの方へ飛んでいった。


 聖霊獣たちは仲良しだね。


「あっ、ササラさん。おはようございます」

「ああ、おはよう。こんなに朝早くにどこに行くんだい? 他のみんなはまだ寝ているよ」

「えっと、昨日言った通りご飯を炊こうと思いまして」

「ご飯、本当にいいのかい?」

「もちろんです。たくさんありますから」

「そうかい、じゃあお言葉に甘えていただくことにするよ。どれ、私も朝食の準備を手伝うよ。あの乗り物……えっと、なんて言ったかね」

「キャンピングカーだよ」

「おう、レイト、ナイスフォロー。そうそう、キャンピングカー。そのキャンピングカーで作るんだろ?」

「はい、キャンピングカーに炊飯器があるのでそれで炊こうと思います」

「そうかい、じゃあ、私も手伝うよ」


 ササラさんは嬉しそうに私とレイトと一緒にキャンピングカーに向かう。

 

「ササラはキャンピングカーが気に入ったみたいだよ。頭の中でキャンピングカーの歌をうたってる」

 レイトが私の耳元でこっそり囁いたけど、ササラさんはそれをしっかり聞いていたみたいだ。


「キャンピングカー、キャンピングカー、不思議な乗り物キャンピングカー」

 しっかり声に出してササラさんが歌い始めた。


 私はついつい、「ふふふっ」と笑ってしまった。


 ササラさんはご飯よりもキャンピングカーの方が気になるみたいね。


 するとレイトもササラさんに釣られる様に歌い出した。


「キャンピングカー、キャンピングカー、不思議な乗り物キャンピングカー」


「おいおい、朝っぱらから何事だ?」

 赤い髪を掻き上げながら不機嫌そうな声を発しながらカイトが、今通り過ぎたばかりの部屋から出て来た。どうやらササラさんとレイトの歌声で起きたらしい。


「ああ、カイト。今からキャンピングカーに朝食を作りに行くんだ。アマネが私たちにご飯を振る舞ってくれるそうだ」

「何? 俺も行くぞ!」

 ササラさんの言葉にカイトの瞳がきらりと光った様な気がした。


 どうやらカイトもご飯を食べたいらしい。


「キャンピングカー、キャンピングカー、不思議な乗り物キャンピングカー」

 ササラさんとレイトが再び合唱する。


 冷めた目でその二人を見つめるカイトだったが、


「アマネ。あのね、カイトも頭の中で一緒に歌っているよ」

 とこっそり私の耳元で囁いた。


 レイトの声が聞こえたのかカイトの頬が微かに染まり、私と目が合うとすぐに逸らした。

 カイトもご飯よりもキャンピングカーに興味があるようだ。


 キャンピングカーのキッチンに立ち、昨日研いでおいたお米を確認して炊飯器のスイッチを入れた。


 五合炊きの炊飯器だけど、朝食分には足りるよね。もし足りなかったらレトルトパックのご飯を足せばいいか。


 収納棚を確認するとパック入りのご飯が五個ほど残っていた。


「あれ? それは何だい?」

 私が手にしたレトルトパックのお米を見てササラさんが尋ねた。

「えっと、これもお米なんです。電子レンジでチンするとすぐに食べられるんです」

「へぇ、便利な物があるんだねぇ。電子レンジ?」

「えっと、食べ物を温める機械です」

 この世界には当然のことながら電子レンジなんてないのだろう。


 と思ったのだが、


「温める……そうか、もしかしてマナオーブンのことかな?」

「マナオーブン?」


 私はササラさんの言った耳慣れない言葉に疑問の声をあげた。


「マナオーブンはその電子レンジやらと同じ様に食べ物を温めることができるんだ。それだけじゃない、焼いたり蒸したりと調理することもできる。実は、マナオーブンもクレハが発明したんだ」


 ササラさんの言葉で私はマナレンジというものが、日本の電子レンジというよりもオーブンレンジに近いものなのだろうと見当をつけた。


 ご飯が炊き上がるまでに味噌汁を作ろう。


 そう思って、冷蔵庫から味噌を取り出すとササラさんが「へぇ、それは味噌かい? 懐かしいねぇ」と目を細めて嬉しそうに微笑んだ。


 やはり、レーナ一族の食生活は日本の食生活と似ているのかも知れない。


 味噌汁の具は……山田のおばあちゃんからもらった野菜がたっぷり入れよう。野菜をたくさん入れると出汁が出て美味しい味噌汁ができるのだ。さて、おかずはどうしよう? 


 冷蔵庫にあるのは日持ちのするものばかり。


「そうねぇ、おにぎりにしましょう。梅干しと海苔もあるし、あと昆布の佃煮にシャケフレークも」

「本当かい? そりゃあいいねぇ」

 ササラさんは私が冷蔵庫から出したおにぎりの具材を見て嬉しそうに言った。ササラさんがその具材を見ても何も言わないところを見ると、もしかしたらレーナの郷にも普通にある食材なのだろうか?


 もしそうだとしたら、やはりレーナの郷は日本となんらかの関係があるのだろうか?



 私とササラさんが朝食の準備をしている間、カイトとレイトは何やら聖霊獣たちと話をしている。聞き耳を立てると、どうやらレイトとベガに日本のことを聞いている様だ。


 カイトが「すげぇな、俺も行ってみたい」としきりに声を発している。


「あのね、このキャンピングカーで行けるんだよ」

 レイトの言葉に瞳を輝かせるカイト。


 カイトが期待の眼差しでこちらを見ている様な気がする。


 あっ、なんか嫌な予感。

 私は二人の会話を聞かなかったことにしようと心に決め、カイトから目を逸らしたのだった。

ここまで読んでいただきありがとうございます。

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