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伝説の一族〜キャンピングカーで転移した先は母の故郷のようです〜  作者: 梅丸みかん


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42、呪われた魔女と伝説の錬金術師

今回も三人称クレハ視点です。

「魔女……そう、確かに私は魔女だ。この国でもそう呼ばれているのは知っている。どうだ? 醜いだろう?」


 目の前の老女……魔女の皺がれた低い声が大広間に重く響く。


 本当に魔女なの? ああ、でもクラメイル帝国には魔術師がたくさんいたから女性の魔術師のことを魔女と呼んでいるのかも。


「あなたはとても長生きなのね。なぜ私を召喚したの?」

「そうか、お前は私に気づかないか。お前は今もなお美しい。あれから八十年も経ったというのに…… レーナ一族は長命な上に、老いる速度が極端に遅い。この私と違って」

「八十年? いつから八十年? まさか、レーナの郷がクラメイル帝国に強襲されてから?」


「強襲? 何を言っている? 我々はレーナ一族が独り占めしていた資源を解放するために侵攻したのだ。世界を豊かにするためだったんだ」


「偽善者の様な言い分は私には通用しないわ。霊元石はレーナ一族にしか扱えない。だから私たちはできる限り魔力に変換して解放する様にしていたわ。それに礦床にはレーナ一族しか入れない。マナエネルギーが強すぎて他の人間には耐えられないからよ」


「お前達はそう言って独り占めしていたのだ」


「その議論はもういいわ。既に過ぎてしまったことを今更言っても仕方ないもの。それよりもあれから八十年も経っているなんて本当なの?」


 信じられない思いでクレハは魔女に疑問を投げかけた。


(あれから八十年? 地球では二十年しか経っていなかったのに? もしかして、ここと地球では時間の流れが違う? それでも、レーナ一族なら生きている者も多いはず)

 何とか気持ちを持ち上げたクレハだったが、次に放った魔女の言葉に困惑する。


「ああ、本当さ。私のこの姿を見ればわかるだろう? 私の歳はもう百歳を悠に超えているのだ。この国の平均寿命は七十歳だと言うのに。それはお前の兄タクトが私に施した呪いのせいだ! お前にはその償いをする義務があるのだ」

「タクト……兄様? あなたはタクト兄様を知っているの? それに私のことも?」


「ああ、ようく知っているとも」

 魔女の口端が上がり頬が歪む。


 目の前の魔女の言葉が耳に届いた途端クレハはと眩暈を覚え、体から力が抜ける気がした。


(あら、やだわ。何だか頭がぼんやりする。

 なんだっけ……そう、タクト……兄様がどうしたって? 呪い? 

 そんなわけないわ。兄様は絶対に呪いなんてかけない。と言うより私たちレーナ一族は呪いをかける力なんてない。

 この人は何を言っているの?

 ……ああ、頭が働かない。目も霞んできた……

 この目の前の魔女は一体誰なの?

 私やタクト兄様のことをよく知っている様だわ。会ったことがある人なのかしら……?)


「そろそろリングの効力が現れて来た様だね。そのリングをつけると考えることも自分の意思で動くこともできなくなるのだ。お前はもう私の操り人形になるしかないのだ」


「そんな……はずないわ。あなた……達の魔法は……レーナ一族には効かない……はず……」

「ああ、そうだ。忌々しいことに私の魔法はお前達に効かない。だが、さっきも言った通り私は発見したのさ。この霊元石を使えばお前達にも効果があることを。この霊元石はね、タクトの血をたっぷり含んでいるんだ」


(目の前の魔女は何を言っているの? 兄様の血? 何のこと?)


 次第に霞がかかってくる頭の中で必死に考えを巡らすクレハ。


 そんな時、記憶に埋もれていた声が聞こえた気がした。


「あなたが生き残らなければレーナの郷の復活はありえない。あなたにはこの郷を復活させるという重要な役割を与えます。さあ、行きなさい」

 意識が朦朧とする中でクレハの心に蘇って来たのは、レーナ一族の首長でクレハの母親でもあるハナの最後の言葉だった。


 クラメイル帝国がレーナの郷を強襲して来た時、その言葉に促されクレハはレーナの郷から真っ先に地球へ転移してしまった。


 あの後、郷はどうなったの? 母様と父様は? 兄様は? それに兄様にはたった一人の息子であるレイトがいたはず……私の可愛い甥の。あの天使の様な可愛らしい子はどうなったの? 八十年以上経ったとしてもレーナ一族の血を引いているならまだ青年と変わらないはず……


 額に手を当てながら記憶を辿るクレハはハッとして顔をあげた。


「まさか……あなたは……でも……百歳を超えて生きているなんて……なぜ……?」

 声を押し出した瞬間、次第に重怠くなる体を支えることが難しくなり膝をついた。


「おや、どうやら私のことを思い出した様だね。私が何で生きているかって? それはお前の兄がかけた呪いのせいさ。お前はその償いをしなければならないのさ。お前は昔からマナが強く有用な特殊能力(ギフト)で郷を潤していたねぇ」


 クレハは床に蹲り、頭に靄がかかった様に次第に考えることもできなくなって来た。薄れる意識に魔女の言葉が微かに耳に届く。魔女はそんなクレハの様子にお構いなしに言葉を続けた。


「知っているかい? 今でもこの国ではお前の作った魔導具が高値で取引されているんだよ。伝説の錬金術師が作った魔道具としてね。これからは私の為に働いてもらうよ」


 魔女の声が広間に響くがもう既にクレハの耳には届いていない。


 石でできた冷たい床の上に転がるクレハの体がピクリと動いた後、スクっと何事もなかった様に立ち上がった。


「ああ、やっと私の思い通りに動く人形になったね。さあ、私の前に跪くのだ」


 石造りの大広間に魔女の声だけが響いた。


 魔女は嗤う。


 跪くクレハを蔑視する様に……


 醜い皺に埋もれた己の頬を透明な雫が伝うのも構わず、魔女は嗤うのだった。


 

ここまで読んでいただきありがとうございます。

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