表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
伝説の一族〜キャンピングカーで転移した先は母の故郷のようです〜  作者: 梅丸みかん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

35/44

35、ササラが辿った過去

ササラ視点です。

 マナトが郷を出て行った時、私はマナトは絶対に郷に戻ってくると確信していたね。大体にしてマナトは物事を表面的にしか見ないんだ。ああ、そうだマナトの特殊能力(遠見)の様にね。


 私が必死でマナトを止めたけにも関わらす、結局郷を出て行ってしまったんだ。


 私はその時思ったね。


「ああ、こいつは痛い目に遭わないと分からないんだな」

 ってね。だから、それからは静観することにしたのさ。


 当たり前の様に目の前にあるものって、失って初めてどんなに大切だったのか気づくものだからね。だけど、気づいた時には大抵はもう遅いんだ。


 でも、まさかあんなことになろうとはね。私としても想定外だったよ。まあ、レーナ一族にとってもなんだけどね。


 レーナの郷は何百年も争いごともなく平和な場所だった。だから郷の誰もがこの平和が壊れるとは思ってもみなかったんだ。


 ハナ様の予言さえ最初は信じられない思いでみんな聞いていた。


 本当にハナ様の予言通りにクラメイルの兵士たちが郷を襲撃してきたときは驚いたよ。私達が住んでいた美しい郷がどんどん破壊されていくのはまるで幻を見ている様で最初は現実だを受け入れることができなかった。


 彼らはレーナ一族には自分たちの放つ魔法は効かないと知っていた。そう、他の国の人間がいくら魔法を放っても、私たちレーナ一族はその魔法を弾いてしまうんだ。

 彼らが剣や槍などの物理攻撃を仕掛けてきたのはそのせいだろう。レーナ一族と交流を深めるうちに彼らは私たちの弱点を探っていたのだ。


 だから、反対に聖霊獣達には物理攻撃は効かないことも知っていた。クラメイルの魔術師たちはそのことを踏まえて、マナによって強化された建物の破壊と聖霊獣達の力を削ぐことに注力したのだろうね。


 レーナの血を引く者は霊元石のマナを生物だけではなく物に注ぐことによって強化することができるんだ。レーナの郷の建物も強化されていたからそんなに簡単に破壊することはできないはずだったのに彼らが開発した魔術によって破壊されてしまった。


 半分以上は残っていたけど、それでも美しかったレーナの郷は彼方此方痛々しい程にボロボロになってしまったんだ。


 私は、最初から彼らは私たちの郷を奪うために接触してきたんじゃないかと思っている。とても親切で友好的だった彼らだったけど、私達はそんな表面の顔にまんまと騙されたってことだよ。郷が襲われるまで気付くことができないなんてね。


 まあ、一番の諸悪の根源はあの姫様だろうけどね。レイトの母親だから悪くは言いたくないけどね。


 ん? アマネ、どうしたんだ? そんな辛そうな顔をして。

 レイトの特殊能力(ギフト)は心感だって? 人の考えが読める力か。そうか……レイトはその力のせいで知ってしまったんだな。母親の残酷な所業を。


 ああ、私もあの時見ていたよ。タクトがあの女の足元に屑折れる様子を……


 もちろん、悔しかったさ。タクトは心底あの女を好いていたからな。あの女の正体に勘付いていたのに愛があればきっと変わってくれる、自分があの女の心根を変えて見せると言っていたのにな。


 結局タクトの思いは彼女に通じることはなかった。きっとタクトは彼女があそこまでするとは思っていなかったのだろうね。タクトはあっさりと彼女の手に掛かった。何の抵抗をすることもできずに……


 ……いや……最後にタクトは彼女に向かって何か言っていたな。


 あの時のタクトの言葉は……いや、まさかな。あのタクトがそんな残酷なことができるわけがないだろう。憶測でものを言ってはいけないな。


 ハハハッ、何でもないよ。今言ったことは気にするな。


 とにかく、ハナ様もクナト様も、そしてタクトもクラメイル帝国兵の手に落ちた。


 私はそれを目にして、彼らの死を無駄にしないためにも逃げることを優先した。憂いは残ったが、救いはハナ様がレイトにシルマを守護聖霊獣として護りに付けたことだ。あの女の手にレイトが渡ったとしても、きっとシルマが護ってくれると確信した。


 私だってただ見ていただけではなく、自分の特殊能力(ギフト)を発揮して、できる限りのことをしていた。だけど、私の力はそれほど強いわけでは無い。転移する力も残しておく必要があったからな。


 私の力が何かって? ……私の力は幻惑だ。相手にそこには無いものを見せる力だ。この力は狩りの時には重宝したよ。この時まで、まさか人間相手に使うとは思ってなかったけどね。


 ある程度の兵たちを幻惑で郷から遠ざけることは出来たが、さっきも言った通り私の力はそれほど強くは無いんだ。それでもギリギリまで頑張ったと思うよ。遠くに転移する力が残っていなかった程にはね。


 転移したのはレーナの郷とクラメイル帝国帝都パーセルの間にある小さな町だった。レーナ一族だと悟られないために自分自身に幻術をかけたんだ。私の髪の毛はレーナ一族と違うけど、瞳の色はしっかりとレーナの血が入っていることは一目瞭然だからね。


 ああ、この髪の色かい? クラメイル人の特徴とも異なるから多分異国の血が混じっているんだと思うよ。私は孤児だったからね。本当の両親は分からないんだ。クラメイルの奴隷商の元にいたところ、ハナ様に助けられたんだよ。


 まあ、それはおいおい話すとして、話を戻すよ。


 転移した町で私は食堂の店員として働き始めた。それから数日後、マナトが訪ねて来たったことさ。


 まったく、遅すぎるんだよ。今更目が覚めたって言うんだよ。だけど、泣いて謝ってくるから仕方ないじゃない? 過ぎてしまった時間は元には戻せないからね。だったら、これからどう生きて行くかを考えていくしか無いじゃないか?


 だから私はマナトにたった一つだけ約束させたんだ。


「これから一生私に尽くすんだよ!」ってね。


 その後、私たちは共にレーナの復活を目指すことにした。とは言え、二人だけではどうにもならない。各地を回ってレーナ一族を探すことにしたのさ。


 だけど、みんな散り散りに転移してしまったから探す当てなんてない。マナトの遠見の力も大体の場所を定めなければ発揮できないし、限られた霊元石しかなかったから全てをそれだけに使うわけにもいかなかった。


 それに次第に大気のマナエネルギーが薄くなり、私たちの特殊能力(ギフト)の性能も次第に弱くなっていったんだ。


 聖霊獣は他の聖霊獣の気配を感じ取ることができるが、それさえもマナエネルギー不足のせいでかなり近づかないと発揮できなくなった。


 そのうちに私がマナトの子であるカイトを身籠ってしまったんだ。


 カイトがある程度成長するまで私たちは旅を一時中断することにした。この先にある町で暮らすことにしたんだ。隠れる様にしてね。


 なぜなら、クラメイル帝国はレーナの血を引く者を探していたからだ。翠緑の瞳を持つ者を。きっと、レーナの力を欲したのだろう。私の幻惑(ギフト)を使い、彼らの目を誤魔化して何とか暮らしていた。


 だけど、ある日カイトが攫われそうになったんだ。私の力は私から離れると効かなくなってしまう。その時七才だったカイトはちょっと目を離した隙に勝手に外に出て行ってしまったんだ。


 ギエナの知らせとマナトの遠見で何とか見つけたもののカイトは既に守りの結界が発動した後だった。その場にいたクラメイル帝国の兵達が暴れるカイトを黙らせるために何らかの危害を加えようとしたのだろう。


 私は幻惑で何とかカイトを取り戻した。クリスタルの中で静かに眠るカイトを……


 そこで私とマナトは思った。また同じ様な事が起こる可能性があるかもしれないと。今回はすぐにカイトを見つけられたが、次はどうなるか分からない。


 マナトの遠見の力は建物の中までは見えないからね。


 ギエナにカイトを護らせたとしても不安は拭えなかった。だから私たちは落ち着くまでこのままカイトをクリスタルの中で眠らせておくことにしたんだ。


 私たちはクリスタルに包まれたカイトを連れてその町を後にした。既にこの辺りにレーナの血を引くものがいるとクラメイル兵に知られてしまったからね。その町を出るしかなかったんだ。


 何とか手に入れた荷馬車にカイトを乗せ、幻惑をかけながら私たちは再び旅に出た。暫しの安住の地を求めて。


 そしてそれから数年後、ようやくこの辺境の地に辿り着いたんだ。


 ここはね、嘗て冒険者の町として知られていたんだ。今はこんなに荒れ果ててしまったけどね。私はマナトと共にここにあった町で冒険者として生きていくことにしたんだ。

ここまで読んでいただきありがとうござます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ