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伝説の一族〜キャンピングカーで転移した先は母の故郷のようです〜  作者: 梅丸みかん


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27, 手乗りベガ?

 山田のおばあちゃんは、三十キロもの玄米とたくさんの野菜をくれた。

「玄米三十キロなんて食べられないよ」と言ったら、

「玄米は五年も持つから大丈夫。玄米は究極の保存食なんだよ。玄米と梅干しがあれば災害時でも何とかなるもんだよ」

 と諭されてしまった。


 確かにおばあちゃんの言うことは正しく思えた。ついでにおばあちゃん特製の梅干しも頂いたし、これで異世界で食べ物が手に入らなくてもしばらくは何とかなるかも知れない。


 あっ、でもレイトって梅干しを食べられるのかしら?


 そもそも異世界に梅干しがあるかどうかは分からない。日本人の中にも梅干しの酸っぱさが苦手な人もいるみたいだし。


 もしレイトに梅干しを食べさせたらどんな顔をするかしら……?


 私はレイトが梅干しを食べた時の酸っぱそうな顔を想像して絶対に食べさせようと心に誓った。小さい子の酸っぱそうな顔は絶対に可愛いのだ。


 そんな想像をしていたらレイトが「おばあちゃん、梅干しもくれたの?」と聞いてきた。またもや心を読まれたらしい。


「ふふふっ、後で食べてみる?」

 と聞いたら、私の思惑がバレていた様でレイトは思いっきり首を左右に振った。


 これは梅干しを食べさせるための作戦が必要かも知れない……


 再びキャンピングカーに乗り、私たちはショッピングモールを目指す。食料品やレイトの服を手に入れるためにこれから買い物に行くと言ったらトシさんが最近できたショッピングモールを薦めてくれたのだ。ホームセンターや子供服専門店の店も隣接しているらしいからそこなら欲しいものが何でも揃えられるそうだ。


 スマホで検索したら車で十分ほどで行けるほど近い場所にあったので直ぐにそこで買い物することに決めた。


 私のスマホには叔父さんと神林さんの電話番号しか登録されていない。叔父さんは保護者なので念のために登録してあるものの一度もかけたこともかかって来たこともない。神林さんは叔父さんの家を出る時に電話で話したきりだ。


 他の人から連絡をくることもこちらから連絡することもないからもうスマホなんていらないかなと思ったけど、何かを調べるためにはやはり必要かも知れない。ああそれとレイトの可愛らしさを写真に収めるためにも必要だと気づいた。


 あれ? でも異世界ではスマホって使えないよね。多分、インターネットも電話回線もないだろうし……でも写真を撮ることはできるよね。


 ほんの数十分の運転でも油断はできない。何と言っても私は免許取り立ての初心者なのだ。


 トシさんの教えてもらったショッピングセンターをカーナビ登録して山田のおばあちゃんの家を後にした私はドキドキしながら田舎道を走らせる。流石にここでは自動運転機能を使うわけにはいかないと思ったのだ。


 心の中で無事に目的地に辿り着ける様に真剣に祈りを捧げる。レイトを乗せているのだ。安全運転を心がけよう。


 そう心に強く刻みハンドルを握った。緊張感で自分でも肩に力が入っていることがわかる。


 大丈夫、大丈夫。


 自分に言い聞かせながら余裕もなく運転に集中した。


「ねえ、あれは何? ねえ、あれは?」

 バッグミラーにはレイトがサイドウィンドウにへばりついてベガを質問攻めにしていた。見るもの全てが未知のもので興味津々なのだろう。


 そんな可愛らしい声に癒され、徐々に落ち着いて来た。


 ショッピングモールに到着すると遠くてあまり車が止まってない場所にキャンピングカーを止めた。平日ということでそれほど混んではいないけれど、初心者でしかも普通車よりも大分大きい車だ。万が一のことを考えたのだ。


 さてと、キャンピングカーを降りて早速買い物しようと思い、運転席の後ろにいるレイトに声をかける。子供は興味を持つと周りのことを忘れてそれしか目に入らなくなる。だからよく子供は迷子になるのだ。そのことを思い出してレイトに注意する。


「レイト、私の手を離しちゃだめよ。迷子になっちゃうからね」

「迷子?」

「そう、迷子。レイトが私たちと離れ離れになってひとりぼっちになっちゃうことよ」

「……ぼっ、僕、絶対にアマネの手を離さないよ」

 真っ青になって言葉を発するレイトを見て、ちょっと脅かしすぎたかもしれないと思った。


『大丈夫じゃぞ、レイト。妾がちゃんとお主の服の中に潜んでおるからな』

 すかさずフォローしてくれたシルマに安心の表情を浮かべるレイト。私もその様子にホッと胸を撫で下ろした。


「あっ、ベガはお留守番よ。ホームセンターはともかく、子供服のお店や食料品店には連れて行けないからね」

『なんだと? シルマは一緒に行くと言うのにか?』

 私の言葉に不満の声をあげるベガ。


「だってシルマはレイトの服に潜めるからいいのよ。ベガはそう言うわけにいかないでしょ?」

『ふむ、ならば吾輩も小さくなってアマネの服に潜めば良いのだな』

 ベガはそう言うと体に光を放ち、手のひらの上に乗れるほど小さくなった。


「え? ベガ、更に小さくなれるの? なにそれ超可愛い!」

 私はレイトをひょいとつまんで手のひらに乗せた。


 手乗りベガ……というか手乗り柴犬……

 確かに私のカーディガンのポケットに潜めそうだわ……ちょっと盛り上がるけど。多少顔がのぞいていてもこれならマスコットぐらいにしか見えないかもしれない。


 あら? キーホルダーにしても可愛いかもしれないわね。

「アマネ、吾輩はマスコットでもキーホルダーでもないぞ」

 やばっ、聞かれた!


 私の心の声を聞いたベガは少しムッとしている。でも、可愛いのだから仕方がない。


 手乗りベガをカーディガンのポケットに入れると私はレイトとレイトのベストの中に隠れたトカゲの様になったシルマと一緒にキャンピングカーを降りて店内を目指した。


 先ずはレイトの服を買おうと思う。王子様スタイルのレイトも可愛いけどやはりコスプレの様でちょっと目立つ。


 子供服専門店の中に入るとレイトはキラキラした瞳で中を見回している。初めて見る光景に興味津々だ。


「レイト、どれがいい? 好きな服を選んでいいよ」

 私の言葉にレイトは首を傾げた。


 そうか、異世界ではこんなお店はなかったのかも知れない。

 というより、レイトの境遇から推測するとそもそも買い物自体したことがなかった可能性が高い。


「じゃあ、私が選んでもいい?」

 レイトの戸惑う様子に私がそう言うとレイトはこくんと頷いた。


 だけど、今まで周辺に小さい子がいなかったので何を買えばいいのか分からない。店員に聞きながら勧められるままにショッピングカートが入れていったらすぐに山盛りになってしまった。


 店員さんの「まぁ、天使の様なお子様ですね。弟さんですか?」と言う言葉に「そうなんですぅ」と頬を緩める私。『親バカならぬ姉バカであるな』と言うベガの声が聞こえた気がするがきっと気のせいだろう。


 だってレイトは本当に天使の様なんだから。


 選んだ服の中からズボンとシャツを取り出し、試着室でレイトに着せてみた。少し不安そうにしながらも新しい服を着たレイトは心なしか嬉しそうに見える。


「レイト! すっごくかっこいいよ! まるで小さな紳士みたいね」

 その言葉に微かに頬を染め照れ笑いを浮かべるレイト。


 柔らかめのデニムパンツにチェックのシャツ、胸にワンポイントのついたニットベストを着たレイトの姿に私は「もしかしてモデルが着るよりも似合うのでは!?」と口から溢れていた。


 レジに並ぶとレイトが小さな手で私の服を引っ張った。


「ん? レイト、どしたの?」

「アマネ……あの……ありがとう……」

 はにかみながら溢したお礼の言葉に心の中で悶える私。


 て、天使か!!


 そんな私に溜息を吐く二匹の聖霊獣の姿が見えた気がしたが、当然のことながらスルーする。


 そうだ、子供と言えばおもちゃが必要よね。と思ってレイトに何がいいか尋ねたら

「僕、絵本がいい。クレハがよく作ってくれたんだ」

 と言う言葉が返ってきた。

「え? お母さんてば絵本も作れたの?」

「うん、シルマやベガが出てくるんだ」

 私はレイトの言葉でハッとした。そう言えば、私が小さい頃小さい柴犬や小さい緑銀竜が出てくる絵本を読んでもらった記憶がある。


 え? もしかしてあれもお母さんが作ったの? でも、錬金術を使うにはマナが必要だってベガが言っていた。お母さんはそのために自分のマナと霊元石を使ったのかもしれない。


 お母さんてば何やっているのよ。体が弱っているのに自分のマナと数少ない霊元石を使うなんて。


 私が心の中でそう文句を言ったら、「大丈夫よー何とかなるものよ」といつも楽天的だった母の声が聞こえた様な気がした。


 レイトの希望を叶えるために本屋さんに行くことにする。本屋さんも同じ敷地内にあるので再び車を動かす必要はない。


 本屋で絵本を眺めるうちふと気がついた。


 あれ? こっちの文字と異世界の文字って同じなの? そもそも言葉は? そう言えばレイトと私普通に話しているわね。


 そんな疑問にベガが答える。


『クレハがキャンピングカーに自動言語変換機能を組み込んでおったから転移の際に浴びた光によってアマネにもレイトにも自動言語変換能力が備わったのである』

 ベガ、やっぱり私に言ってなかったことがあったじゃない。まぁ、気が付かなかった私もどうかと思うけど……


『おお、それはすまぬ。吾輩もうっかりしておった。だが、今知ったから問題なかろう』 

 ベガの全然悪いと思っていなさそうな言葉が頭の中に届いたのだった。

ここまで読んでいただきありがとうございます。

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