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伝説の一族〜キャンピングカーで転移した先は母の故郷のようです〜  作者: 梅丸みかん


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24, 地球へ

「父……さま……どこ? ……みんな……ど……こに……う……うぅ……」

 すぐ横から微かなうめき声がきこえた。


 手探りでベッドサイドにあるライトのスイッチを入れ、重い瞼を開いた。声のする方に顔を向けると、眉を寄せて額に汗を滲ませながら小さな手が空中を掴むように動いていた。


 カーテンの隙間から見た外はまだ暗く、まだ真夜中の様だ。


 レイトがうなされているのだと気づくと私はすぐにその小さな手を優しく握った。伏せられた緑銀のまつ毛が濡れ、透明な雫がふっくらとした頬を途切れなく伝って行く。

 ああ、レイト……辛い夢を見ているのね。


 いくらキャンピングカーではしゃいでいた様に見えてもレイトにとってはつい最近まで一人ぼっちで厳しい現実を耐えていたのだ。


 レイトの頭を優しく撫でながら私は彼の耳元で囁く様に宥める。


「レイト、もう大丈夫よ。私がずっと一緒にいるから。私がずっとあなたを守るから……」

 サラサラとした緑銀の髪を梳いていると、レイトが私の方に体を寄せてきた。


 その仕草があまりにも弱々しくて私は生まれたばかりの雛鳥を大きな羽で囲う親鳥になったような気持ちでレイトを腕の中でギュッと抱きしめた。


 レイトの暖かい体がじんわりと私の心を癒す様に伝わってくる。


 ああ、救われたのは私の方かもしれない……


 母が失踪してから今までずっと一人だった。いつも孤独を感じたけど、それを容認してしまうと寂しさを実感してしまうから気づかないふりをしていた。


 強がって、一人だも大丈夫だと自分に言い聞かせて……


 でも、本当はいつだって寂しさを抱えて生きてきたのだ。


 その温かさで心が満たされるのを感じながら私は腕の中の天使の温もりを感じた。こんなに安らかな気持ちになれるのはいつ以来だろう……


 私はレイトと出会えた幸運に感謝し再び夢の中に吸い込まれて行ったのだった。



 キャンピングカーのサイドウィンドウを隠すカーテンの隙間から朝の柔らかな光が差し込み目が覚めた。隣で眠る天使の寝顔に癒されながら昨日のことを思い返す。


 夜中にうなされていたのが嘘の様に柔らかな寝顔……


 これからレイトを幸せにしなければならない。


 新たな目的が活力を呼び、力が漲ってくるのを感じた。


 そうね、先ずはレイトの服。ブカブカのピンクのジャージ姿も可愛いけど、ずっとこのままでいさせるわけにもいかない。それと食料も旅先で買い足すつもりだったからこのままじゃなくなるのも時間の問題だ。


 あの時はまさか異世界に旅立つとは思っていなかったからね。


 この世界で手に入ればいいけど、人が住んでいる場所にたどり着くまでどれくらいの時間がかかるか分からない。


 ベガの言葉を思い出す。


 地球に戻ることもできると言っていた言葉を。


 ならば一度戻って必要な物を買ってきた方がいいのかも知れない。問題は霊元石だ。ハンドルの前についてる霊元石はまだ薄い緑色だ。なかなか元の色に戻らないのはキャンピングカーの動力源にもなっているからだとベガが言っていた。


 例え霊元石の色が戻って地球に戻ったとしても、霊元石がこちらに帰るためのマナエネルギーを蓄えるためには二十年もかかってしまう。それが解決できないと安易に地球には戻れない。


 さて、どうするか……とりあえずベガとシルマガ起きたら聞いてみよう。


 私はレイトの足元でもふもふの尻尾に蹲って寝ているベガとレイトの頭の上で体を丸くして寝ているシルマの方に順番に目を向けた。


 ベッドの上で少し伸びをすると両頬を軽く叩き気合いを入れる。カーテンを開けると最初にこの地に来た時とは違って、青空が広がっていた。

 

 小さなキッチンで湯を沸かし、熱いコーヒーを入れながら窓を開けると、昨日よりも外の空気が若干暖かく感じる。微風が車内に入り込み、澱んだ空気を拡散される。目の前には黒山があるし、反対側には限りなく荒野が広がっているのに空が青くなっただけで不思議と心が浮き立つ。


「う……ん…」

 レイトが目を覚ましたようだ。ベッドの上で起き上がり、周りをキョロキョロしている。私の姿を目に入れると満面の笑みを浮かべた。


 朝から天使の笑顔に癒され、その可愛らしさに心がほっこりする。


 私は昨日のうちに洗濯乾燥機で綺麗にしておいた服をレイトに着せる。フリルがついた白いブラウスに黒い刺繍入りのベストとパンツ。素材はシルクっぽいので洗濯機で洗って大丈夫かと思ったけど痛んだ様子は見えなかった。洗濯乾燥機があるとはいえ、やはり着替えがないのは辛い。せめて下着くらいは用意してあげたい。


 朝食が出来上がるとその匂いに釣られてかベガとシルマが目を覚ました。この二人、どうやら食べるのが好きみたいだ。ベガには聖霊獣と知る前から私のご飯を分け与えていたけど、やはりこうして見ると普通のペットとあまり変わりないように見える。


 まあ、銀色の柴犬と緑銀の竜は地球にいないだろうけど。


 朝食は中華粥にした。レンチンご飯を中華出汁に入れて卵でとじてネギを散らしただけの簡単なものだ。なのにレイトは輝くような笑顔で「アマネの作ったご飯は美味しいね」なんて言うものだから思わずギュッと抱きしめてしまった。


 ああ、何て可愛いのだろう。本当に天使? 天使なの?


『アマネ、レイトが苦しそうだぞ』

 私はベガの言葉にハッと我に返った。


「ごめんねぇ、レイト。あなたがあまりにも可愛くて……」

 私は眉尻を下げて申し訳なさそうにレイトに謝るとレイトは「大丈夫だよ。僕、アマネにギュッてされるの好き」なんて言うものだから再び抱きしめてしまった。


 はぁ……天使……やばいくらいに可愛すぎる……


「ところでベガ、買い出しのために地球に一旦戻りたいんだけどどうかしら? でも、霊元石がまだ以前の色に戻らないから元の色に戻ってからの方がいいと思うけど……」

『ふむ、それなら妾があの女から奪い返したのがあるじゃろう。それなりに大きい物もあったはずじゃ』

 私の質問に返事を返したのはシルマだった。


「そうね、シルマから渡された皮袋の中にはたくさんの霊元石が入っていたけど、このキャンピングカーについていた霊元石の半分しかないの。一番大きいのはレイトの結界を解除するために使っちゃったし、それが復活するまでにはまだ大分時間がかかるわよね」


『大丈夫だ、アマネ。半分くらいの大きさの霊元石があればそれを二つ使えばいいだろう』

「え? それって大丈夫なの? でもどうやればいいのかしら?』


 運転席の奥にある霊元石を一旦取り出し、そこに元の霊元石の半分の大きさの霊元石を二つ嵌めればいいとベガが言った。でも二つ嵌める場所なんて……と思っていたら、霊元石を取り出したらその場所にはは全く窪みがなかった。ベガの言う通り、二つの霊元石を同じ場所に置いたら再びゆっくりと半分ほど沈んでいった。


「すっ、すごい。……と言うことは最初に嵌っていた霊元石と同じ容量になるように小さな霊元石組み合わせれば大丈夫ってことなのね」

『その通りだ』

「これで、地球に一旦戻ってもまたこの世界に帰ってくることができる。だって、最初の霊元石の半分ほどの大きさの霊元石は全部で四つあるのだから。これで行きと帰りの分の霊元石が揃っているということになる」


「レイト、地球に行くわよ」

「地球?」

「そう、地球。私が生まれ育った場所なの。地球に行けば美味しい食べ物もレイトに合う服も買うことができるわ。地球で買い物をしてまたここに戻ってきましょう」

「地球……? うん、僕、アマネと一緒に地球に行くよ」


 首を傾げながら返事をしたレイトだったけど、多分地球がどこかは分かってないだろう。まさか地球が異世界だなんて思ってもいないわね。


 まあ、一応レイトの了承も得たということでこのまま地球に行ってしまおう。


 レイトを助手席に座らせ立ち上がらない様に言い聞かせると、私は運転席に座りさっき置いた元の霊元石の半分の霊元石が嵌っているのを確認した。


 深緑色の霊元石を見ているとこの世界に転移したきた時のことを思い出した。


 たった数日前のことなのに随分と時間が経った様に感じる。


 ベガは液晶画面のナビシステムで画像にある家のアイコンを押せば地球の私の家を目的地に設定できると教えてくれた。


 え? 異世界でもそれで家に辿り着くの? と思ったけどベガが言うのならそうなのだろう。


 本当にお母さんの力ってチートすぎるわ。


 と心の中で思っていたら

『何を言っている。其方の力の方がチートだぞ』

 とベガの言葉が飛んできた。


 え? 私の力? 確か、天役だったよね。まあ、天気を操れるなんてすごいけど、雨にしたり晴れにしたりなんて、お母さんの力ほど役に立つとは思えない。


 ベガの言っていることはよく分からないけど、とにかく今は地球に行って必要な物をそろえるのだ。


 ハンドルの奥に埋まっている二つの霊元石にエネルギーを注ぐ様にゆっくりと手のひらで撫でた。


 ここにきた時は驚きすぎて気づかなかったが霊元石が僅かに熱を持った様に感じた。すると、光が放たれ周辺が真っ白な光に包まれた。


 白い光が収束すると、私たちはあの懐かしいガレージの中にキャンピングカーごと移動していたのだった。

ここまで読んでいただきありがとうございます。

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