表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

7/11

お嬢様と今度こそダンジョンで修業します(3)

「あ、あのね?わたくしもね?ここまで早いとは思わなかったですわよ?思ったよりサクサク進んでしまったから……ついね?」


 私の視線に耐え切れなかったようで、焦って言い訳じみたことを口走り始めました。


「だ、だって、『赤』のダンジョンですのよ?もっと強いモンスターが出てくると思いましたの!それが、何の手ごたえもなく、レベルだけが上がるなんて誰も思いませんわよ!レベルが上がるせいで、さらにモンスターが弱く感じてしまうし……」


 何も言わないままでいると、上塗りをし始めました。


「……そうですわ。『赤』なのにここが弱いのが問題なんですわ。帰ったら、父様に『緑』にしてもらわなくては……」

「それはやめてください」


 物騒なことを言い始めたので、流石に止めました。


「ここのランクは間違いようもない『赤』ですから。リゼお嬢様が異常に強くなりすぎただけです。一般の冒険者を巻き込むのはやめてください」

「……」

「無言で睨むのもやめてください。……そのお顔も可愛いですね」


「……はぁ」とリゼお嬢様の口から、大きなため息が吐き出されました。


「この階段を上がれば、最後のボスですわよね?」

「そうです。ドラゴンがいます。リゼお嬢様の期待に応えてくれればいいですね」

「……冗談ですわよね?」


 私は本気で心配しているのですが……。

 リゼお嬢様も強く否定できなくなっているじゃないですか。


「と、ともかく行きますわよ!」


 さっさと早足で、階段を上がり始めました。

 取り残されないように、後をついていきます。

 リゼお嬢様は、階段の先にある扉の前で待っていてくれました。


「開けますわ」


 開いた扉の向こうには、青空が広がっていました。

 頂上には屋根がありません。ドラゴンが空を飛ぶのを邪魔しないように設計されたのでしょう。


「あれ?なにも居ませんわね……」


 辺りをキョロキョロしながら、真ん中へ向かって歩いていきます。

 ……リゼお嬢様は、ここのボスがドラゴンということを忘れてしまったのでしょうか。


「そろそろですよ」

「え?」


 その時、地面に大きな影がうつりました。

 バッと見上げると、そこには大きな翼を広げ、まるで強者のような風格でゆっくり降りてくるトカゲがいました。


「……シャノン?」

「何でしょうか?」

「今までと差がひどすぎません?」

「リゼお嬢様なら大丈夫ですよ」


「えぇ……」と言いながらも、すでに拳に深緋が付与されています。

 リゼお嬢様も冒険者になりましたね。


 グゥオオォ!!!


 空気がビリビリと震えます。

 うるさいですね。


 リゼお嬢様が、ドラゴンが吠えると同時に、駆けだしました。

 今までだと、モンスターが反応できないまま吹き飛ばされて、そのまま倒してしまっていたんですけど……。


 ドゴォッ!


 おお!リゼお嬢様の拳に耐えています!

 普通に生活している限り聞くことのない、ものすごく鈍い音だったので心配でしたけど。

 流石『赤』のボスですね!

 リゼお嬢様の表情も、驚きながら嬉しそうにしています。良かったですね。


 さあ!今度はドラゴンの反撃です!

 今の一撃で危機感を持ったのでしょう。口を大きく開きながら翼を羽ばたかせ、空へ逃げていきます。

 安全圏からブレスで一気に終わらせる魂胆なのでしょう。


 まあ、空が安全圏と思い込んでいる時点で、ダメですけど。


 ドラゴンの口が光り、リゼお嬢様がいた場所にブレスを放ちました。

 ビリビリと衝撃が私のところまで届きます。

 ……威力はまあまあですね。


 ブレスを放ち、リゼお嬢様を消し飛ばしたと油断しているドラゴンが、ボゴオォという音とともに、地面に沈みました。

 もちろん、リゼお嬢様の一撃です。


 自分のブレスの光で見えていなかったのでしょう。

 ブレスを放つ瞬間にドラゴンの後ろ側に回り、頭上を越す高さで飛び上がり、油断しているところを、ガツンと殴り落としました。

 赤、青、黄の基本色すべてを混ぜた三色混合に加え、レベル400越えによる力業ですね。


 数秒ほど待っても、ドラゴンは動き出しません。

 ああ!キラキラした粒子になって消えてしまいました。


 ドラゴンも今のリゼお嬢様にかかれば、力業でどうにでもなる空飛ぶトカゲにしか過ぎないということが、証明されてしまいました……。


「……や、やっちゃいましたわ」


 トカゲがいた場所を見ながら、ぽつりとこぼした声が聞こえました。

 これは、やっちゃっていますわ。


お読みいただきありがとうございました。


「面白かった!」「続きが気になる!」と思ってくれた方は、

『ブックマーク』や評価を★★★★★に変えて応援していただければ、嬉しく思います。


皆様のブックマークと評価はモチベーションと今後の更新の励みになりますので、

どうぞ、よろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ