覚悟
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「死にてぇ」
学校の屋上。物騒な言葉を吐く独りの少年は、落下防止用のフェンスを背に、赤く染まった空を眺めていた。
BGMには部活の掛け声。
野球部の大きな声や体育館からするシューズが床に擦れる音。
そして、少年の胸には強く握りしめた右拳が。
少年は小さく「よしっ」とだけ呟き、フェンスを乗り越えようと手をかける。
屋上から地面は相当な距離があり、当然落ちれば無事では済まないだろう。
先程とは反対向きでフェンスを背に夕空を眺める。
とても綺麗で、そして切なかった。
数秒前の自分はこの空に背中を押され、フェンスを乗り越える覚悟を決めたというのに、今はその同じ空に押し戻されている気分だった。
おかしな話だ。
どうして、こう、死ぬ直前というのはこんなにも寂しさを感じるのだろうか。
こんな時に限って楽しい思い出が蘇る。
今思い出すのは酷い記憶だけでいいのに。
そうすれば迷うことなく自分は死を選ぶことが出来るのに。
ほんの数秒。
少年はフェンスを超えた縁に座り考える。
少年は乾いた笑いを独り零し、薄く涙を浮かべ、雲ひとつない夕空に吸い込まれる。
落ちてゆく彼の手を掴み、引き戻す手は、
ない。
重いテーマになって申し訳ないですけど、是非お楽しみいただければ幸いです。