神官王子は世を救いたい
物書きとして初めて書いた練習作です。もしも連載することがあれば添削、肉付けして連載します。
王の間、荘厳な空気を感じ位の低いものは入ることすら許されないそのような場所で、俺は跪き国王である父の前にて頭を垂れていた。
「第二王子ガイベル、王太子暗殺未遂の件でお前の第二王子立場を剥奪する。」
ああ、もう終わりか…
父である国王から向けられた言葉から俺の頭に浮かんだのは諦めだった、兄を害する気など微塵もなく冤罪ではあったのだが、冤罪である、と言ったところで何処からか現れた証拠のせいでその言葉を信じてもらう事は不可能だろう。
証拠とは、俺が調合した魔法薬の事だ、幼い頃から俺は医療や薬学に関心を持っていたため、医療知識を学んでいた。第二王子という立場上あまりよく思われなかったものの、それでも俺自身がやりたかったことだったので無理を通した。
その魔法薬は、俺が独自に研究し開発したもので、魔法薬と普通の薬に違いがあるかといえば、通常の薬が症状に対し適切な処方をすれば効果が表れるのに対し、魔法薬は特殊な条件と正しい処方をすれば様々な症状に対応できる一種の万能薬に近い効果があり、俺の傑作品とも言えるものだが、扱いが特殊で処方を間違えると死に至る…まではいかないまでも悪くて昏睡状態にはなるだろうという事は実験で失敗しそうなったことのある俺しかわからないことだ。その薬が王子暗殺未遂に使われた、という事で製作者の俺が疑われたのだろう。
うまいことやったものだな、アイツが裏切るなんてな
俺が最近薬を渡した相手で使い方を丁寧に教えた相手に一人心当たりがあった。アイツは相応に野心を持っていたし、落ちぶれた家を持ち直させるため支援者を求めていたことも知っていた、その支援者として目を付けられ、紆余曲折の後、友人と言えるような関係になったと思っていたが…
いや、たとえ友人であったとしても、それ以上の利益があればアイツは…
アイツならそうするか、と心の中で苦笑する。よく言えば世渡り上手なアイツの事だ、友情よりも自身の利益をとったのだろう、そういう男だからこそ逆に信用できたし恨み言も思ったより浮かばなかった。そんな事よりもアイツを利用し俺をこのような状況に持ってこれるような人物…
チラ、と横目で見るとそこにいたのは同じ学園に通っていた隣国の第三王子と
……マーガレット……
その隣には先日まで俺の婚約者で、先日俺の方から婚約の解消を願った、俺の元婚約者の姿があった。眉根を下げ悲しそうにこちらを見ているのだが、なぜ彼女がそんな顔をしているのだろうか、学園では彼女と第三王子が懇意であるという話は有名だったし、俺自身が彼女と第三王子が楽し気に談笑していたり、中庭で笑いあったりなどしている姿を見たことがあったりしていた。俺よりも彼の方に好意があるんだなとも思っていたし、何より以前から俺のことを避けていたのは彼女だ。
俺とマーガレットの関係は、婚約直後の頃は、我儘で自身の家の使用人を困らせていたり、勉強の時間になっても隠れたりして周りに迷惑をかけていたりしたものの、度が過ぎたようなことは決してしなかったし、第二王子の婚約者に選ばれてから始まった教育が辛かったのか目に涙を溜めたりしたこともあった。そんな彼女に対し普段は強がっているものの意外と弱いところもあるんだなと思って優しく慰めたこともあった。
「なやんでることがあったらぼくにいいなよ、いつでもきいてあげるからさ」
「がいべるさま…はい…つらいことがあったらがいべるさまにいいます。ありがとうございます。」
と言って涙に濡れた瞳で笑顔を向けられた時に胸が締め付けられるような感覚になったことを思い出す。あれはおそらく初恋だったのかもしれないな、と今ではそう思えた。
しかし、彼女と婚約してから二年後、今から10年前ほどに彼女が高熱を出し1週間ほど寝込んでいたことがあった。熱が下がりお見舞いに行ったときに、彼女と会った時に俺は愕然とした。あまりにも彼女が以前とは別人になっていたからだ。その時に俺は思わず。
「君は一体誰だ?」
と聞いてしまったのだ。その言葉を聞いた彼女は一瞬驚いた顔を見せるもすぐに取り繕い。
「誰だ、とはあんまりです。あなたの婚約者のマーガレットですわ。殿下。」
マーガレットはそう言った。マーガレットは俺の事をガイベル様、と呼んでいたし何か違和感を感じた為に。
「君は…マーガレットは感情を取り繕うのが下手だった。いくら何でもひと月でここまで変わるものか?」
と俺が聞くと若干顔色を悪くし、婚約者として相応しくあろうとしているだけです。などと言ってその場をごまかしていたものの、違和感があったが故にその後何度か彼女を訪ねても、調子が悪いなどと言ってあの日以降彼女に避けられて今に至る…といった状態である。
最近分かった事なのだが俺の特殊な事情により、彼女が以前のマーガレットではなく誰かが成り代わった存在なのではないか、と確信付ける理由がある。別人であると思っても彼女の立場が婚約者であることには違いはなかったので、彼女自身悪人でもなかったから、こちらから距離を詰めようと思っても避けられていたし、学園に入学してからは第三王子が彼女の近くにいたし、仲良くしていたようだったので彼女の幸せの為に、と婚約の解消を願い出たのだが、なぜか彼女は驚いた顔をしていた。そのように過去を思い出していると
「弁明はあるか?ガイベルよ。」
重く威厳ある父王の声が俺を現実に戻した。このような状況になっている以上、もうあちこちに根回しを済ませているだろうし、証拠も存在しているのだ。何を言ったところで理詰めにする準備はできているだろうし、未遂とはいえ王太子暗殺である。俺は研究にかまけて貴族派閥などに興味を持っていなかった為そういう意味でも俺を助けてくれる相手はもういないと理解した俺は。
「…なにもございません、いえ、一つだけ申し上げるのであれば私は自分の薬を他者を害するために作りはしません。それだけは…私が今まで研鑽してきた技術を裏切る真似だけはすることはありえません。ただし現実で私の薬で事が起こっている以上、私の罪は無くなることはないでしょう、甘んじて、罪を受け入れましょう。」
そう返すことしかできない、医療を学んできた矜持として一つだけは認めることができなかったが。
「そうか…ならば最程申した通りお前から王族としての席を剥奪し、教会の神官としての任を与える。なお教会で権力を持たせるわけにもいかん、故に元王子とはいえ最高でも司教位までとする。無論初級神官として行かせる故司教位につけるかはお前次第だ。」
その言葉に正直驚いた、王太子暗殺未遂である、良くて幽閉、最悪死刑を覚悟していたので、権力は無くなるものの教会の庇護下であれば自由に動いてもいいという事であろうか、教会の業務の一つに人の怪我や病の治療といったものがあるため、寧ろ俺に向いた仕事を与えられた事になる。
父は俺に最後の情けを与えたのだろうか、いや、折角温情を与えられたのだ。
ならば俺がすべきことは
「…は…、陛下の温情有り難くお受け致します。誠心誠意を持って与えられた任を果たさせていただきます。」
誠意を持って任を果たす事だけだろう、もう此処には俺にとって大切なものは存在しない、友人は何かしらお互いに利益があれば俺を利用するために近付いてくるだろうが、元婚約者はもう会うことはないだろう、俺は跪いていた身体から立ち上がり一礼するとその場を後にした。
初めて書いたので文章力とかが足りてなさそう…婚約者と主人公しか名前ないのは仕様です。