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勇者の活躍の陰で

「化け物め!!」


 なん、で?


「お前なんて!」


 なんで、なの?


「死んでしまえばいい!!」


 なんで、こんな、こと、言われてる、の?


 私は、悪を、【魔王】を、倒しただけなのに。君たちの王に倒してくれと頼まれたから。なのに、なんで、なんで!


「死ね!!」


 私が救った筈の民は、私を殺そうとしてくるの……?





◇◇◇◇◇



「陛下! 勇者様から連絡が入りました!」


 王に重宝されている古参の文官が王の寝室にてそう連絡したのは、勇者が王国に帰ってきた1ヶ月前の早朝だった。


「ほう……どのような連絡だった?勇者が重症でも負ったか?」


 陛下、と呼ばれた男は勇者からの連絡、と聞いて嬉しそうに目尻を下げて、しかし声色は心配しているようにしながら文官に尋ねる。


 もしも文官が顔をあげていれば勇者が重症を負ったか?と聞きながらも嬉しそうな自国の王に疑問を抱いたかもしれないが、相手は国王。頭を垂れるのは当然である。故に文官は異常に気が付ける筈がない。


「いえ!魔王討伐に成功したようです!」


 ……よって同様の理由にして文官の報告を受け、国王が持っていたカップを握りしめ、それによってカップにヒビが入ったことにさえも気付けない。


「そう、か。それはそれは。帰ってきたら祝わなければならんな。宴の準備をしてこい」

「はっ!」


 故に、国王の言葉を一介の文官が疑う訳もなく、後ろへと下がる。そうして、パタン、と扉が閉まるのを確認してから国王は一瞬のうちに張り付けていた笑みを消す。




「魔王討伐に成功、じゃって?とても、とても、素晴らしいことじゃなぁ」








「だが、もしもその力を勇者が我らに向ければどうなる?」


 国王の表情は、つい先程消し去られた張り付けた笑みから、ここにはいない勇者に向けた畏怖と恐怖が入り交じりった表情へと変わる。



「魔王を倒した勇者、その力がもしもこちらに向けば一瞬で我らは殺される」






 ――【勇者】であるというだけで、我々と彼女には己が持つ力に雲泥の差があるのだから。


「いつ爆発するか分からん爆弾を抱え込むつもりはないからな……国民の不安を煽るとするか」



 そうして、国王発案で、




『勇者は魔王を倒したがその代わりに魔王の魂に取りつかれてしまった。勇者の姿をした者を見つけたら殺せ。いくら嘆いても、可哀想に思えてもそれは魔王の作戦に過ぎない。躊躇うな。躊躇ったならその者は魔王軍の一員であると見なす』




 と、国民に通達されたのだった。


 そして、その通達が行われた1ヶ月後、


 何も知らない【勇者】が王国に帰ってきた。




 そうして、()()()()()()()()()()()()()守り、信じていた民に罵られ、殺されかけ、勇者は心身共に崩壊してしまった。












 とある男が、国王発案の


『勇者は魔王を倒したがその代わりに魔王の魂に取りつかれてしまった。勇者の姿をした者を見つけたら殺せ。いくら嘆いても、可哀想に思えてもそれは魔王の作戦に過ぎない。躊躇うな。躊躇ったならその者は魔王軍の一員であると見なす』


 と、書かれた立て札を見ていた。



「人間は愚かだよなァ。恐ろしいから、って理由で本来なら無条件でこのまま民を守ろうとしてた勇者の心を、自分達で壊すんだからよォ」


 そう言ってその男……魔王討伐完了の報告を行った文官の男は、人間への蔑みを含んだ苦笑を禁じ得ない。


 その後に脚を振り上げ、そのままその“人間が愚かである”と証明しているも同然だと言っている立て札を叩き潰す。


「そんじゃあ俺は、主さんのとこに戻ろうかねェ」


 そしてそれを偶然にも見てしまった、国の上層部の事情も何も知らぬ新人の騎士は、立て札を壊した文官の男からは死角となる物陰に隠れ、主さん??と、首を傾げている。そんな考えは無駄になるとも知らずに。


「ここに居座ってもただ勇者による人間の虐殺に巻き込まれるかも知れねェし。まァ?あのお優しい勇者様がんなことするとは思えねェけど」


 立て札を壊した男はまるで、否。心の底から可笑しくてたまらないと言うようにゲラゲラと笑う。


「まッ、戻る前に」


 ――いつの間にか、立て札を壊した文官の男は物陰にいた者の後ろにいた。だがしかし物陰にいる騎士はそれに気付かずに立て札を壊した男を探している。


「邪魔もんは消さねェとダメだけどなァ!」


 こうして、いきなり立て札を壊されて驚いて隠れた新人の騎士は何が起こっているのかも分からないであろう数秒のうちに、太陽の光を浴びて少し輝いた白銀の糸にその身を引き裂かれた。


「よし! こんで問題ねェな」


 立て札を壊し、更には人を殺した男は狂った様にアッハハハハ!と、愉快そうに笑いながら国の外へと出ていった。



 お久しぶりの方はお久しぶり、ほぼ全てを占めるであろう初めましての方は初めまして。黒瀬怜衣と申します。


 この作品は基本的に、月1更新を目指した不定期更新にしたい、と思っているんですが、今日を含めた3日間で取り敢えず5話投稿しようかな、と思ってるのでタイムテーブル(?)作ってきました。


2話目→今日3時ごろ投稿

3話目→今日8時ごろ投稿

4話目→明日午後投稿

5話目→明後日午後投稿


 こんな感じのになっているので、良かったら読んでみて下さい!では!あでぃおす!

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