①「ぶひぃぃぃぃぃ!」
間曽山 平助
小学生のころに「マゾ山スケベ」といじめられ、耐えるためにMとして覚醒した。覚醒した経緯から女性、特に年下に罵倒されるのが好き。自分の痛みを敏感に感じるが、他人の痛みにも敏感。
勅使河原 まりあ
理事長の孫。間曽山の前任が辞めた元凶。家族以外の男に恐怖心を持っているため、近づけさせないために罵倒する。
魂魄さん
先輩ようむ員。
中飛車女子学園。俗に言うお嬢様学校である。
初等部、中等部、高等部、そして大学部まであり、富裕層の少女たちが通っている。
今、俺が歩いているのは、高等部の玄関口に向かう私有道路であり、高等部の生徒たちの大半は、こんな俺にもにこやかに挨拶してくれる。
「用務員さん、おはようございます」
長い黒髪をなびかせた大和撫子系美少女の彼女は、高等部一年の清宮さんだ。働き始めて一週間だが、彼女は毎日挨拶してくれる。なんて良い子なんだろう。
「おはよう清宮さん、今日も授業頑張ってね」
清楚な少女の挨拶に、俺も精一杯に作った笑顔で返す。
こんな俺にも挨拶してくれる。なんて良い子なんだろう。
「うわっ、マゾ山じゃん、今日もみすぼらしい恰好してんね」
……こんな俺にもにこやかに挨拶してくれる。
金髪のクオ……クワトロ? の地毛であるらしい、綺麗な金髪を側頭部で縛ったツインテールをぶらぶらさせたメスガキ系美少女の彼女は、同じく高等部一年の勅使河原まりあ。
「おはよう、まりあちゃん! これは、この前みたいにぶっかけてくれていい服装だよ!」
甘やかされて育ってきたメスガキの罵倒に、俺は気持ちよくなってしまいニヤニヤしながら返す。
いやぁ、まさか俺が毎日、女子高生と朝の挨拶をするようになるとは……
この俺、間曽山 平助は中飛車女子学園の用務員であり、女子高生の飲みかけイチゴ牛乳をかけられて悦ぶマゾヒストであり――
――元性犯罪者だ。
orzハァハァ
一か月前、迷惑防止条例違反で18歳の少年が逮捕された。
その事件では、加害者(つまり俺)が被害者女性に対して局部を露出、精神的苦痛を与えたとして現行犯逮捕された。
ここまでは普通の露出魔事件だった。加害者は法律に則って書類送検と数週間の勾留。18歳は法律で成人として扱われるものの、加害者の周囲への風評被害を防ぐために氏名を公表しなかった。だが、
『教師になりたくて受験していた大学に落ち、むしゃくしゃしてやってしまった。女性に罵倒されたかった。被害者の方には本当に申し訳ないことをしてしまった』
『被害者女性は、特に局部は視認していなかったため精神的苦痛は少ないそうです』
加害者の正直すぎる供述と、被害者女性の代理人が少しでも加害者の罪を軽くしようと配慮しようとした発言が、夕方のニュース番組で取り上げられたことにより、加害者は
「ドMで短小の救いようのないヤツ」
「日本にはまだこんな若者がいたのか」
「crazy!」
とネットで少し人気者になった。……いやバカにされてんな、これ。
とにかく、俺は前科持ちになり、勘当され、ホームレスになり、何やかんやあって――
「……キモっ」
「ぶひぃぃぃぃぃ!」
お嬢様学校の用務員もとい、メスガキのおもちゃになった。
バイトあるある①「新人の頃にはお客さんにも身内にも、張り切って挨拶しまくって疲れる」