ワンナイトラブ
「このクラス...この学校で過ごすのも今日が最後です。春休みが終わればみんなそれぞれ違う高校に進学することになります。なので最後に皆さんの思いを伝える告白会をしたいと思うます。」
盛り上がるクラスを横目に朧気に聞いていた。校舎が見える校庭にいる僕らに司会役の委員長は言った。女子はみな大はしゃぎである。私の目に映るのはただ1人山下茜。
小中と9年間同じクラス。ただそれだけ。誰にでも明るく振る舞う少し天然な彼女に勘違いをしただけだ。それでもこうなってしまったからには仕方ない。
「もう、最後だし...」
ふと聞こえた声は誰のものだったか、1人の男子が女子の群れに飛び込んでいった。さらに盛り上がる外野。こういうのは苦手だが何故か気分が高揚している。
ふと目が合ったのは噂の彼女だった。目が合うと嬉しそうに笑い言った、早く来て。
声が聞こえた訳では無い小さく動かしたその口に自分の妄想を当てはめただけなのかもしれない。
「はぁ、俺も行くしかないかな」
そう言って今度は司会役の女の子に向かって歩いて行った。その彼は普段大人しく絶対にこういった場面でなにか行動を起こすような人ではない。彼の行動に違和感を覚えながらも回らない頭で考える。
きっと今が最後のチャンス。今まで何度考えたことか分からない。高校に入っても大学生になっても彼女が出来てもふと君のことを考えてしまう。何をしているのか、元気にしているのか、彼氏はいるのか…。むず痒い思いをしてきた。それを断ち切る最後のチャンス。
僕は一歩を踏み出した。彼女に向かって...
「茜、小学校からの9年間同じクラスだったね。高校は違う高校で同じになることはもうないけど、茜とは...えと...」
いざとなると言葉が出てこない。緊張している僕には周りが見えていない。こちらを見守るクラスメイトに。
「俺、あかねのこと好きだ。会えなくなって5年もたっても君のことが忘れられない。何も無い時、ふと過去を思い返す時いつもそこに君がいる。伝えられなくてもどかしかったこの思いをやっと伝えられた。好きだ」
彼女は綺麗に笑いながらうんと言ってくれた。そしてなんで今までもっと早く言ってくれなかったのと怒りながら。
場所は変わって教室に先程あった告白会のことで未だに盛り上がっていた。その喧騒を破るように入ってきたのは女子ソフトテニスの顧問である渡辺先生だった。
「あのね、とても残念です。今日はみんな卒業の日で最後だから生まれるのも分かります。でもね君たち春休みが終わったらもう高校生ですよ。こんなんじゃ高校ではやっていけませんよ。私のところに来た2人とそれをからかう人達。職員室でしょそこは。そんなにはしゃいで...」
成人しているにしては高い声、まくし立てている先生を見ながら急に意識が覚醒していく…これ夢だ
飛び起きた私が先ず確認したのは時計だった。
いつもの習慣の2度寝。時計は9時6分を指す。またやってしまった。今日は12月24日本来なら冬季休業になっているはずの日。暴風警報が発出され流れた授業の振り返りの日。そしてクリスマスの日。最高な夢を見た最悪の日。現実をまじまじと突きつけられた朝だった。
こんな作品を閲覧してくれてありがとうございます。今回小説を投稿させて頂いて改めて書くことの難しさをら痛感しました。普段閲覧している小説を書いている皆様には本当に尊敬の念を抱かずにいられません。