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会津遊一 ホラー短編集

エレベーター

作者: 会津遊一
掲載日:2009/08/09

少年は学校からの帰りに、寄り道をしていた。

茹だるような暑さだったので、家まで体が持たないと思ったのだ。

コンビニでかき氷を買い、そして近所の公園でガブリと一気に頬張った。

すると、あっという間に口の中で冷たい氷が溶けてしまう。

火照った体から熱を奪ってくれるのが妙に気持ちよかった。

少年はブランコを漕ぎつつ、1人で笑っていた。


かき氷が食べ終わった頃。

昼と夜の隙間が地平線の向こうから顔を出し始めていた。

粛々と鳴いていた虫達も、けたたましいぐらいの合唱になっている。

もうすぐ日が暮れる。

少年はゴミを捨て、家に向かうことにした。

背後からヤブ蚊が追ってきているような気もしたのか、少し早足になっていた。


朽ち果てた建物を見つけたのは、その途中であった。

ビルは伸びていく影から隠れるように、ひっそりと佇んでいた。

灰色の壁にはツタが巻き付き、至る所に落ち葉や木屑が散乱している。

窓には板木が打ち付けられていて、浮浪者が侵入できないようになっていた。


しかし、この様な廃ビルは珍しくはないだろう。

夕日に赤く染まる風景の一つとしか思えなかった少年も、そのまま通り過ぎようとした。

その時、ポーンという音がしたのだ。

電柱の上でカラスがギャアギャアと鳴いているが、少年には電子音が聞こえたのだった。


音は、廃ビルの中からした。

しかし、まさかこんな所に誰かいるというのだろうか。

好奇心が沸いた少年は、板木の隙間からビルの中を覗いた。

すると、使われているエレベーターが見えたのだ。

扉は開いている。

蛍光灯の明かりだけが、薄暗い廃ビルの中でボォっと光っている。

本当に、誰か住んでいるのかもしれない。

少年は食い入るように、エレベーターを見続けた。


だが、最後まで人影がやってくる事はなかった。

それどころか、暫く経過してもエレベーターの扉が閉じられなかった。

ずっと開いたまま。

まるで、誰かが乗るのをジッと待っているかのように……。

薄気味悪く感じた少年は、駆け足で帰宅したのであった。


次の日。

あの後が気になった少年は、再び廃ビルを訪れていた。

カビ臭い板木の隙間から中を覗くと、扉は閉まっていた。

やっぱり誰かが使ってるのか。

そう胸をなで下ろした時、エレベーターが開いたのである。

ポーンという地味な音が鳴り響く。

そしてまた、扉は閉まらなくなったのだった。


もしかして、本当に自分が乗るのを待っているのだろうか。

少年はゴクリと唾を飲み干した。

下腹部がキュッと絞め上がり、もう口の中がカラッカラになっていた。

怖くなった少年が逃げだそうと振り返った瞬間、目の前に父親が立っていたのだ。


突然のことに、少年はギョッとした。

驚きのあまり背骨の真ん中に冷たいモノが走った。

少年が、何故こんな所にいるのかと尋ねようと口を動かす。

だが、その前に父親はエレベーターの方を指さしたのだ。

それは、無言のまま乗れ、と言ってるかのようであった。

父に表情は無い。


怖く感じた少年は、その場から逃げ出した。

帰宅後。

恐る恐る父に理由を尋ねたが、そんな所には行っていないと言う。

あれは何なんだったろうか。

エレベーターは何処へ、運ぼうとしたのだろうか。

 

 

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― 新着の感想 ―
[一言] アリですね。こういうの。 結論を出さず、読み手の想像に任せるという手法は、読み手からすると楽しく感じられることもありますが、書き手からすると手抜きと紙一重であるような印象を受けかねません。 …
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