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閑話:山科言綱

どうもご無沙汰しております、閑話です(テヘッ)

有馬の湯に身体を浸しながらつい先日のことを思い返す。

ほんにおもしろき童であったのう…ふふ…まさか公卿たるわしに獣の肉を供するとはのう…

じゃが、あれは道理を弁えぬ子供やただのてんごう(いたずら)ではなく、しかと知性ある者の目をしておった。まだ日は浅いとは言え『生き馬の目を抜く』宮中で揉まれておるわしの目はごまかせん!


案の定じゃった!いや、まさかあれほど獣の肉が旨いとは…っ!いかん、思い出したらよだれが出てきてしもうた;

土産にと肉料理も包んでくれておったが「あまり日持ちがせぬゆえお早めに食べてください」と申しておったし『西ノ宮の神酒』とともに少しここへ持ってこさせて食べるか?

あの『西ノ宮の神酒』も格別であったのう…。喉ごし爽やかにて辛みの中にふんわりと米の甘みが広がる…醍醐の清水もかくやという程に飲みやすくそして旨い。これと肉料理との組み合わせがまた抜群で、野趣に溢れた味の肉とその脂でいっぱいになった口の中を『西ノ宮の神酒』の清涼とした風味がきれいに洗い流す。この二つがあればいつまでも食べていられたのう…

うむ。やはりここへ持ってこさせよう、我慢ならなくなってきた!こうして湯に浸かりながら一献やるのもまた雅というものであろうよ。





けっきょく都に帰ってすぐに肉を食べつくしてしもうた;一度わしも山科の荘園で獣を狩らせ料理させたのじゃが臭くて固くてとても食べられたものではなかった…。吉井殿が上洛して来る折にはまた肉料理を持ってきてくれるかのう?と淡く期待して日々を過ごしているとようやく上洛の報が聞こえてきた。なんでも幸丸殿も一緒らしい。気配りのできる吉井殿であるしこれは期待できそうじゃ!



やはり吉井殿は出来たお人じゃ。きちんと我が家にも挨拶に訪れ肉料理と神酒を差し入れてくださった。

そこで幸丸殿の話も聞いてみると、祇園祭に合わせて白川家の者と祇園社とで何か企んでおるらしい。何をするつもりなのかと聞けば肉料理の店を出すとか!これは聞き捨てならぬ!あの旨い肉料理が食えるとあらば是非とも行かねばなるまい!

じゃが心配事もある。京の町は法華や比叡の影響力が強くて打ち壊されかねないということじゃ…。そんなことは絶対にさせてはならぬ。ここは味方を増やさねば!幸い我が家は薬学を家業としておるし明では獣を薬で使うこともある。そのことを宮中に知らしめて味方を得ることにしよう!



こうして無事に祇園祭を迎えることができたのじゃが、牛頭天王と牛をかけて「その身を内に宿して病魔を退ける」か‥幸丸殿もうまいことを考える。このように言われては半信半疑としても食べてみようかと思うかもしれぬ。

この理由付けゆえに店では牛の肉しか扱っていないようではあるが、なに構わぬ。牛の肉だけでもたくさんの料理があるので一日では全部食べ切れぬ。これは毎日通うしかないな!他の公卿も幾人かは興味本位か食べに来ておるようじゃな。わしが毎日肉料理の魅力を語って聞かせたのもあるかもしれぬ。


しかし!肉料理にはたいへん満足いくのじゃが一つ許せんことがある!なぜ『西ノ宮の神酒』がないのじゃ!あれが無ければ片手落ちであろう!ちょうど廣田神社に働きに出た唐橋家の者がおったのでそのことに文句を言うと、

「祇園社で廣田神社の神酒を売るのは憚られますので…」

と、もっともなことを言いおった。道理ではある…道理ではあるのじゃが…ぐぬぬ!

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