『袴着の儀』
あんたも好きねえ・・・(大感謝)
「若、これにて『袴着の儀』つつがなく終わりましてございます。」
「信興叔父上ありがとうございます。つきましては今までお世話になってきた親族の皆様に改めてご挨拶を申し上げたいと思うのですが」
「ほっほっ、幸丸はほんにしっかりしておるのう。のう良輝。荒んだ時代ではあるが、この子がおれば我が家も安泰というものであろう。」
「はっ。父上のおっしゃることもごもっともにございますが、些か突拍子もないことをするので我らは苦労が絶えぬのですが;」
「多少のことは目を瞑ってもよかろう。大人どもに混じっていろいろやっているようではあるが、大人どもから報告も受けておるしおもしろき物を作っては見せに来てもいる。そうじゃ、あの石鹸というものはなるほどよく身が清まる。荒魂様の生まれ変わりというのもあながち間違っておらぬかもしれんぞ。」
「父上がそうおっしゃられるのであれば改めて席を設けることといたしましょう。それでよいか幸丸?」
「父上、お爺様ありがとうございます!」
~自室にて~
さて、ようやく場が整ってきたぞ。意図したことではなかったが、廣田神社の祭神である天照大神の荒魂の生まれ変わりという風聞は思わぬ名声となって俺の行動を後押ししてくれている。
さらに、親族衆のなかでも前当主である良玄お爺様の支持を受けているのはかなり大きい。率先して参詣する人々に孫自慢されているからな(笑)。おかげで事あるごとに引っ張り出され、主だった人たちへの面通しは済ませてある。
よ~し、開発した商品を廣田神社印として直営店を作ってばんばん販売するぞ~。親族衆の中から商いに明るい良淳叔父上とともに形にしよう!
とうぜん実務は良淳叔父上に丸投げするつもりだ笑。俺は口だけ出す!なんせまだ子供だからね!
商品の第一弾は先ほどお爺様が言っていた石鹸だ。すでに完成品をモニターを兼ねて家族に使ってもらっている。
これはかろうじて小学校の時に理科の実験で作ったのを思い出しながらなんとか形にしたものだ。
使ったのは木灰と油と水!これは固まるまで2~4週間かかるうえに当初はうまく固まらなくていくつも失敗したが、失敗してできた液体?石鹸も水で伸ばして洗髪に使えるからオールオッケー!今では木灰にする木の選定も終え香り付けもできるようになった。
もちろんこれは衛生観念の向上目的もある。禊を大事にする神社であるから清める行為というのは受け入れやすく、うちで販売することでありがたみも増すという寸法だ。ついでにこれを開発した俺が更にありがたがられたのは言うまでもない笑。
油がちょっとお高いのが問題といえば問題かなぁ?
・・・とそうだ。うちの財政を一括管理する部署を作らなければ!
用語説明:『袴着の儀』は七五三の原形と言われる宮中行事です。5~7歳の男の子がやったらしいです。作者の知識はその程度です…