表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/11

第7話

「スー、スー」


 まいったな。

 泣き止んだと思ったらそのまま眠っちゃった。


 寝ている女の子を抱きしめるおじさんの図。


 うん、どこからこう見ても犯罪だ。MajiでTaihoされる五秒前。

 なんて冗談言ってる場合じゃない!


 いや、本当にどうしよう?!

 このままだと本当に通報されちゃうよ!


 お、落ち着け。こういうときこそ落ち着いて冷静な行動を――


「あ、おまわりさん、こいつです」

「うわぁー?! 違うんです誤解なんですこれには事情が――って、玉井さん? あ、あのですね、これは犯罪とかそういうんじゃなくてっ――」

「ああ、はい、途中から見てたんでわかってます」

「は? え? 見てた?」

「はい」

「……じゃあ、警察は?」

「いやぁ、お約束かなって思いまして。テヘペロっ」

「――ッ」


 怒るな……。

 この人はこういう人なんだ。怒るだけ無駄だ。

 そうだ。玉井さんが一緒なら警察を呼ばれる心配もないだろうし、呼ばれたとしても説明をする余地もある。

 だから怒っちゃダメだ。耐えるんだ、僕……。


「とりあえず場所変えましょうか。さっきの泣き声で人が集まってくるかもしれませんし」

「そう、ですね」


 玉井さんの提案に従い、近くの公園に移動する。ちなみにいつもの公園ではない。

 運良く人はおらず、ベンチに並んで腰掛けた。この娘も横に寝かせようとしたのだけど――


「んううぅ」

「んふ、なつかれてますねぇ」

「え、ええ……」


 服を掴んで離してくれない。無理やり引き剥がすこともできるとは思うけど、それは可愛そうだし、仕方ないので膝に乗せて抱っこすることにした。


「これ、傍目はためから見たら対面座――」

「ストーップ! 人聞きの悪い事言わないでください!」


 玉井さんはどうしてこうなんだろう。

 冗談で言ってるのは間違いないんだけど心臓に悪すぎる。


「しっかし、先生がロリコンだったとは。今世紀最大の驚きです」


 くっ。否定したいけど説得力がない。


「それで、この娘の名前は?」

「あ、そう言えば聞いてないです」

「名前も知らないって……え? まさかマジで犯罪ですか?」

「違います!」


 あ、いや、ストーカーまがいのことしてたし、違うとも言い切れない?


「ええと、その……単純に僕の片想いで、遠くから見てただけでして……一回だけすれ違ったりして少しだけ話したことはありますけど、ほとんど話したことはなくてですね……」

「思いっきりストーカーじゃないですか」

「ぐうぅ」


 わかっていたけど、人から言われるとダメージが大きい……!


「まぁ、先生のことだから、マジでやばいことはしてないでしょうけど、女の子からしたら知らない男に付きまとわれるってだけで恐怖ですからね? 実害ないと警察も動いてくれないから助けを求めることもできなくて、気持ち的には更に追い詰められることになりますし」

「すみませんでした」

「そうですね。この娘が起きたらちゃんと謝りましょう」


 ああ……。

 改めて指摘されると、僕は本当にとんでもないことをしてたんだなぁ。

 ごめんよ。起きたらちゃんと謝るから。本当にごめんよ。


「ん、んう……?」

「あ、起きましたよ」

「えっと? あれ、わたし……ここは?」


 寝起きで頭がはっきりしないようで、あたりを見回している彼女と不意に目があった。


「………………」

「えっと、おはよう?」

「~~ッ?!」

「ちょ?! 暴れないで! すぐ下ろすから落ち着いて!」


 ベンチはそんなに高くないとは言え、落っこちたりしたら怪我をしてしまうかもしれない。

 なんとか落ち着いてもらって地面に下ろすと、彼女は一目散に走っていってしまった。

 追いかけるべきかとも思ったのだけど玉井さんにやんわり止められてしまった。


「大丈夫かなぁ」

「先生は心配症ですね~。大丈夫ですよ、きっと」

「玉井さん、なんか企んでます?」

「企むとは人聞きが悪いですね~。まぁ、悪いようにはなりませんって」


 その発言がなにか企んでるって認めてるんだけどなぁ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ