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御伽冒険記  作者: TAR
3/4

第二章「芽生え始める心」

どうも、作者です。

言っていた通り、約一ヶ月ぶりの更新になりましたね(あ

申し訳ありませんが、気長にお待ち頂ければ嬉しいです。

今回はあまりストーリ的には進みませんね。何かこう、それに向けてのひととき、みたいな?(聞くな


ではでは、本編へどうぞお進みください〜♪

 木々にとまった鳥たちのさえずりが、爽やかに朝を告げる。そんな爽やかさとは対照的に、蒼汰は気怠そうにベッドから身体を起こす。

 十分な睡眠を取れたにも関わらずこれほど寝覚めが悪いのは、やはり昨日の様々な出来事の疲労がとれていないのかと、寝惚けた頭でぼんやりと思い、同時にそんな自分を客観視している自分の存在に苦笑する。

 とりあえず人様の家だからと、しわくちゃになった毛布を綺麗にかけ直し下に降りていこうかと迷っていると、コンコン、と聞き慣れたノックの音が響く。


「蒼汰さ〜ん! ……起きてますか?」


 声の主は言うまでもなく、レリスだった。最初の名前を呼んだ声が大きく、眠っていたら悪いとでも思ったのか『起きてますか?』の声がやけに小声だった。そんな優しすぎる気遣いに、蒼汰は思わず吹き出してしまう。


「……蒼汰さ〜ん。……起きてませんか?」


「あぁ、ごめんごめん。起きてるよ」


 一回目よりも更に小さくなった呼びかけに顔を歪めつつも、蒼汰はドア越しの相手に聞こえるように大きめの声で返事をした。すると、『入りますよ〜』という呼びかけをした後に、ドアをゆっくりと開いてレリスが入ってくる。そのあまりにも慎重な動作に、悪いとは思いながらも蒼汰は、またも吹き出してしまう。そんな蒼汰の態度を怪訝にでも思ったのか、レリスは首を傾げて蒼汰に問い掛けた。


「蒼汰さん。……私、何かしましたか?」


「いや、ごめん。さっきからやたらと俺に気を遣った態度してるからさ、嬉しいのは嬉しいんだけど、面白くて……。自分の家なんだから、もうちょっと堂々としててもいいのに」


 くっくっく、と息を吐き出しながら笑う蒼汰。しかし当のレリスは、ぽかんとした表情で蒼汰に言う。


「私、そんなに気つかってましたか?」


「あぁ、……うん。まぁわからないならそれでいいんだ。俺の独り言、悪かったね」


 自覚が無いということは、普段の生活からこんな感じなのであろう。蒼汰は彼女の、心優しい性格に好感を覚えた。本での赤ずきんも、優しくて明るい少女だった。

 ……やはり、昨日の狼との戦闘のときとは似ても似つかない。

 昨日一日は、血の匂いが頭にこびりついて冷静さを欠いていたが、よく考えるとわかることだ。狼たちは明らかに俺たちを殺そうとしてたし、それから身を守るのは当然の行為。優しい性格だからこそ、蒼汰に怪我をさせないようあれほどの手際で狼と戦ったのだろう。そうでなければ、蒼汰の手を引いて走ったり、蒼汰を庇うように立ったりはしないはずだ。今となってみると、そんな彼女のことを少しでも怖いと思った自分が、たまらなく恥ずかしかった。

 まぁもっとも蒼汰がそう思っているだけであって、実際のところ民間人があんな場面に立ち会ったらそう思うのも無理はないだろうとだけ、蒼汰を擁護ぎておこう。

 そして、蒼汰はレリスを見てまたも思う。

 あまり彼女を意識して見ていなかったが、こうして見ると昨日の赤ずきんちゃんルックとはまた少し違う服装であることに気付く。白地の可愛らしいブラウスに下は裾が広がっている長めのスカート。昨日はずきんで隠れてわからなかった、綺麗に輝く金色の長髪。抜けるような白い肌。その姿はどこからどう見ても可愛らしい女の子で、やはり彼女が普通の女の子であることを再認識させられる。年下であるため幼さは残るものの、レリスはその柔らかい雰囲気も合わさってかなりの美少女であった。蒼汰のクラスにも可愛い女子はいたが、それと比べても圧倒的だ。


「あ、あのぅ……。何ですか? 蒼汰さん」


 蒼汰がしばしその姿を堪能、いやその姿に見とれていると、あまりの視線に気になったのかレリスが言う。蒼汰はその言葉にやっと意識を戻すと、顔を赤くして押し黙る。恋愛経験など皆無の蒼汰にとっては、こういうときの上手い返し方がわからなかったのだ。とりあえず口下手な自分が言い訳をしても無駄だと踏ん切りを付け、素直に思っていたことを口にした。


「いや、その……。あんまり可愛いもんだから、見とれちゃって……」


 それはともすれば、言い訳をするよりも悪い結果を招く台詞であった。さすがに蒼汰も言ってから『しまった』と顔を真っ赤にする。……だが、レリスの反応はそれ以上だった。

 恐らく大人たちには可愛いなどとよく言われているのだろうが、同年代の異性に面と向かって言われたことなど無かったのだろう。その整った顔を耳まで真っ赤に染めて蒼汰から顔を逸らす。その後、しばらくの沈黙のあと、レリスがまだ真っ赤な顔を蒼汰に向けて、もじもじとしながら言った。


「あ、あの! ……あ、ありがとう、ございます……」


 それだけ言うと、耐えきれなくなったのかまたすぐに下を向いてしまう。ちゃんと対応しなきゃ、と思っていてもレリスだって年頃の普通の女の子なのだ。これが彼女に出来る、精一杯の対応だった。

 蒼汰はそんな彼女の仕草、言葉、一つ一つにドキン、と胸が高鳴るのを感じた。それは若干引きこもり気味であまり出会いのない蒼汰にとっては初めてといってもいい、経験だった。

 頭では冷静に判断出来ているはずなのに、顔が赤くなるのを止められない。いつもは軽快に言葉を紡ぎ出す自身の口も、今はただの飾りと化していた。見ればそれはレリスも同じようで、二人無言のまま、時だけが過ぎていった。

 ……ついにこらえきれなくなったのか、それともやっと口が動くようになったのか。それはわからないが、この何とも言えない静寂を先に破ったのは蒼汰だった。


「あの……、何か、ごめんな」


 その言葉は普段からは想像も付かないような、例えるならぼそっ、というような声の大きさだった。しかしこの静寂では十分過ぎるほどの大きさであったことは言うまでもなく、レリスも恐る恐る返事を返した。


「あ、いえ……、こちらこそ……」


 言い終えると、またしばらくの沈黙が訪れ、今度はレリスがそれを破る。


「あの、朝食が出来てるので。……呼びに来たんです」


「あ、そ、そうなの? じゃあ、行こうか」


 レリスの言葉は、この何とも言えない空気を打開するのにうってつけの内容だった。二人はぎこちないながらも部屋を後にし、階段を降りていく。横目でそっとレリスの方を見やると、まだ顔は赤いままだった。蒼汰はやりばのない右手で頭を掻きながら、真剣にこう思った。


(おいおいおい……。何だよこの気持ち……!)


 さっきまで重くのしかかっていた不安が、レリスとのやりとりですっかりと消え去っていることに、この時の蒼汰は気が付く由もなかった。




 温かいコーンポタージュにジャムを塗った焼きたてのパンと、朝食は少々洋風なものの普通の家庭にもありそうなメニューだった。幸い、レリスの祖母のおかげで妙にぎくしゃくすることもなく、他愛のない会話をしながら食べることが出来た。


「……じゃあご飯も食べ終えたことだし、私たちそろそろ帰るね」


 程なく食事を終えると、唐突にレリスが切り出す。蒼汰は出されたハーブティーを飲みながら、どこか他人事のような気持ちでそれを聞いていた。それにびっくりした彼女の祖母が、驚いたように口を開く。


「もういっちゃうのかい? ……もう少しゆっくりしていきなよ、せっかく楽しんだっていうのに」


「ごめんね、お祖母ちゃん。今日の夕方までに帰らないと、仕事のお手伝いに間に合わなくて……」


「ふぅ……、それじゃあしょうがないねぇ」


 困ったように言うレリスに、老婆はそう言って残念そうに目を細める。レリスはそんな祖母を気遣うように、明るく声をかける。


「また来るから、ね? ……お祖母ちゃん、くれぐれも狼には気を付けてね」


「大丈夫大丈夫! あたしを誰だと思ってるんだい? 老いたとはいえ、狼なんぞにやられるタマじゃないよ」


 そう言ってタンスから黒光りするリボルバーを取り出し、素早く撃つふりをする。蒼汰はそのあまりにも奇妙な姿に若干の戦慄を覚え、苦笑せざるを得なかった。そんな祖母の姿にレリスは安堵の笑みを浮かべて、今度は蒼汰に向き直って声をかけた。


「さ! じゃあ行きましょうか、蒼汰さん!!」


 その言葉を聞いて、蒼汰は思いっきり呆ける。まさか自分のことを話していたとは夢にも思っていなかったらしい。レリスの性格を考慮すれば、彼女がそういう結論に至るのは容易くわかりそうなものなのだから、蒼汰が呑気に構えていたと言えばそれまでかもしれない。


「え……、俺も?」


 困惑の気持ちを声に出してそのまま尋ねる。するとレリスは呆れたかのように語気を強めて言い募る。


「当たり前でしょ!! ……蒼汰さん、私が昨日なんて言ったか覚えてます?」


 ジトーッとした目つきで顔を覗き込まれて、蒼汰はやっとのことで思い出す。しかし、それにしても昨夜から世話になりっぱなしだ。さすがに少し躊躇する。


「で、でも……。足手まといだし、迷惑じゃないかな?」


 それは蒼汰の、素直な気持ちだった。それにいい男が自分よりも年下の女の子に助けられているのも、何だか情けない話だ。だが蒼汰のそんな安っぽいプライドも、レリスの前には無駄なものであった。


「それも昨日言いました!! じゃあ蒼汰さんは狼に喰われて死ぬつもりなんですか!? 私がそれが嫌だから、一緒に来て貰うんです! 迷惑とかそういうのは、考える必要はないんです!!」


 そこまで一気にまくしたてると、蒼汰をキッと睨み付ける。


「…………わかりましたか?」


 今の彼女には何の怖さも迫力もなかったが、この心優しい申し出に蒼汰が断る理由もまた、無かった。蒼汰は今度こそ、レリスの提案に二つ返事で頷いた。



後書き劇場

第三回「何かこうグダグダ」


どもです、作者です。

今回は前書きでも言った通り、あまりシリアスではなかったんですが。……何かアレですね、恋愛って難しいですね(笑)。

あまりのグダグダさに、書いててこっちがこっ恥ずかしくなりました!恋愛作家さんって凄いなぁと、今しみじみと思っております。


蒼汰「別にそんなんどうでもいいよ……」


俺「すいませんでした」


蒼汰にも怒られてしまったところで、今回はお開きとさせて頂きます。次に会えるのは、一ヶ月後ですね、多分(汗)。

御意見・御感想いつでもお待ちしております!


以上、TARでした!!

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