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人生最後で、一番濃い一月  作者: 津川サブロー
2/8

第1話

 2か月ぶりに学校に向かうと大分(だいぶ)数奇な目で見られてしまっていた。不登校中は連絡の1つもよこさなかった教師どもが、「どうしたんだ」とか、「大丈夫か」とか、僕に会うたびに言ってきて正直うざい。

 変なものを見たという目で僕を見る生徒と、うざい話をしてくる教師から逃げるようにして、昼休みに人のいないところを探し歩いた。


 探しているうち屋上へ続く階段が誰もいないということを思い出した。向かうと予想通り誰もいない。僕はゆっくり階段へと腰かけようとしたが、不意に普段は閉まっていると思っていた屋上への扉が、開いていることに気がついた。なぜ、開けようと思ったかわからないが多分好奇心だったのだろう。ゆっくりと、僕はその扉を開けた。


 そこには、漫画にあるような屋上ではなく、室外機が所狭(ところせま)しと並んでいる屋上があった。

 なんとかスペースを見つけ、僕はこっそり持ってきた缶ビールを開けた。青空が広がっている下で飲む酒は旨い。

「ねぇ、私にも飲ませてよ」

 声が聞こえた気がした。が、こんな人気のない屋上に人かいるはずない。気のせいだと思い、無視をする。

「ねぇ、無視しないでよ。聞こえてるでしょ?」

 どうやら、僕の空耳ではないようだ。やれやれと声のする方向へ顔を向けた。

 そこには、背が小さくて華奢(きゃしゃ)な女子が立っていた。

「だめだ。まだ、未成年だろ」

「自分だって未成年のくせに何言ってんの」

「俺は、先の長くない人間だからいいんだよ」

「何それ」

「どうでも、いいだろ。そんなこと。それより、なんで屋上にいるんだよ」

 そう僕が聞くと、彼女は眉一つ変えずにこう言った。

「気分転換よ。教室は空が見えなくて息苦しいから」

「そうか。なら、僕もそんなところさ」

 そう言うと彼女は黙ってしまったから、屋上は静寂に包まれてしまった。


 そのうち、昼休みの終わりを告げる授業開始5分前になる予鈴がなった。

「予鈴だ。授業にいかないと」

 彼女がそう言った。

「さぼっちまえよ」

「いやよ。何のために学校来ているのよ」

「昼休みに屋上に侵入するような人間に言われたくないね」

 そう僕が言うと、ふと思い出したというように彼女は僕の方へ顔を向けてこう言った。

「ねぇ、明日の昼休みもここにきてくれる?」

「なんで」

「いいから」

 とだけ彼女は言うと、自分が誰なのかも言わずに立ち去ってしまった。


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