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真っ赤な顔で宣言されて。
そして今、俺はエルザの私室の寝室で身を潜めている。
「オーウェンならすぐに来るから」
と言ったエルザは何食わぬ顔をして居室のソファで寛いでいる。
勉強と言われたが、もしかして俺は今からここであいつらがイチャつくのを見せられるのか?
……寝室はこっちなのに、それはいいのか。いっそクローゼットに移動した方が……いや、それも問題があるな。
コンコンとノックの音がして、エルザが「はぁい」と気の抜けた返事をした。
開けた隙間を覗けば優秀すぎる俺の5がいつもの笑顔を浮かべて部屋に入ってくるところだった。
バタンと扉が閉まる。
「オーウェン! あのね、話が」
「ふらふらふらふらと……少し目を離したすきに逃げるなと何度言ったらわかるんだ!!」
やっとのことで手に入れた恋人が笑顔で近づいてくるというのに、問答無用で雷を落とせる男はそうはいないだろう。苦労をかける。
「だ、だって、ララが……」
俺に対しては強気なエルザも恋人には言葉尻が下がるらしい。いや、負い目があるだけか。
「ララさんとキングのことは仕事中に気にしても解決しません。あとあなた一人で考えずに俺も一緒に考えますから、決して突っ走らないように」
慣れた様子でお説教が始まり、俺は何を心配していたんだろうかと脱力する。この二人を参考にしようとした俺が馬鹿だった。
「……ん? 誰かといたんですか?」
「え? ど、どうして?」
気が抜けたのも束の間、真面目な調子になったオーウェンの声にギクリと体が強張る。
「何か匂いが。……レモン、かな」
鋭すぎてむしろ怖い。
「ああ、レモンティーを飲んだのよ」
「お一人で?」
「え、ええ」
しばしの沈黙が流れる。
妙な緊張感ののち、笑いまじりの声がした。
「……嘘だな」
「う、嘘なんかじゃ……」
「いいや。あんたはレモンは切れば悪くなるから勿体無いって一人じゃレモンティーは飲まないだろ」
「たまの贅沢よ! あなたが来てくれるのも分かってたし!」
「なら俺のカップはどこに? そもそも準備されていないようですが?」
エルザが言葉に詰まるのがわかった。
「おまけに部屋で二人きりなのに敬語で話すのも気にしてなかっただろ。ああ、悲しいなぁ。俺はついに恋人に浮気されてしまったのか」
悲しいと言いながら声は笑っているのでまだ部屋からは出ないでおく。……恐らくはからかわれているだけだろう。
「ついにって何よ! 浮気なんてしないわ!」
「安心してください。あなたの心に何人の男がいようとも、その中の一人に加えてくれれば俺はそれで幸せだ」
「な、な、何人のって、私はハーレムエンドはお断りよ! 一対一の清い純愛が好きなんだから!」
昔からエルザの言う言葉はよくわからないことが多いが、ハーレムはわかる。
冗談だと分かっていても、恋人からすれば気の良いものではないかもしれない。出るべきかと一瞬悩む。
しかし上がったのは心底楽しげな笑い声で、内心ほっと息をついた。
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