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よろしくお願いします。

 きゅっとまだ熱い手を握られて、我に返った。

 私はここに一人でいたわけではなかったのだと。


「……ララ…」


 俯くララは口を引き結び、私の手を痛いほど強く握りしめている。

 やはり、先延ばしにすべきではなかった。


「ララ、あのね」

「帰るときまで、保留にしてくださいと言いました」


 こちらを見ずに強い口調で言われて押し黙る。


 以前の私なら、はっきりしないことは不誠実だときっぱり断れたはずだ。

 でも、今となっては。

 オーウェンを好きだと自覚してしまった私には、断ることがどうしても出来ない。

 オーウェンに同じことを言われてしまったら、私なら。


「……新しいお茶を淹れてもらってもいいかしら」


 軽い口調でお願いすれば、ララはほっとしたように微笑み、ポットに手をかけた。

 これほど自分が臆病だとは、私自身知らなかった。




 ハートの国から馬車が迎えに来て、二人を見送りに出た。

 ルーファスとレスターの勝敗は、なんとレスターの三戦全敗だそうだ。


「珍しいわね。体調でも悪かったの?」


 心配して聞けば、レスターは軽い口調で「ううん。実力だよ」と答えた。そんなはずはないのに、具合が悪くなったのでなければいいけど……。


「今日はありがとう。また遊びに来てね」

「こちらこそ。エルザ達も今度はハートの城に来てよ」


 スペードの城とハートの城は内装が違うから、ララも楽しいかもしれない。


「ええ。アレクシス様によろしくお伝えしてね」


 スペードの城に遊びに来ていたと知ったら、あのルーファス大好きさんは悔しがるだろう。必ず騙して連れて行かねば。


「ショーンもありがとう」


 口数がいつもよりも少ないように感じるショーンは、無言でこちらを見ている。

 オーウェンと楽しそうに話していたから、迷惑ではなかったと思うのだけど……。


 少し心配していたら、一歩こちらに踏み出したショーンの両腕が、私を囲った。

 肩に顔を押し付けられている。ノエルと同じで私よりも少し背が低いから、髪が耳に触ってくすぐったい。

 これは……貴重なデレ!!


「どうしたのショーン! いつにないサービスね!」


 向こうから来たのだから遠慮することはないと、抱きしめ返した。

 苦しくない程度に力を込める。ノエルと違って少し骨張った華奢な体! たまらん!!


「帰るのがさみしくなったの? それならもういっそ、うちの子になっちゃう!?」


 ペット可の城だからなんの問題もないわよ!

 あまりなサービスに興奮が抑えきれない!


「あっ、あげないよ! ほらショーン、帰るよ!」


 さすがにレスターの制止が入ってしまい、ショーンの包む力が弱まる。

 肩に手を置かれて可愛い顔が目の前にあると、まるでスチルのような近さだ。


「オーウェンは、いいやつだね」


 珍しくもわずかに微笑みながら言われた言葉はとても嬉しくて、笑みを返した。


「そうでしょう? 仲良くしてくれて嬉しいわ」


 人見知りのショーンに初対面でいいやつだと言わせるオーウェンのコミュニケーション能力は、ぜひとも見習いたい。魔法オタク限定の能力だから迷うところだけど。


「それじゃあ、またね。次に会えるのは白の国のお茶会かな」


 レスターの言葉にハッとした。


「そう、ね。次のお茶会までひと月も、ないものね……」


 馬車に乗り込み走り出したレスターとショーンに手を振ると、レスターだけが振り返してくれた。

 あとひと月、か……。

ありがとうございました。

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