表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
34/177

34

よろしくお願いします。

「良かった、まだおるね。あんた達、今は外に出ない方がいいよ」

「何かあったのですか?」


 レスターが尋ねると、おじいさんは口元に手を当てて「外でよその国の人らが喧嘩しとるから危ないよ」と教えてくれた。


「まさかスペードの人間じゃないでしょうね」


 他国で乱闘騒ぎなんて、国の恥だ。


「見てくるわ。ノエル、ララをお願いね」

「僕も行くよ」


 立ち上がるとレスターもついてきてくれるという。


「二十人近くいるから危ないよ」


 おじいさんは心配そうにしているが、レスターもいるなら全く問題ない。百人力だ。

 それにしても、もしかしてショーンがハートのジャックだって知らないのかしら?

 知っていたら、むしろ喧嘩を止めるよう頼んでくるはずだ。


「問題ありません。おじいさんもこちらでお待ちくださいね」

「エルザ」


 扉に向かって一歩踏み出した時、静かな制止がかかった。


「俺がやる」


 振り返るといつも半分閉じられた瞳の奥に暗い炎を燃やしたショーンが、私を追い抜いて部屋から出て行った。


「……何か怒ってた?」


 レスターに尋ねるも「やっちゃったなぁ……」という謎の呟きと共に、特大のため息が返ってきただけだった。




 そっと部屋から出ると、表通りにはいくつもの黒い影が蛇のようにうごめいていた。

 一つ一つが恐ろしく太い。二十人はいるという男達が軒並み捕まっているところを見れば、一度に二十の影を操ったということになる。


 ショーンは闇の属性だけを持つハートのジャックだ。

 魔法を使うには、魔力の流れをイメージしやすいよう手をかざすのが一般的で、闇の属性を持つ人は影を操るのに両手、つまり二本しか動かさない。いや、動かせない。

 同じ闇の属性を持つオーウェンは四本を操るのが精一杯だと言っていたが、それでも一般的に見ればすごいものだと思っていた。

 しかし目の前で二十もの蛇を見てしまうと、言葉を失う。


「すごいわね、本当に」


 思わず感嘆の息を漏らせば、ついてきていたレスターが自慢げに「当然だよ」と胸を張った。


 私やゼンも、魔法を使うのに手を使わず、二十ほどの水や岩を投げ飛ばすくらいのことは出来る。

 しかしショーンが行っているのは、一方向に投げるなんて単純な動きではなく、動き回る生きた人を的確に捕らえているのだ。

 以前興奮気味にオーウェンが語ったところによると、一度に全ての手や足の指を自分の意思で動かすようなものらしい。


 紛れもなくハートの国で、いや四つの国で最も巧みに魔法を操る者はと聞かれたら、一番に名前の上がるのがこのハートのジャックなのだ。


「オーウェンが会いたがるのもわかるわね」


 あの魔法オタクは同じ属性を持つハートのジャックについて語る時、瞳が異様な熱を帯びる。


「……オーウェンって、だれ」


 思い返して笑っていると、いつのまにかショーンが戻ってきていた。


「私の補佐をしてくれてるスペードの5よ。魔法オタクでね、ショーンと同じ闇の属性を持ってるの」


 これは紹介するのにちょうどいいかも、とオーウェンを売り込む。まぁ人見知りだから会ってはくれないだろうけど。


「とっても優秀な人でね、いつも私は迷惑かけて怒られてるんだけど、でも優しい人で」


 売り込む毎に、頰が熱を持っていく。

 こうして客観的にオーウェンについて話すのは初めてだ。なんだか恥ずかしくなってきた。


「それって、もしかしてこの間の舞踏会でダンスを踊ってた相手!?」

「えっ、そ、そうだけど……」


 レスターに言われて、あの日のことを思い出す。触れた肌や言われた言葉に、体が沸騰したように熱くなってきた。


「……スペードの国に行く」

「え?」


 店に戻り、おじいさんに城に男達を引き渡すよう伝えてケーキのお代を払ったショーンは「今すぐ行く。そいつに会う」と言い出した。


「ショーンが来てくれるなんて初めてだね。嬉しいな!」


 呑気なノエルは大歓迎のようだが、私はただただ首を傾げていた。


「人見知りなのに珍しいわね……?」

「あれで武闘派なんだよね……陰の方向に」


 武闘派……?

 苦笑するレスターはいくら聞いても、その意味を教えてはくれなかった。

ありがとうございました。

ブックマーク、評価、感想等いただけたら嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] とても面白かったです! エルザ可愛い…(´∀`) [気になる点] 私のスマホだけかもしれませんが、 途中で『頰』という文字が入っています 検索したら「頬」とでたので文字化け(…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ