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9出陣? いいえ、デートです!

 そして迎えた、翌日の午後0時。 

 俊介はスタンドミラーの前で、自分の身なりを何度も確認していた。

 俊介の服装は、白のボーダーシャツの上に黒のYシャツ、下はライトブルーのデニムという、比較的オーソドックスなスタイルだった。


 昨日ユニシロで急いで買い揃えたコーディネートだが、恋華を怒らせた上に、今日のデートは自分が全面的にエスコートをする約束なのだから、それなりの準備はするべきと俊介の心構えだった。


「まあ、お兄様。よく似合ってらっしゃいますわ」


 リビングに下りると、勢揃いしていた4姉妹のうち、和姫がまず口を開いた。


「それではお兄様。お気をつけていってらっしゃいませ。和姫は、お兄様のご健康を心よりお祈りしておりますわ」


「あ、ありがとうございます……和姫さん」


「そうだよお兄ちゃん! 街は危険でいっぱいなんだからね!」


 俊介が和姫に礼を述べると、今度は美鈴が体の前で両拳を握りながら、


「元気でいってくるんだよ! くれぐれも、羽目を外して怪我だけはしないようにね! あと、トラックにはちゃんと注意を払うんだよ!」


「言うまでもないことだと思うけど」


 俊介を心配する美鈴の隣で、落ち着いた笑みを浮かべながらレイラは、


「わたしというソウルメイトを放置して出かけるのだから、精一杯楽しんできてほしいわ。でなければ、世界は暗黒の魔炎に包まれることでしょう」


「にーにー! 行っちゃヤぁ!」


 最後にましろが、とてとてと俊介の前まで走りながら、


「ましろ、にーにーいないとさみちい! ずっと、ましろといっしょにいて!」


 俊介の膝に抱きつきながら、離すまいと必死に足をつかむましろ。


「すみません、ましろさん。でもすぐに帰ってきますから。安心してください。帰りにおみやげ買ってきますから。お姉ちゃん達の言うことを聞いて、良い子で待ってるんですよ?」


 俊介は優しく、ましろの頭を撫でながら言った。ましろは若干不服そうに、


「うー……わかった……ましろ、良い子にしてる……」


 その言葉に、残り3姉妹が続く。


「楽しんできてね、兄さん。メール(魂の交信)は忘れちゃダメよ」


「何かあったら、すぐに連絡してねお兄ちゃん! 手紙も書くんだよ!」


「わたくし達はいつでも、お兄様と共にありますわ」


「み、みんなどうもありがとうございます」


 俊介は、少々つっかえながら答えた。

 何しろ、友達と遊びに行くと言っただけなのに、まるで戦場に出る兵隊を見送る家族みたいではないか。根掘り葉掘り聞かれた挙句、散々邪魔されると思っていたのに。こうして何も聞かれず何も邪魔されずに送り出されたのだ。ついつい、何か裏があるのではと勘ぐってしまう。


 大げさな態度で見送る妹たちに、


「まあとにかく。時間なので行って来ます」


 手を振りながら俊介は家を出た。

 しかしこの時の俊介は、まだ気づいていなかったのである。

 今日のデートがきっかけで、後に大変な事件を巻き起こすことを……。

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