22反省した? いいえ、してません!
「――そうだね。そんなことも、あったね」
回想は終わって現代へ。
レイラは昔を懐かしむように、目を細めながら言った。
いつものような、自信たっぷりでクールなレイラの口調ではない。それは7歳の頃、俊介と初めて出会った時の、少女のものだった。
そんなレイラを、俊介は微笑ましく見つめながら、
「小さい頃のレイラさんは、引っ込み思案で、すごく大人しい子でしたからね。これだけ打ち解けられたのが、不思議なくらいですよ」
「それはもう、運命ってやつだよ。アンドロメダに広がる輪廻の環が、わたしと兄さんを巡り会わせたんだよ」
「ああ、はいはい。そうですね」
「つれない返事ね。多次元世界からの祝福を受けることは、とっても名誉なことなのよ?」
レイラはクスクスと笑う。どうやら、本調子に戻ってきたらしい。口調も少女時代から中2病的なものに戻っている。とりあえず俊介は一安心した。
「でもよかったです。この調子なら、もう大丈夫そうですね」
俊介は言った。
「熱も大分下がってきてるようですし。明日の朝には元気になってるでしょう」
「そ、そうかな。兄さんの看病を受けられるなら、ずっと風邪でもいいんだけど」
「それは勘弁願いたいですね。毎日はちみつ湯を作るのは面倒ですし。何より、勉強の妨げになるのは困るというか……痛い! 痛いですよ!」
軽口を叩く俊介の胸を、レイラはポカッと叩いた。
「兄さんひどいよ! 愛する前世のソウルメイトに向かって!」
「すいません。つい本音が……あっ」
俊介がわざとらしく口元をふさぐ。
レイラは、ふんっとそっぽを向くと、
「もう、兄さんのバカ! バカ! バカバカバカバカバカバカ!」
涙眼で何度も「バカ!」を連呼するレイラに、俊介は「すいません」と、笑いながら頭を下げる。
「反省した? 兄さん」
俊介は顔を上げながら、
「はい。しばらくしたら忘れるかもしれませんが」
レイラはそんな俊介を見下ろしながら、「もう、兄さんたら」と笑い返した。
……ひとしきり、2人で笑いあったあと。
部屋はしばしの間、静寂に包まれた。
「ねえ、兄さん。ひとつお願いがあるんだけど、聞いてくれる?」
不意に、レイラは呟いた。
先ほどまでの明るい口調ではなく、真剣そのものといった声色で。
「なんでしょうか、レイラさん?」
俊介が聞き返すと、レイラは震える唇を開き、
「お願い……わたしと、キスして?」




