表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
63/218

9婬靡? いいえ、料理です!

 そして俊介と和姫は。

 2人で厨房へと入っていった。


「それではお兄様。まずは玉ねぎの皮むきからお願い出来ますか? その間にわたくしは、だしを作っていますから」


 見ると、キッチンカウンターの上には皮むきされて、一口大に切られたじゃがいもがボウルに入れられ、その横には切りかけの牛肉があった。どうやら、和姫は肉じゃがを作るつもりらしい。


 俊介は手を洗い終えると、玉ねぎの頭の部分だけをカットし、外側の皮をむき始めた。


「まあ……! 流石お兄様、お上手ですわ♪」


「そうですか? ありがとうございます」


「これなら、毎日でもお手伝いをお願いしたいくらいですわ」


「そ、それはちょっと……」


 別に無言で調理する必要もないのだが、声をかけられすぎるのもやりづらい。しかし、和姫は口数こそ多いが、手早く水にひたした昆布だしに鰹節を加え沸騰させ、あくを取っているところだった。俊介とは段違いの手際の良さである。


 ……。

 …………。

 …………ほどなくして、全ての玉ねぎの皮をむき終えた俊介は。


「じゃあ次は、一口大にカットしていきますね」


「お願いしますわ。ポイントは、繊維に沿って切ることですわね。そうすれば、シャキシャキした食感が活きますのよ」


「なるほど」


「あとは、根元の部分に三角形の切れ目を入れ、芯を落としてからカットするといいですわ。1枚1枚がほぐれやすくなりますから」


「へえ、勉強になりますね」


 俊介は言われたとおりに包丁を入れながら、


「なんていうか、今更ながら和姫さんの凄さが分かりましたよ。いつも当たり前のようにやってくれてますけど。自分がやる側になって初めて、料理を作る難しさが身に染みますね」


 と。和姫への感謝の言葉を語った。

 上手くは言えないが。

 確かなことは、和姫がいるからこそ井川家はやっていけてるということだ。


「そんなことありませんわ」


 和姫は、俊介の言葉を否定する。


「わたくしなど、大した人間ではありません」


「そんなことないでしょう。これだけの美人で、頭が良くて、スポーツも出来て。おまけに家事も万能とくれば。大概の男性はほっとかないくらいですよ」


 俊介から和姫への賛辞は止まらない。

 すると和姫は、突然俊介の後ろに立つと、


「お兄様……」


「か、和姫さん?」


 和姫は後ろから、俊介の背中に抱きついた。


「お兄様ったら、ズルいお人」


 ピタッと。

 俊介の背中に押し付けられる、和姫の豊満な胸。


「ちょ、ちょっと和姫さん何してるんですか!? やめてください!」


 和姫は俊介の懸命な叫びも聞かず、むしろますます抱きしめる腕の力を強め、


「お兄様がいけないのですわ。こんな気持ちにさせるお兄様が」


「ちょ、ちょっと待ってください! これ以上は本当にまずいですよ!」


「わたくし、もう我慢できませんわ。このまま淫らなことをしてしまいましょう」


「か、和姫……さん」


 和姫の熱く甘い吐息が、俊介の耳に吹きかけられる。


「うっ」


 思わず目を閉じる俊介。

 さらに白く細い指が、俊介の指先に触れる。

 そして、押し付けられさらに強調される和姫の大きな双乳。


 他の妹達が、すぐそこのリビングでくつろいでいるというのに、調理場でこんなことをしてていいのか。

 俊介が頭の中でそう考えていると、和姫はフッと笑って、


「……なーんて♡ うそですわ」


「…………え?」


 和姫の思わぬ発言に、俊介は閉じていた目を開けた。


「あら? どうなさったのですか? そのお顔は。もしかして、本当にわたくしと淫らなことをしたかったのですか?」


「そんなわけないでしょう!」


 俊介は大声を上げた。

 というより、誰だって騙されるに決まっているだろうと。完璧なプロポーションは元より、和姫の媚びるような、甘えるような、誘うような仕草。あれは本当に――


「わたくしとて、最低限の常識くらい持ち合わせています。神聖な炊事場で淫蕩な行為に及ぼうなどと、流石にしません」


「で、ですよね」


「ですがわたくしとて、年頃の女の子です。人並みの性欲も持ち合わせています。異性と2人きりでいて、何も感じないはずがないでしょうに。ですから、お兄様も悪いのですよ?」


「そ、そんなこと言われても……」


「わたくしに迫られて、ドキドキしましたか?」


「それは……まあ」


「うふふ」


 和姫は艶めかしく笑って、


「言っておきますがわたくし、まだ諦めたわけじゃありませんから。絶対に、瀬戸内恋華には負けませんわ」


「和姫……さん」


 それは、和姫の決意だった。

 恋華との『お試し恋人』はあくまでも一時的な休戦条約であって、根本的な問題は何も解決していない。

 和姫以外の妹達も、同じ気持ちなのだろう。その強い気持ちを止める手段など、何もありはしないのだ。


「ですから、覚えておいてくださいませ。わたくし達は、いいえ、わたくしは、近い内に必ずお兄様をわたくしのものにしますわ。そう、どんな手を使っても」


 俊介は今更ながら、和姫の強い意志を思い知らされた。

 和姫からしてみれば、幼い頃からずっと俊介のことを想っていたのに、急に出てきた瀬戸内恋華に、愛しい兄を取られてしまったのだ。

 元々持っていた気持ちが暴走してしまっても、おかしなことではない。


「――少し、喋りすぎましたわね。お料理を続けましょう」


「そ、そうですね……」


 和姫の言葉に、俊介はホッとした。

 何しろ、まだ和姫の胸は押し当てられたままなのである。はち切れんばかりの乳房は、服の上からでもハッキリと感触が伝わってくる。このままでは、とても料理どろこではなかった。


「それでは。わたくしもお手伝いしますから。このまま(・・・・)の状態で、続けましょうか」


 不意に、和姫がそう言い放つ。


「えっ? でも、こんな状態じゃとても料理なんて――」


「お兄様は、慣れていらっしゃらないからまだ少し遅いですわ。わたくしが後ろから、ピッタリと寄り添いながら教えてさしあげますわ。そのほうが、効率がいいでしょう?」


「ま、まあ、それはそうですけど……」


 確かに子供に料理を教える時は、後ろからくっついてコミニュケーションを取りながら教える場合があると聞いたが。


「うふふ。お兄様。わたくしが優しく、手取り足取り教えてさしあげますわ……♡」


「お、お手柔らかにお願いします……」


 俊介には、そう言うことしか出来なかった。

 今度から、手伝うのは食器洗い程度に留めておこう。

 和姫にむにゅむにゅ胸を押し付けられながら、俊介はそう考えるのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ