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43/218

43言わない? いいえ、言います!

 ――キャアアアアアアアアアアア!


 恋華の爆弾発言を聞いた女子たちは、黄色い悲鳴を上げた。


「……俊介君たら。本当に強引なんですもの」


 と、猫被りモードの恋華はわざとらしく口元に手を当てながら、淑やかに微笑んだ。

 

 ――マジで? マジで言ってんの?

 ――ていうか、それはいきなりすぎじゃね?

 ――女の子は強引な男が好きっていうけど、告白即押し倒しとか井川すげーな。

 ――じゃあ、俺が告った時も無理やり押し倒してれば……。

 ――いや、『ただしイケメンにかぎる』ってやつだろ。お前みたいな顔じゃ、警察呼ばれるのがオチだってーの。


 と、男子生徒からの反応は様々。

 そして恋華自身も、まんざらでもないように頬を赤らめている。


「ちょ、ちょっと待ってください!」


 たまりかねた俊介は立ち上がって叫んだ。

 恋華は俊介に目を向けると、


「あら。どうなさったんですか? 俊介君」


「どうしたもこうしたもありませんよ。いつ僕があなたのことを押し倒しましたか? 冗談を言うのもほどほどにしてください!」


 俊介がそう非難すると、恋華は優雅かつお上品に微笑んだ。

 今まで何百人もの男を悩殺してきた、モテ女の笑みだった。


「まあまあ、俊介君。落ち着いてください。みんな見てますよ?」


「な、何を……。話をはぐらかさない、で……」


 なだめられて逆に興奮した俊介だったが、ハッと我に返った。恋華の言うとおり、クラスメイトからの視線を集めていたのだ。


 ――なんだよ、瀬戸内の言ってること嘘なの?

 ――そうよね。あの真面目そうな井川君が、そんなことするはずないもの。

 ――え、ていうことは。付き合ってるってこと自体も嘘なんじゃない?


 口々に始まるクラスメイトからの疑惑。

 しかし恋華は、そんな喧騒など聞こえないという風に、落ち着いた佇まいで、


「ねえ俊介君。いつもみたいに『恋華、愛してるぞー!』って言って?」


 恋華がそう言うと、ざわついていた教室が水を打ったように静かになった。

 俊介はその比ではないほど動揺していたが、何とか気をふるいたたせ、


「……恋華さん、一体何を言ってるんですか?」


「なにって。いつもベッドの上で囁いてることを、みんなの前で言ってくださいと、そう言ってるんですが?」


 ――うぉぉぉおおおおおおおおおおおおおお!!


 恋華そう言った瞬間、クラスは騒然となった。

「まあ、不潔!」と怒りをあらわにする女子から、鼻血を出して倒れる男子生徒まで。とにかく教室は大騒ぎになってしまった。これでは「嘘でした」とは流石に言いづらい。


「さあ、俊介君? どうしますか? 言うんですか? 言わないんですか?」


 と、お嬢様風から一転、小悪魔風に笑う恋華。

 俊介はもう、この場から逃げ出したかった。


「次の授業が始まるまで、あと2分もありません。さあ俊介君、早く!」


 さらに急かしつけてくる恋華の言葉に押されるように。

 俊介は、仕方なく、


「恋華さん! 愛してますよ――――――――!!」


 どこかのバラエティ番組のような台詞を。

 息をつきながら大声で叫ぶ俊介。


「はい。私も愛してますよ、俊介君♡」


 恋華はニッコリと微笑みながら答えた。その瞬間、恋華のついた「嘘」は「真実」としてクラスメイトに認知されてしまったのだった。

 

 ぜい、ぜい、と疲労困憊になりながら俊介はふと思った。

 ――瀬戸内恋華、恐るべし! と。

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