43言わない? いいえ、言います!
――キャアアアアアアアアアアア!
恋華の爆弾発言を聞いた女子たちは、黄色い悲鳴を上げた。
「……俊介君たら。本当に強引なんですもの」
と、猫被りモードの恋華はわざとらしく口元に手を当てながら、淑やかに微笑んだ。
――マジで? マジで言ってんの?
――ていうか、それはいきなりすぎじゃね?
――女の子は強引な男が好きっていうけど、告白即押し倒しとか井川すげーな。
――じゃあ、俺が告った時も無理やり押し倒してれば……。
――いや、『ただしイケメンにかぎる』ってやつだろ。お前みたいな顔じゃ、警察呼ばれるのがオチだってーの。
と、男子生徒からの反応は様々。
そして恋華自身も、まんざらでもないように頬を赤らめている。
「ちょ、ちょっと待ってください!」
たまりかねた俊介は立ち上がって叫んだ。
恋華は俊介に目を向けると、
「あら。どうなさったんですか? 俊介君」
「どうしたもこうしたもありませんよ。いつ僕があなたのことを押し倒しましたか? 冗談を言うのもほどほどにしてください!」
俊介がそう非難すると、恋華は優雅かつお上品に微笑んだ。
今まで何百人もの男を悩殺してきた、モテ女の笑みだった。
「まあまあ、俊介君。落ち着いてください。みんな見てますよ?」
「な、何を……。話をはぐらかさない、で……」
なだめられて逆に興奮した俊介だったが、ハッと我に返った。恋華の言うとおり、クラスメイトからの視線を集めていたのだ。
――なんだよ、瀬戸内の言ってること嘘なの?
――そうよね。あの真面目そうな井川君が、そんなことするはずないもの。
――え、ていうことは。付き合ってるってこと自体も嘘なんじゃない?
口々に始まるクラスメイトからの疑惑。
しかし恋華は、そんな喧騒など聞こえないという風に、落ち着いた佇まいで、
「ねえ俊介君。いつもみたいに『恋華、愛してるぞー!』って言って?」
恋華がそう言うと、ざわついていた教室が水を打ったように静かになった。
俊介はその比ではないほど動揺していたが、何とか気をふるいたたせ、
「……恋華さん、一体何を言ってるんですか?」
「なにって。いつもベッドの上で囁いてることを、みんなの前で言ってくださいと、そう言ってるんですが?」
――うぉぉぉおおおおおおおおおおおおおお!!
恋華そう言った瞬間、クラスは騒然となった。
「まあ、不潔!」と怒りをあらわにする女子から、鼻血を出して倒れる男子生徒まで。とにかく教室は大騒ぎになってしまった。これでは「嘘でした」とは流石に言いづらい。
「さあ、俊介君? どうしますか? 言うんですか? 言わないんですか?」
と、お嬢様風から一転、小悪魔風に笑う恋華。
俊介はもう、この場から逃げ出したかった。
「次の授業が始まるまで、あと2分もありません。さあ俊介君、早く!」
さらに急かしつけてくる恋華の言葉に押されるように。
俊介は、仕方なく、
「恋華さん! 愛してますよ――――――――!!」
どこかのバラエティ番組のような台詞を。
息をつきながら大声で叫ぶ俊介。
「はい。私も愛してますよ、俊介君♡」
恋華はニッコリと微笑みながら答えた。その瞬間、恋華のついた「嘘」は「真実」としてクラスメイトに認知されてしまったのだった。
ぜい、ぜい、と疲労困憊になりながら俊介はふと思った。
――瀬戸内恋華、恐るべし! と。




