41付き合ってない? いいえ、付き合ってます!
「恋華さんって、本当に僕以外の人と付き合ったことないんですか?」
「へ?」
俊介にそう聞かれた恋華はキョトンとしていた。一体何を聞かれたのか分からないといった風に。そしてしばらくすると、ようやく俊介の言ったことを理解したようで、顔を真っ赤にした。
どうやら怒っているらしく、眉間にしわを寄せながら恋華は、
「俊介君、どうしてそんなこと聞くの?」
「はい?」
「私、前に言ったよね? 俊介君が初めての男性だって。俊介君が初めて私の処女を奪った人だって」
「まあ、そうですね。後半は完全に虚言ですけど」
俊介は恋華の嘘を指摘するが、恋華はさらにムッとしたようで、
「だから、それが何? 俊介君。まさか、まだ私のこと疑ってるの?」
俊介は慌てて首を振って、
「い、いえ。別に、そういうわけじゃないんです」
誤魔化しながらも、俊介はホッとしていた。
恋華がそう言うなら間違いはないだろう。恋華が俊介に嘘をついたことは、今まで1度もない。ならばあの男の妄言? ハッタリ? いずれにしても、あんな頭の悪そうなチャラ男の言うことを、一瞬でも間に受けた自分がバカだったのだろう。
……実を言うと、まだ少し気にはなっているのだが。
しかし恋華のこの様子ならば、特に問題はないだろうと確信した。
恋華はそんな軽い女性ではない。
心の中で安堵する俊介に、恋華は不服そうに物申した。
「私の方より、むしろ心配なのは俊介君だけどね。あんな可愛い妹さんが5人もいてさ。しかも、全員血がつながってない。そんなのと1つ屋根の下にいて、今まで何もなかったって言うの?」
「ないですよ。だって、義理でも妹は妹じゃないですか?」
「それは……そうだけど」
それきり、恋華は黙りこくってしまった。
そのまま通学路を無言で歩くが、周囲の学生からの好奇な視線が絶えることはなかった。そして、校門の前まで来た時。
ついに、その質問はきた。
「……ねえ、瀬戸内さん。もしかして、井川君と付き合ってるんですか?」
俊介が見たこともない男子学生が、恋華に向かって話しかけた。
「え? 私?」
「そ、そうです。腕なんか組んで一緒に登校して。お2人は、もう恋人同士なんですか?」
恋華の問いに、男は緊張気味に答えた。微妙に体が震えているのは、寒さのせいだけではなく、恋華が俊介とイチャイチャしてたことへのショックもあるだろう。
恋華はよくぞ聞いてくれましたとばかりに、スーッと息を吸うと、道のど真ん中、大声で、通行人すべてに聞こえるよう叫んだ。
「そうでーす! 私、瀬戸内恋華は、このたび井川俊介君と付き合うことにしましたーーーーーーーーーー!!」




