35お手上げ? いいえ、これからです!
――俊介と恋華が家を出てから数分後。
妹軍団は早速テーブルを囲み、妹会議を行った。
上座に座る和姫は顎の下で両手を組みながら、
「皆様、どう思いましたか? 瀬戸内恋華について」
と、妹達を見回しながら尋ねた。
「わたくしはとても危険なものを感じましたわ。容姿はさることながら、性格も悪くありません。料理の実力も、わたくしには及ばないとはいえ、かなりのものでしたわ。お兄様が篭絡されてしまうのではないかと、正直恐怖で胸がいっぱいなんですの。何よりも、あの瀬戸内恋華を半ば受け入れようとしている自分が――」
「ヒメ。そこから先は言わないほうがいいわ」
「……そうですわね、レイラ」
レイラの指摘に、和姫は何かを思いとどまったように、
「わたくし達は、『瀬戸内恋華駆逐計画』を話し合っていたんですわね。弱気は禁物ですわ」
「……でも恋華さんって、素敵な人だったねえ」
そう言うと、一同の目が美鈴に向く。美鈴は慌てて、
「ち、違うよ。別に恋華さんを認めてるわけじゃなくて。あんな細い体なのに、もの凄い力があったもん。それになんていうか、絶対に最後まで諦めない『信念』みたいなものを感じたんだよね。だから、あたし達にとって、すごく手ごわいライバルになるんじゃないかって話だよ」
「そうかしら」
危機感を感じる美鈴とは対照的に、涼しい顔でレイラは、
「確かにあの女は、とても魅力的だと思うわ。女のわたしから見てもそう感じる。まあ、それなりに知性もあるしね。何より、それを全然鼻にかけていないこと。これも男から見ればポイント高いんじゃない? でもね、逆に言えば、そこが弱点。あの女は底が見えないのよ。性格も容姿も完璧だけど、何を考えているかよく分からない……兄さんも、そのことを少し歯がゆく感じてるように見えたわ」
「ましろ、むずかしいことよく分かんないけど」
おずおずと、手を上げるましろ。
「かまいませんわ。言ってごらんなさいな、ましろ」
和姫は優しく、話の続きをましろに促した。
「わたくし達に遠慮はいりませんわ。思うことを、自由にお話なさいな」
「じゃ、じゃあ」
そう言うとましろは、遠慮がちに、
「ましろは恋華おねーちゃん、わるい人じゃないと思う」
「ええ、わたくしもそう思いますわ」
「でもやっぱり、にーにーがとられちゃうのは、いや」
「わたくしもですわ、ましろ」
静かに頷く和姫。
皆、口には出さないが、瀬戸内恋華という存在に衝撃を受けているのだ。
「瀬戸内恋華という女が想像以上に魅力的だと分かった以上、野放しには出来ません。早急に、手を打つ必要がありますわ」
「ええ、そんなこと分かってるわよ」
和姫の結論に、レイラがフン、と鼻を鳴らして、
「兄さんとは前世から結ばれる運命のわたしだけど、因果律の乱れはありえることだわ。それは、深淵の闇でも、神託の天地でも変わらないの。わたしは兄さんと魂を共有してるけど、その魂が汚染させられてしまっては、元も子もないわ」
「貴方の話は相変わらず分かりにくいですわ……不安を感じてるなら素直にそうおっしゃい。時に、美鈴」
「えっ、なに?」
「あなたはどうお考えですの? 何か、あの女とお兄様を引き離す方策をお持ちですか?」
「あー、うん、えっとー」
人差し指を顎に当て、上を向きながら考え込む美鈴。
そして、
「……ごめん。これといって思いつかないや。でも、あたしはお兄ちゃんのことが好き。大好き。だから、ふたりの仲がこれ以上良くなることだけでも止めたいと思ってるけど……」
「そうね。わたしも同感だわ」
レイラは目を瞑ったまま腕を組みながら、
「付き合うのを阻止することが難しいと分かった以上、あの女の評判を下げること。これに尽きるわ。女であるからには、何か1つは隠し事があるものよ」
「えーそうなのー?」
ましろは困惑気味に、
「ましろ女だけど、かくしごとなんてしてないよ?」
口々に。
恋華についての対策を話し合う美鈴、レイラ、ましろ。
しかし良案に値する考えは、誰ひとりとして思いつかなかった。
「仕方ありませんわね」
ため息をつきながら和姫が、懐から携帯を取り出す。
「やはり、少しは姑息な手を使わないといけないみたいですわね。このような手はあまり気が進まないのですけれど、背に腹は変えられませんわ」
「ヒ、ヒメねーねー。なんかこわい……」
「ヒメ。殺意の波動に目覚めたというの……?」
「あ、ヒメちゃんすっごく悪い顔してる! どうせまた悪だくみしてるんでしょ!」
ましろ、レイラ、美鈴の反応に、
「……コ、コホン。えー、皆様、静粛に」
顔を赤らめながら、和姫は一同を見渡し、
「それでは。皆様に作戦をお話します。まずは……」




