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34認める? いいえ、お試しです!

 2勝2敗、1分け。恋華VS妹軍団は大将戦へともつれこんだ。


「さあ、ラスト1戦。やろうか」


 恋華はテーブルの上に手をつき身を乗り出しながら、和姫にそう言った。

 俊介は思う――ここで恋華が勝てば偽装恋人は成立し、妹達に兄離れをさせられる。しかしそれは、最愛の妹達を騙すことになるのだ。今更ながら罪悪感が押し寄せてきた。


「えっと、勝負するのは和姫ちゃんでいいのかな? また料理勝負する?」


 続けて問いかける恋華に、和姫は答える。


「いいえ、勝負はここまでです」


「なんで? 決着はまだついてないけど」


「あなたのことはよく分かりました。お兄様との交際を認めましょう」


 ざわざわ。

 和姫の衝撃発言に、思わずざわつく妹達。

 恋華は食い入るように和姫を見つめながら、大きな声で、


「今、私と俊介君の交際を認めるって言った!?」


「はい。正確には、『お試し期間』を認める――と言った方が正しいでしょう」


 お試し期間?

 俊介は和姫の言葉を聞いて、俊介と恋華は眉をひそめた。


「貴方とお兄様がお付き合いをすること。それ自体は一応認めます。しかし、半年だけです。半年間は貴方のことを、お兄様の『お試し恋人』と認めてさしあげましょう。その間で、貴方が真にお兄様に相応しいかどうか見極めますわ。しかし、警告しておきます。まずお兄様への過剰なスキンシップ。これは一切禁止です。キスやハグなどもっての他。あと、その日話した詳細な会話内容を全て報告していただきますわ。禁を破ったら、お兄様は諦めていただきます。その他にも、『デートの際は必ず報告をする』、『お兄様へプレゼントをする際はわたくし達の許可をとる』など。まあ、とりあえずはこんなところでしょうか。簡単でしょう?」


 簡単なわけがなかった。

 和姫は要するに、「あなたをお兄様の恋人として認めません」と言っているのだ。

 彼女が禁止してるのは、どれも偽装恋人を演じるのに必要なものだ。

 というか、普通に禁則事項が多すぎる。


 和姫はどうやら半年間『お試し期間』なるものを作り、猶予と余裕を持ったと見せかけて、その実相手を監視し、行動を制限しようしているらしい。これらのことをアドリブで考えたとしたら、正に悪魔的な頭脳の持ち主だ。当然ながら俊介は、『お試し恋人』など了承する気はなかった。

 しかし、


「いいよー」


 間延びした声に、俊介は思わずハッとなった。

 驚き、恋華の方を見る。

 恋華もまた、俊介のことを見つめていた。寂しそうな目で。そして、


 ――笑顔で。

 和姫が自分のことを、俊介の『恋人』として認めてくれたのだ。『お試し』だろうが何だろうが。それが、嬉しかったのかもしれない。


「……言っておきますわよ」


 和姫も笑っていたが、恋華のそれとはまるで別物だった。

 蔑むような嘲るような、しかしどこか自虐的な笑みにも見えた。


「貴方は、あくまでも『お試し恋人』。先ほど言った掟が守れないようなら、どのような手を用いてでも、貴方とお兄様を引き離しますわ。それを、ゆめゆめお忘れなきよう」


 和姫はそこまで一気にまくし立てた。

 その口調はあくまで丁寧ではあったが、れっきとした「敵意」があった。

 

「……」


 恋華は、あくまで何も答えない。

 しかし、和姫は喋り続けた。


「その他にも……貴方の『素行』も見させていただきます。普段の学校での様子、友人関係、外での態度など。それらがお兄様にふさわしくないと判断された場合も、お兄様とは別れていただきますわ」


 俊介は、妹達の顔をそれぞれ見た。


 ――にーにーを取らないで。

 ――兄さんは、あなたには渡さない。

 ――どうして、どうしてお兄ちゃんなんですか?

  

 ましろ、レイラ、美鈴と。彼女らの視線はこう語っているようであった。兄離れなど、とんでもなかった。「偽装恋人」を作ることによって、ますます彼女らのブラコン具合が加速したと言ってもいいくらいだ。


 しかし、だからといって妹達にこのまま道ならぬ恋に進ませるのが、兄として正しいのだろうか?

 俊介はそうは思わなかった。


「……わかった。肝に銘じておくよ」


 真摯な目で和姫を見つめ返しながら、恋華が言った。そして、


「もうこんな時間か。長居しちゃってごめん。そろそろ私は帰るよ」


 恋華は携帯電話の画面を見ながら言った。俊介も壁掛け時計を見る。時刻は夜の7時。窓の外を見ると、黒い帳を下ろしたように空が暗くなっている。俊介は恋華に声をかけた。


「送っていきますよ、恋華さん。外はもう暗いですし」

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