29夜の営み? いいえ、してません!
ということで、レイラは恋華に完全敗北を喫した。
あまりに見事な大敗だったので、しばらくレイラは放心状態だった。しかも大言壮語を吐いた後での負けだったので、余計にショックも大きかったのだろう。そんなわけで、傷心のレイラが何とか立ち直ったのを見計らって、恋華は美鈴へと声をかけた。
「じゃあ今度は、私と美鈴ちゃんで勝負しようか」
「は、はい! えーと、負けませんからね!」
美鈴が右手を差し出すと、
「うん。お手柔らかにね」
と、恋華はその手を握って微笑んだ。
「あ、はい。こちらこそ……じゃなかった!」
美鈴はキリッと表情を引き締めながら、
「真剣勝負です! 手加減はしません!」
「私も手は抜かないよ。それで? 勝負の方法は?」
「力比べです!」
美鈴はがおーっと威嚇するように叫んだ。
あまり迫力のない威嚇だったが、本人としては出来る限り怒気を含んだ表情で、
「お料理が出来たり、お勉強が出来るだけじゃダメ。いざとなったら、お兄ちゃんを守れるだけの運動能力もないと! 絶倫なお兄ちゃんの子供は産めません!」
「あー確かに。俊介君って精力絶倫だもんね。あの夜だって……ぽっ」
恋華は赤らめた頬を両手で挟んだ。
美鈴は慌てて恋華を指差しながら、
「な、なんてうらやま……じゃなかった! それならあたしだって、お兄ちゃんに毎晩夜の保健体育を教えられてます!」
「……妄想で話を繰り広げるのは止めてくれませんか?」
事実無根な会話を繰り広げる2人に、呆れ顔で突っ込む俊介。
そんなことよりも、美鈴の言う「力比べ」に俊介は着目する。
俊介はチラリと美鈴を見た。
美鈴は女子テニス部に所属している。まだ1年生なのでレギュラーではないが、それでも期待のホープと言われている。運動神経は高く、体育の授業は常に満点評価を受けていると聞く。ちなみに他の科目に関しては目も当てられないほどなので、俊介としては勉強も少しは頑張ってほしいものではあったが。
一方の恋華は帰宅部だ。体育の成績までは知らないので、運動能力に関しては未知数だ。対する美鈴は、中学1年というハンデはあるものの、毎日走りこみや筋トレをかかさずやっているので、そこらの高校生よりは力があるだろう。意外と接戦になるかも、と俊介は予想した。




