27終わり? いいえ、まだです!
百年戦争をジャンヌと共に戦い、童話「青髭」のモデルとなった人物の名は?
それがレイラの出した問題だ。簡単なように思えるが、俊介は眉をひそめた。
答えはジル・ド・レ。フランスの貴族にして、軍人でもある。
ネックになるのは、レイラが『本名で』と言ってるところだ。レというのは所領の名前なので、本名は別にあったはずだが。かなり長い名前なので、全く思い出せない。
「ふふ、どうしたのかしら? あと――30秒よ」
「くっ、まだだもん!」
いつの間にかストップウオッチを持っていたレイラがニッと笑って挑発すると、恋華は俯きながら真剣な声色で答えた。
レイラは、その必死さをあざ笑うように、
「あと20秒」
「うー、なんだっけ、なんだっけ……」
「あと10びょ……「わかった!」」
レイラのカウントダウンを遮るように、恋華は顔を上げた。
晴れやかなその表情は、決して開き直りなどではない。
「ジル・ド・レ! 本名は――ジル・ド・モンモランシ=ラヴァル!」
ゴトンッ!
レイラが持っていたストップウオッチを、床に落とした。その瞬間、約束の1分を告げるアラームが、リビングに鳴り響いた。恋華は制限時間に間に合ったのだ。あとは、その答えが正解か否かだが――
「どう? レイラちゃん、正解?」
「……かいよ」
「ん? なんて? 聞こえなかったなー私」
「正解よ! 正解正解! ……うう~~」
片耳に手を当てながら尋ねる恋華に、真っ赤な顔でレイラは叫ぶのだった。しかし惜しかった。事実、俊介は時間内には分からなかったのだ。制限時間というのは、予想以上に頭を混乱させる。
しかし、こうなってくると俄然有利になるのが恋華。なにしろ、制限時間というルールが追加されたのである。しかもレイラは自慢の問題を答えられて、ひどく動揺している……今のうちに、勝ちを掴み取りたいものだろう。
「じゃあ、次は私のターンってことで。あ、一応聞くけど。1分以内に答えるルールは、当然レイラちゃんにも適用されるんだよね?」
「当たり前じゃない。暗黒の姫騎士たるわたしには、丁度いいハンデだわ!」
確認する恋華に、毅然と答えるレイラ。本当は動揺したまま不利なルールで戦いたくはないだろうが、自分で言い出したことなので、俊介にも助けようがない。
というか、金星の姫なのか森の精霊なのか暗黒の姫騎士なのか。言うたびにコロコロ変わるが、そろそろハッキリしてほしい俊介であった。




