18和気あいあい? いいえ、修羅場です!
「……と、いうことで。おとついから俊介君とお付き合いさせてもらってます、瀬戸内恋華です。皆さん、よろしくお願いします」
翌日、井川家のリビングにて。
恋華は、妹軍団に向かってペコリと頭を下げた。
その様子を、妹軍団はそれぞれ複雑な表情で見つめている。
それもそのはず。妹軍団は、物心つく頃には全員俊介に好意を持っていたという、筋金入りのブラコン達なのだ。それが目の前に、愛しい兄の恋人を名乗る女が現れている。敵愾心を持たないわけがなかった。
「は、初めまして。4女の井川美鈴です」
「わたしは次女の井川レイラ。兄さんとは生まれる前から運命の赤い糸で結ばれているわ。貴方のような下賎なる種族とは違って、ね」
「井川ましろです。5女で7さいです。好きなたべものはナポリタンです」
美鈴、レイラ、ましろの3人が、恋華の自己紹介に挨拶を返した。困惑、あるいは敵対心を持ちながら。忌むべき敵を前にして、どう態度を取るか計り兼ねている様子だ。
「ようこそいらっしゃいましたわ。わたくしは長女の井川和姫と申します。本日は貴方が来られるのを、楽しみにしておりましたわ」
最後に和姫が、丁重にお辞儀をしながら、妹軍団の挨拶を締めくくった。和姫が頭を上げるタイミングを見計らって俊介が、
「それでは、もう少し詳しく説明させてもらいますね」
と、恋華の肩にポンと手を置いた。
ポッと恋華の頬が赤くなる。
「「「「……なっ!!!!」」」」
その様子を見て、驚愕の声を上げる妹軍団。
ましろは『いいなー、ましろもー』という羨望のまなざし。
美鈴は『あたしだって最近そんなことしてもらってないのに』と哀しみ。
レイラは『闇の眷属たるわたしの兄さんに、誰の手を得て手を出しているの? 炭クズどころか魂ごと浄化してあげないといけないわね』と嫉妬。
和姫は『わたくしのお兄様に何をしているのかしら? このメスブタが! ズタズタに切り裂いて精肉店に出荷してさしあげますわよ!』と殺意を込めたような表情をしている。
あくまで表情、だが。
そんな負のオーラを漂わせる妹達を華麗にスルーしつつ、俊介は、
「えっと、皆さん驚かれてると思いますけど。僕と恋華さんが付き合い始めたのはごく最近なんです。恋華さんは何と、ミス・千本桜に選ばれているんです。容姿だけじゃなくて、性格もよく、生徒からの人気も非常に高いです。学力テストでも毎回上位に食い込んでいるので、頭も良いです。僕は、そんな恋華さんが好きです。これからも親しくしていきたいと思っています」
と、事前に考えておいた台詞を言った。すると妹達は、
「……お兄ちゃん、本気なの? 昔、あたしのことお嫁さんにしてくれるって約束はどうなるの!?」
「……にーにー、ましろとはもう仲良くしてくれないの?」
「……わたしと兄さんは、この星に生まれる前から前世で契約を結んでいるのよ? 運命の導きの間には、貴方のようなビッチ女の入る隙などないのよ」
「……わたくしも、そう思いますわ。わたくしとお兄様は、生涯に渡って愛し続けると誓い合った仲ですわ。何処の馬の骨とも分からないような女などに、お兄様は渡せませんわ」
俊介の説明に、何一つ納得してない様子の、美鈴、ましろ、レイラ、和姫の4人。要するに、『お前みたいな青二才にうちの子はやらん!』と意固地になっている昭和のオヤジ状態である。
肝心の恋華はと言うと、
「まあまあ、みんな落ち着いて? そんなに興奮してちゃ、まとまる話もまとまらなくなるよ?」
と。
やたら冷静に、妹達を諌めた。
その、一見すると間延びしたような穏やかな口調に、ヒートアップした妹軍団も、ハッと我に返ったように冷静さを取り戻した。その瞬間を見逃さずに、さらに恋華は畳み掛ける。
「それじゃあ、私の方から話をしようか」
しん、と静まり返った室内に、恋華の柔らかな声が反響した。
「私がどうして俊介君を好きになったのか。どうして付き合うことになったのか。納得出来るかどうかは別として、とりあえず話だけでも聞いてみてよ。怒るのは、それからでも遅くはないでしょ?」




