表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
178/218

20教室? いいえ、敵地です!

 2年の自分のクラスまで走ると、俊介はすぐに教室に入った。

 恋華は既に来ていた。いつものように、周りを取り巻きが囲んで談笑している。

 周囲に群がるクラスメイトをものともせず、俊介は恋華に話しかける。


「……れ、恋華さん。少しお話があるんですけど」


「はい? 俊介君、どうしたんですか?」


 恋華の態度は猫かぶりモードになっていて、流麗かつ優雅だ。


「そんなに息を切らせて。落ち着いてください。まずは座ったらどうですか?」


 俊介は恋華をじっと睨みつけて、


「そんなことより、大事な話があるんです。少しお時間をもらえませんか?」


「ここじゃ出来ない話ですか?」


「はい。できれば」


「うぅ~ん……」


 俊介がそう断言して初めて、恋華の顔に戸惑いの色が浮かんだ。

 大事な話――それは、今朝の告白の件であると、恋華なら既に察しているだろう。しかし表情を固くした恋華を見て、クラスメイト達は何か誤解したのか、


「おい井川。瀬戸内さん困ってるじゃねーか。元カレだからって、少し図々しくね?」


「そうよ。大体、要件も言わずに顔だけ貸せとか、失礼じゃない? 話があるなら、ここで言いなさいよ」


 と、口々と不満を言い合った。


「あ、いいんですよ!」


 しかし恋華は、慌てて椅子から立ち上がると、クラスメイト達に向かって手を振りながら、


「私、俊介君と元々お話をする約束をしてたんです。ただ、私の方がうっかり忘れちゃってて……。すぐに戻りますから、皆さん待っててもらえますか?」


「まあ、瀬戸内さんがそういうなら……」


 クラスメイトの1人――真鍋は、口をすぼめながら、


「だってよ井川。でもさ、お前調子に乗ってんじゃねーぞ?」


「は?」


「少しくらい付き合ってたからって、彼氏ヅラすんなって意味だよ。てか、未練ありすぎじゃね? もし瀬戸内さんに何かあったら、殺すからな」


「……」


 お前に何が分かる。そう言い返そうとしたが、


「あ、あはは!! も、もうこの辺でいいですよね! ほら、俊介君いきましょ! 早くしないとホームルーム始まっちゃうし!」


 怒鳴り返そうとした俊介の言葉を、朗らかに恋華は遮った。

 そして、


「さ、いこ? 俊介君」


 そうやって自分にだけ分かるよう、軽く目配せをした。

 その時、俊介は憤慨していた気持ちに冷静さを取り戻した。

 ふと周囲を見渡せば、クラス中の視線が自分に向けられていた。


 ――ここは敵地。


 さらに恋華が、素早く口パクをする。読唇術という奴だ。確かに、楽し気に話をしていた所に、いきなり乗り込んで、パーティの主役を奪おうとしたのだ。穏やかな雰囲気になるはずがない。俊介は、周りにいるクラスメイトに向けて頭を下げた。


「皆さん、お騒がせしてすみませんでした」


 突然の俊介の謝罪に、クラスメイト達はざわついた。


「でも、どうしても恋華さんと話したいことがあるんです。そんなに時間はおかけしませんから、恋華さんをお借り出来ないでしょうか……?」


「いいよ。行って来いよ」


 そう答えたのは、先ほど俊介に食ってかかった真鍋であった。

 その一言で、険悪だった雰囲気が多少ではあるが和やかになった。

 俊介は悟った。これが瀬戸内恋華なのだ。学園のアイドルにして、クイーン。偽装恋人という盾が無くなれば、このような過激派も現れるのだ。自分と別れてから更に告白が増えたという、恋華の言葉にも納得がいくというものだった。


「仲直りは出来たみたいですね。それじゃあ、行きましょうか」


 恋華が口を挟むことで、クラスメイト達は完全に同意モードとなった。恋華の発言力を、まざまざと思い知らされるばかりだった。


「1つだけ聞かせて下さい。大事な話って、私に関することですか?」


「それは今ここでは言えません。2人きりになれたらお話します」


 そう答えると、恋華はじっと俊介の顔を見つめた。

 そのまま、体感では永遠とも思える時間が流れた時。


「わかりました。では行きましょう」


 根負けしたように目を逸らしながら、恋華は呟いた。


「はい。ついてきてください」


 俊介がそう言って歩き出すと、恋華も黙って教室を出て行く。

 さあ、ここからが本番だ。

 俊介は、緊張する自分に言い聞かせた。

 果たして、恋華は佐々木と付き合っているのか。もしそうだとしたら、何が何でも止めなければならない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 更新お疲れ様です! [一言] >果たして、恋華は佐々木と付き合っているのか。もしそうだとしたら、何が何でも止めなければならない。 ・・・・・佐々木はヤリチンだから止めとけ、だけじゃ逆効果…
2020/11/07 15:20 退会済み
管理
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ