14女子会? いいえ、臨時会議です!
そして、俊介と恋華が退店した後のファミレス店内にて。
……4人の妹達は、今回の俊介と恋華のデートについて、また、恋華という強力な恋のライバルについて話し合っていた。
ちなみに俊介と恋華は食後のカラオケに向かったのだが、流石にそこまでついていくとバレるので、今回の尾行はこれぐらいにしておこうという話になった。まあ、そんな考慮をせずとも最初からバレバレだったのだが。
「それでは、このような場所ではありますが。臨時の妹会議を始めましょうか」
4姉妹は全員お昼がまだだったことから、思い思いに料理を注文していた。アジの塩焼き定食の、アジの身を口に入れながら、和姫は切り出す。
「まず率直にお聞きします。どう思いましたか?」
「どうって?」
美鈴の問いに、
「あのメス豚のことです。皆様はどう思い、何を感じましたか?」
和姫はハンドバッグから手帳を取り出すと、内容を読み上げた。
「瀬戸内恋華。お兄様と同じクラスで千本桜高校2年A組。入学当初からその並外れたルックスと高いコミュニケーション能力を生かし、1年生にしてミス千本桜に輝いた、文字通り学園のアイドルですわ。有名人なので、それとなく注目はしていたのですが。彼女は、その瀬戸内恋華に間違いはありません」
「ふええ、そうなんだー」
コーンドリアとポテトサラダのセットを食べながら美鈴は、
「どおりで綺麗な人だと思ったよー。ていうか、ミス千本桜? それって凄くない? そんな人が相手なら、あたし達に勝ち目なんてないんじゃ――」
「……あら、そんなことはないわよ?」
割って入ったのは、真紅の魂が宿りし白き流星と称する物を食べていたレイラだった。要するに明太子うどんである。
「ふ、あの程度のビッチ女。高次元の世界で共鳴し合っているわたしと兄さんの間には、割って入る余地すらも与えないわ」
「で、でも! 恋華さんって人、凄く可愛いし、性格も悪くなさそうだったよ!? このままじゃ、お兄ちゃん取られちゃうかもしれないよ!」
「落ち着きなさいスズ。案ずる必要はないわ。守護霊獣が囁いている。兄さんの崇高なる魂は、まだあのビッチ女になびいてはいない、とね」
「ごめん、レイラちゃん。全然意味わかんないんだけど。どういう意味?」
「兄さんとビッチ女の間には、超えられない壁が張られている、ということよ。その証拠に、静寂の魔物が空間を支配していたわ」
「ヒ、ヒメちゃん。レイラちゃんが何言ってるか、わかる……?」
いよいよレイラの話が抽象的というか電波になってきたので、美鈴は和姫に助けを求めた。魚の身をほぐしていた和姫は、一旦手を止めて、
「そうですわね。要するにレイラは、お兄様とあのメス豚の間には、一定の『距離感』があったのではないか、と言っているのではないでしょうか」
「距離感?」
きょとんとして聞き返す美鈴。
「距離感って何?」
「つまり、お兄様とあのメス豚は、親しくなってそう間もないということですわ。そうでなければ、あのようなぎこちない雰囲気には普通なりません。おそらく、まともな会話をすること自体がごく最近でしょう」
「おいしー! おいしー!」
美鈴の疑問に答える和姫の隣で、ましろが口元を汚しながらチョコレートパフェを一心不乱に食べていた。
まだ7歳のましろには、難しい話よりも大好物のパフェに目がいってしまうのは、仕方のないことではあるが。
「ほら、ましろ。お口がチョコレートで汚れていますわよ。拭いてさしあげますから、お顔をこちらに向けなさいな」
「いや! ましろ、このままでいい!」
「そうですか。そのようにだらしなく汚れたお顔のましろは、お兄様もお嫌いになると思うのですが。ああ、そうそう。お行儀の悪い子供も、お兄様はお嫌いだと仰っていたような……」
「……ふいて? ヒメねーねー」
ましろがしぶしぶながら、和姫に顔を差し出した。
和姫はフッと微笑みながら優しくましろの口元をおしぼりで拭いてあげた。流石に長女だけあって、ましろの扱いに関しては和姫が一番手馴れているのだ。
「ヒメねーねー、ありがとー」
「でも、どうするの? 今ちょっとぎこちないからって。放っておいたらすぐ仲良くなって、1線を越えちゃうかもしれないよ?」
「……そうね。まあ、あの程度のビッチ女は恐るるに足りないけど、それでも放置しておくのは危険なリア充臭があるわ」
ましろ、美鈴、レイラと。
3人がそれぞれに感想、疑問、主張をぶつける。それらの言葉を、しばし目をつむって無言で聞いていた和姫だが、やがてゆっくりと瞼を開けた。
そして、荘厳に口を開く。
「――考えがあります。わたくしとて、あのようなメス豚を放っておく気などありませんわ。皆で力を合わせて、あのメス豚を駆逐しましょう」




