表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

5/21

5 雑魚っぽくてもボス戦なんですよ

 雑魚戦について長々とお話しててもしかたないですね。

 その日の最後の戦いとしてフロアボスに挑むことになりました。


 と言っても1層目のフロアボスはオーク1匹。

 世間一般的にはオークも十分雑魚だってことはわかってます。

 でもよく考えてみてね。

 駆け出し冒険者ってことは、皆ちょっと前までは一般人なわけです。

 一般人がオークを簡単に倒せるのなら、オーク討伐の依頼とかが冒険者ギルドに来るわけがないんですよ。


 雑魚戦とボス戦ではどこが違うんでしょうか?

 前衛はあまり変わりません。

 後衛から敵を守りつつ戦えばいいんです。

 ただ雑魚戦は少々の攻撃を受けても問題ないため守備より攻撃重視で戦えますが、ボス戦では一度の攻撃で致命傷になることもあるので、守りを重視する傾向になることが多いかもしれません。


 逆に後衛は雑魚戦であまり出番がありません。

 この世界にはMPのような明確な概念はありませんが、やはり魔力のようなものがありますので、魔力を消費する魔法を使える回数には上限があります。

 魔力を使い果たしてしまった後衛は役立たずの存在になります。

 ですから雑魚戦では極力、魔力の消費を抑えて、その分ボス戦に魔力を使うことになります。

 1層の最初から極限魔法を使うような戦い方は一般的ではないのです。あれはありあまる魔力を有するからこそできる芸当なんです。

 ということで、ボス戦での火力の中心は後衛になるのです。 


 でも、中衛の僧侶とかは状況に応じた戦い方になるので、いろいろ頭を使うんですよね。

 慣れないから、めっちゃ疲れましたよ。


「強化魔法かけます」


 ボス戦の前は出来る限りの強化魔法を使っておきたいよね。

 わたしはシモンとアーガスの2人に強化魔法を使って、防御力を少しだけ上げました。

 本当は全員にかけたほうがいいんでしょうけど、魔力の残りが半分くらいかなって感じなので、回復魔法のために残しておかないといけませんね。


 シモンは魔法戦士を名乗ってるので本来なら攻撃力を上げる強化魔法も使えなければならないはずなんですが、本人もきまだ気づいてませんが実は勇者ですので、使える魔法は攻撃魔法と回復魔法となってます。

 勇者は強化魔法には適性がないんです。

 その分、剣と盾を使いながら、攻撃魔法・火炎魔法を使えるなんてチートな状態なんですが、普通の人はそれがチートだなんてこと自体を知らないので問題ありません。


「準備がいいなら行くぞ」


 ヘンリーの合図で、前衛のシモンとアーガスがオークに向かう。

 わたしはその後ろでいつでも回復魔法をかけれるように準備していよう。


 前衛の2人がオークを押さえ込んだところへ、ヘンリーのファイヤーボルトが炸裂する。

 オークはヘンリーに怒りを向けるが、前衛が2人がかりで押さえ込んでいるので問題ない。


 ヘンリーは次の詠唱準備に入っている。オークの隙をついてレムスがオークの後方から首筋の急所に短剣を叩きつける。

 オークから血しぶきが出て、レムスを探すが、レムスは素早くオークの視界から逃れている。

 それをチャンスとシモンとアーガスが剣をオークに叩きつける。

 オークが蹴りを繰り出し、アーガスの腹に命中した。


 苦しそうなアーガスに対し、わたしは回復魔法を使った。

 あとは全体回復なら1回、個別の回復なら2回くらいしか使えないかもしれない。


 アーガスはすぐに立ち上がりシモンとともに再びオークに向かい合う。

 そこへヘンリーのファイヤーボルトが炸裂して、オークは倒れたのだった。


「まだまだぎこちないけど、なかなかいいコンビネーションだったんじゃないか?」


 シモンは割りと満足そうだ。ただ、ヘンリーは


「うーん、オークでこれだけ苦戦してるとまだ次の層はきついかな?」


 フロアボスの部屋の向こうの階段から次の層にいけるんだけど、帰りにもまたこの部屋通らないといけないからね。

 それだけ余力を残して戻ってこれるようにならないと次の層へは進めません。

 目安としてはフロアボスとの戦いが余裕になったくらいでしょう。


「焦らなくても大丈夫だろ? 初日にはフロアボスなんて、とてもとてもと思ってたのが数日で倒せるようになってるし」


 アーガスの言うとおりですね。

 素人のパーティーで1層目を突破出来るようになる目安は2週間です。

 数日でフロアボスを倒せること自体が異例なんですよ。

 皆がすごい勢いで成長しているってことで、それはすべてシモンのおかげなんですが、そのことは誰も知るわけがありません。


「オークの死体が消える前に解体しちゃうからな」


 レムスはそう言うとオークの解体を始めました。

 オークの肉は豚肉と同じくらいのクォリティですので高価で買い取ってもらえます。

 そしてレムスは解体ができるんでした。

 すっかり忘れてましたが、そんな設定をしたような気がします。


 レムスがオークの首筋に刃物を当てて血が吹き出すのを見た瞬間、魔力をずいぶん消費していたことや、これまでの戦いの緊張し続けていたこともあり、ふっと意識が遠のいてしまいました。


 ☆★☆


 気づくと誰かの背中におぶさっているようです。


「あ、ごめんなさい」


 わたしが目を覚ましたことに気づいて背負ってくれてたアーガスが首を向けました。


「大丈夫か? 急に気を失ってびっくりしたぞ」


 背負ってくれてたのはアーガスだったのか。

 どうせならシモンのほうがよかったのに……あ、イケメンだからってことじゃないよ。

 おぶさって密着してたらその分、成長できるからっていうこと。


「大丈夫そうなら下ろすぞ」

「うん、ありがとう」


 こら、そんな乱暴に下ろすんじゃない。

 せっかく少しだけ好感度アップしてたのに!

 もうちょっとアーガスは女の子の扱いを覚えたほうがいいと思うよ。


「ごめんな、ああいうの苦手だと思わなくて」


 レムスが謝ってくれたけど、別にレムスは悪くないと思うんだ。


「レムスは悪くないよ。ちゃんとお仕事してくれてただけだから、緊張してたのと魔力が減ってたのとで、ちょっと貧血おこしちゃっただけだから」


 ちゃんとフォローしないとね。

 お肉は大事。貧乏なんだから報酬は大事。


 特に誰かがほしがるようなDropアイテムもなかったので、すべてのDropアイテムとオークのお肉を冒険者ギルドで買い取ってもらった。


「じゃ、今日の分け前だ」


 このパーティーの分配は常に全員公平に5等分。

 基本的にはこの方針に賛成です。

 

 こうして最後にちょっと失敗してしまったけど、わたしの転移初日の冒険は無事に終わったのでした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ