10 ちょっと待って、もう少しヘタレな設定だったはずですよ
翌日も第2層へ。
3日目になると生理痛の方はあまり気にならなくなります。
前もそうでしたが、アリエルの体でも同じようですね。
あ、ちゃんとお弁当は忘れずに持ってきてますよ。
実質わたしが忘れたのは昨日だけなんですからね。
もうパーティーでの位置づけは完全に定まっちゃったようなので、あきらめましたが。
体調はさほど悪くないので、わたしもせっせとシモンの補助にもまわります。
結果として早く倒せるので回復魔法の使用回数も減り、ヘンリーの攻撃魔法の使用回数も減ってますね。
昨日より、アーガスのほうも成長が見られますので、なかなかいい感じに狩れるようになってきました。
まだちょっと魔力の減りが早いので休憩がたびたび必要ですが、危なげない感じで狩れるようになりました。
明日はきっとこの階層の奥の方へ向かっても大丈夫だと思う。
いつものように分配を終えて帰ろうとしてるところへ、シモンから声をかけられた。
「アリエル、体調が悪くなさそうなら、軽く酒でもつきあってくれないか?」
おや、お酒のお誘いですか。
昨日は体調最悪でしたので帰っちゃったけど、今日なら問題ないかな?
いつもスルーしてたらちょっと感じ悪いよね。
「いいですよ」
ニッコリ微笑んでお返事を。
好感度は大事です。
シモンにそのままついていくと、どうやら2人でってことだった様子。
てっきり昨日のように皆で飲みに行くのだと思ってたよ。
いまさらお断りもできないし、別にシモンと2人で飲みに行くことが嫌なわけじゃないしね。
それにしても、意外と積極的なんだね。
行き先はわたしが知っている冒険者ギルドの近くの酒場ではありませんでした。
知っているって言っても設定があるだけで入ったことはないんですけど。
階段を降りて行った先にあったのは、カウンターだけのお店。
バーって感じじゃなく、例えるなら洋風のお寿司屋さん?
目の前で調理して料理やお酒を出してくれるって感じのお店です。
まだ早めの時間だったせいか、お店には他に1組の男女がいるだけでした。
全部で席は8席しかないようなので、わたしたちが行くことで半分席が埋まった感じ。
こういうお店なら隣に座るのが自然だから好都合です。
お料理もなかなか美味しい。
先日のお店ほどの高級感はないですが、創作料理って感じなのかな。
名前聞いてもわからないのは当然ですが、料理の現物を見ても味の想像ができないのがちょっと怖いところ。
でも、いい感じに想像を裏切ってくれて、食べてても楽しいです。
素材がまったくわからないのが正直怖いですが。
話題のほとんどはやはり妹のアリサちゃん。
その話題を喜んで聞いてあげるのはわたしだけだからね。
そう思って聞いてたら、昨日の飲み会の話題になった。
どうやら、シモンはやはりアリサちゃんの話題を意気揚々と話して冷たくあしらわれたたようだ。
そりゃそうだよ。
ははーん、アリサちゃんの話題を嬉しそうに聞いてくれるわたしへの好感度が自然にアップしちゃってるようですね。
なんか、どうでもいい感じの好感度アップだなぁ。
でも、やはりアリサちゃんの生みの親としましては、アリサちゃんの話題は嬉しいものなんです。
今日もいろいろお話聞けました。
アリサちゃんの小さい頃の微笑ましい話題、設定も何もしてない話題に関しては、そのネタいただきってメモして後からSSでも作りたいんですけど、異世界に来ちゃった以上、発表するアテがないんですよね。
残念!
ちょっと酔っ払っちゃった感じで、わたしもなんか目がトローンとしてきちゃった。
「そろそろ出ようか」
ってシモンが言うので今日はこのあたりで。
今夜もシモンに奢ってもらっちゃいました。
おっと、ちょっと足がもつれたみたい。
シモンが支えてくれました。
わざとじゃないからね。
お店を出て階段を登って行く途中の踊り場でシモンが足を止めました。
あれって思う間もなく、シモンに唇を奪われてしまった。
ちょっ!
シモン、君はスケベだけど、ヘタレだから自分から女の子にそういうことできない子って設定したはずだよ。
もしかして、わたしの一連の行動を誘ってるように思っちゃった。
うーん、こういう恋愛物になる予定はなかったんだけどなぁ。
そのままシモンと手を繋いで歩くことに。
わたしの泊まってる宿のすぐ前で、
「アリエルの部屋に行っていいかな?」
ちょっと待って。
それって「やらせろ」ってことだよね。
そこまで一気に進んじゃうつもりだったの?
ちょっと展開を急ぎすぎじゃない?
そう来るとは思っていなかったので、わたしもうろたえて、
「今日はあの日だから」
って答えると、シモンは、
「あ、そうだったね」
って残念そうに。
「今日は楽しかったよ。また明日」
再びわたしに口づけして自分の宿へと去っていった。
自分の部屋に戻って落ち着いて考えてみると、さっきのわたしの言葉って断ってないよね。
今日はダメって言ってるだけで、生理が終わったらいいよって意味に取られてるかもしれないよね。
この展開はまったく予定してなかったよ。
どうするのさ。




