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第2話 友達

音がしたので目を覚ましたら、新しい奴隷の人達が入ってきた。

新しい奴隷が入ってきた時は朝ごはんが食べられる。2週間ぶりだ。

兵士を待っていると、私より少し背が高い男の子が話しかけてきた。


「ねぇ、君はいつからここにいるの?」

「私は貴方よりずっと前からここにいます」


言葉遣いや、相手に聞こえやすい声の勉強も一応教えられた。

うまく話せてるといいのだけど。


「そうなの?じゃあさ、前にも僕のような格好してる人が来たことある?」


格好・・・・・

男の子の着ている服はちゃんとした布で2,3枚くらい重ねて着ているが、私の服は一枚の布をうまく縛って着ていて、かなり汚れている。

他の人が私の服を見ながら寒そうとか言っていたのを思い出す。

そういえば、ほとんどの人が2,3枚重ねている服を着ていた。


「私以外のほとんどが貴方のような服を着ていましたよ」

「そうか・・・・」


男の子が何かを考え始めたので、次はどんな質問が来るのかと構えてじっと見つめていたら、

その視線に男の子が気づいたようで、


「どうかしたのかい?」


と、聞いてきた。

もう質問はないようだ。


「何でもありませんよ、ただ貴方が何かを考え始めたのでどうしたのだろうと見ていただけです」

「そうか、あのさ、僕の名前はレオンと言うんだ。よければ名前で呼んでくれないかな?」

「私のようなものが名前を呼んでもいいのですか?」


私は驚いた。

兵士から、「お前のような化け物から名前を呼ばれると名前が汚れるから呼ぶな」と言われていたので

それを守るようにしていたから。


「当たり前じゃないか。ぜひ呼んでくれ」


当たり前。そう言ってくれて嬉しかった。産まれて初めて優しくされたかも知れない。

こんなに嬉しいと思うのはいつぶりだろうか、つい泣きたくなるがこらえる。


「君の名前はなんて言うんだい?」

「私の、名前?」


レオンはうなずく。

名前。私に名前なんてない。呼ばれるときは、化け物かお前しか言われたことがない。


「私に名前なんてものはありません」

「名前が、ないのかい?」


私はうなずく。レオンは少し考えると、笑顔になり、私に言った。


「じゃあ、今日から君はノアだ」

「ノア?」

「うん!よろしくね、ノア」

「は、はい!」


しばらく沈黙が続く。

私は、気になっていることを聞いてみた。


「あの、さっきレオンは何を考えていたのですか?」

「・・・・そうだなぁ、友達に聞かれたら、答えなくちゃな」


え?友達?


「友達?」

「僕はもう友達だと思っていたんだけれど、違ったかな?」

「違いません‼レオンと私はお友達です!」

「そ、そんな泣きながら言わないでくれよ、僕も困ってしまうよ」


気がついたら泣いていたようだ。

急いで涙を止める。

・・・・実感というものは湧かないが、夢が1つ叶ったのだろうか。

神が願いを聞いてくれたのだろうか。


「ありがとう」


言葉に出してしまったようだ。でも、本当に感謝しているのだ。

奴隷でも、叶う夢があったのだ。


「いきなり目に光が宿ったね。ノア」

「そうですか?」


目は知らないが心は希望が溢れている。


「それで、さっきの質問何だけどね、実は僕、商人の息子で盗賊に襲われて、気がついたらここにいたんだ。盗賊が襲った人達を奴隷にするのは犯罪なんだ。ノアによると結構、そういう人たちが奴隷にされているみたいだから。役所にいえば、村人を全員死刑にされても文句は言えない」


小声で、レオンが話す。


「全員死刑?」

「うん、それだけ大きなことをここの人達はやっている可能性があるんだ」


沢山の人が死ぬのはよくない。

そんなに大きなことをここの人達はやっていたのか。


「凄いの?」

「凄いんじゃないかな?」


それから、レオンといろいろ話した。

外の世界には、魔物がいること。海があること。山があること。

全て本で読んでいて知っていたが、改めて話を聞くとすごいなぁと思う。

楽しく話していたら


「おい!そこのお前ら!もう寝ろ」


と、兵士に言われた。

二人で顔を見合わせてヘヘッと笑い、寝ることにした。


なかなか眠れない。

それもそうだろう。今日は、夢が叶って、外のこと聞いて。友達と笑いあって、

すごく楽しかった。

・・・・そういえばご飯来なかったな。まぁ、そんなことはどうでもいいや。


紫色の髪を指先でくるくるしながら、眠気が来るのを待った。


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