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第1話 転移した先は

ひとまず書き上がった1話だけ連続投稿しておきますね。

六苑寺家(ロクオンジ家)は、古くは鎌倉時代から続く由緒ある一族らしい。




俺の生まれた家は本家の筋では無く、分家なんだけど。





なんでも魔を祓う様な職業だったとかで、言葉に力が宿るものとされており、受け継いでいく為に「名前」に「新名しんな」を付ける習わしがあるそうだ。新名とは、生まれた日付と時間から算出した干支と言葉を元に、六苑寺家の先祖代々が使用した名前の言葉を合わせるといった感じで、、、よく分からん。



例えばオレで言うと、算出されたのは29番目、干支は「壬辰みずのえたつ」。



これを六苑寺家の先祖の名前の言葉を合わせると、なんと「大豪浪だいごろう」となるらしい。


六苑寺ロクオンジ 大豪浪ダイゴロウ。。。


まあ、これはこれで男らしい名前だな、、、。





この新名、生まれた日付と時間さえ分かれば決まる関係上、出産と同時に判明するのだが、六苑寺家始まって以来の優秀な新名として、本家の当主含め、親族一同がこぞって大喜びだったそうだ。





しかし自由人がモットーの俺の母親は、ゆるせなかった。




「ネーミングセンスが最悪だから。」




父親は婿入りと言う事で新名は与えられなかったが、六苑寺の人間である母には新名があった。


その名は「鵜芽子(ウメコ)」。


ちなみに父親は浩二。どこにでもある普通な名前だと、母は羨ましそうだった。





恐ろしくネーミングセンスの悪い名前に苦しめられてきた母は、それを理由に父親である現当主・六苑寺(ロクオンジ) (ガイ)と親戚一同の反対を押し切り、自分の意志で名前を付けた。





そしてそれがオレの名前、「六苑寺ロクオンジ 煉河レンガ」。





結局、本当の名前はレンガ、親族一同が呼ぶ新名としてダイゴロウで落ち着いた。






この名前の改変劇が、のちにオレの運命を変える出来事の引き金になった。








本家の当主のじいちゃんから聞いた話だが、古くからの六苑寺家の言い伝えで、先祖と同じ名を付けた場合、その先祖と同じ体験をする事になると言われていたそうだ。



うちの母親がそんな事を知っていたはずも無いし、知っていたとしても信じなかったろう。




実は長い六苑寺家の中で江戸時代中期に「蓮牙(レンガ)」という人物がおり、そのご先祖様、どういった人生を辿ったかというと、、、















消えた。














六苑寺家の「人物検察帳」なる記録簿に記述してあるのは、18歳になったある日の朝、曖昧な記述ではあるが、突然親の目の前で消えてしまったとの事。その日江戸の全域に紫の花火のようなものが舞ったそうだ。





なんせ昔の事だ、人攫いにでもあったか、どこぞの村娘と駆け落ちでもしてうまい事やってんだろ。







そんなこんなで、迎えた18歳のある朝。














今日は天気予報通りの雨模様、傘を差して家を出た途端に「ソレ」は始まった。















「・・・ん?歌の練習か?」




遠くから歌が聞こえる・・・?しかも大合唱。コーラス部?


周りは住宅地、公民館なども無い為、どこかの家に集まってサークル的な事でもやってんのか?







ふわっと、何か光るものが目の前を舞い落ちる様に、ひらひらと通り過ぎる。











何だろう、と目で追いかけると地面に音も無く着地。


不思議とその光は消えない。














小さな光るものは次第に色を帯び、はっきりとした紫色に変わる。












「な、んだこの光るヤツ?」


つぶやきと同時に、足元に紫色の光が染み出し始めた。






と思ったら、それは波紋のように広がり、オレを中心に真円を描く。















凄まじいスピードでその真円が広がる。




「おおおおおおおおお!?」





円の中には複雑な幾何学模様と文字。





何者かが書き出したかの様に現れ、模様から強い光の柱が立ち上る。











塀や建物といった構造物に遮られる事もなく「ソレ」は広がり続ける。



怖くなったオレはその幾何学模様の円から逃れるべく駆け出した!


これはどう見ても、いわゆる「魔法陣」と呼ばれるものであり、この世界でまっとうな状況では見られない現象であることは明確だ。








それにこの状況は、嫌な予感しかしない。












直径50mはあろうかという大きさまで広がると、唐突に動きを止めた。











カタタタタタタタタタ・・・・・・



右手首に付けた時計から異音がする。



ふと見ると逆回転する針のスピードで時計のベゼルが外れそうになっている。











「何が起こってんだよ。。」





その時、ひときわ大きく大合唱の声が響く!!!











その瞬間、いわゆる「魔法陣」から火山の噴火の様な勢いで紫色の粒子が噴出し、、、、








ーーー  オレは飲み込まれた。  ---
























・・・・・・・・・・・・。





























・・・・・・・・・・・・。








































「・・・ん。」


数分?数時間?どのくらい経ったのか時間の経過が分からない。



不自然な浮遊感と、身体が何処かに流されている感覚で目が覚める。







手足は動く。身体にも特に痛みを感じる部分は無い様だ。




目を開き、辺りを見ると紫色の光で満たされた空間だった。






仰向きになって、、、浮かんでいる?







先程から感じている浮遊感は、液体のソレと言うよりは、重力が弱いといった表現が正しい。

濡れても無いし、服が纏わりつく感じも無い。







そうだ、服を着ている。







辺り紫色の光は熱を帯びていない。だから服も燃える様な事も無い。













「思ったほど不快じゃないな、、、。」


実際、不自然な浮遊感以外は害は無く、むしろ心地いいぐらいであった。





紫の粒子にはゆっくりとした流れがある。



水の様に高低差によって低い所へ流れるというよりは、別のベクトルが働いている様だ。



ただ流れる様は川そのものであり、身を任せてみる。




「あの魔法陣に巻き込まれたと思ったら、今度は漂流か、、、、。」








その後、流れの速い所、緩やかな所を何か所が通り過ぎた。


紫の粒子の濁流に飲み込まれても、呼吸は出来るし息苦しくも無かった。





最初に流れていた川は支流だったようで、大河の様な大きな流れに合流してからは、安定した水面の様な粒子に身を任せている。






大河の両端は既に見えない程の幅になっており、辺りが眩いほどの光を放っており、目を開けづらい。








「アレか、ナ〇シカの光る草原のヤツか。」






くだらない想像しながらも、ようやくここに至って行動を開始する事を思い立つ。







そう、「泳ぐ」のだ。









浮いている間、





後は、どうにもならないこの流れ。ひとまず体力を温存する事にして様子を見る。






「・・・・・・・。」








「・・・・・・・!」








「・・・・・・・!!」








「・・・・・・・・。」









「どこまで流されていくんだろ。。」











流されるまま身体を預けていたが、退屈になってきた。。何となく粒子を手で握ってみる。





ニギ。






「お?これ粘土みたいに固まるのか。」











コネコネ・・・・・・。







コネコネ・・・・・・。






ふむ、、、。










ここを、、こうして、、。











「ふっ、出来た!紫の光るヤツ製ソファー!」






ソファー!・・・ソファー・・・ファー・・







誰も聞いていないこの空間に虚しく響いた。











少量づつ固めてまずは座布団サイズを作り、それを土台にこだわりのマットレスを作成。

背もたれを付けて、手すりを起ち上げ、クッションを作り完成。お値段以上の家具屋もびっくりだぜ。



土台の紫のヤツは固く練り込み、クッションの紫のヤツは柔らかくふんわりと。






そう、紫の光るヤツはとても使えるヤツだぜ。





・・・・何なんだこの紫の光るヤツ。








ともあれ、例の紫光るヤツによって快適なニト◯のソファーを手に入れたオレは、その上にゆったりと身体を横たえ、リラックスした。





「よっと!」



特製ソファーに手を掛け、上に上がる。よしよし。



ズブブ・・




「ん?、、、、うおお!?沈む!?」




そして、ニト◯のソファー共々紫の流れに沈んだ。。。



そう、固まりはしてもあんまり浮かびやしなかった。



無駄な時間だった。。。。















仕方ないのでムダソファーを超デカいビート板代わりに、半分ほど身体を預けて流れを進む。





落ち着いて周りを見渡すと、巨大な筒状のワームホールの様な空間を流れている事が分かった。壁の向こう側を見る事は出来なかったが、先の方で光が見える。










「ようやく終点か。。って、眩しっっ!!!」











目のくらむ様な光の奔流と、突然の浮遊感でとっさにムダソファーにしがみ付く!







しかしソファーを形づくっていた紫の粒子は突然霧散し始め、濃厚な紫の粒子に包まれた状態で光の中、軽く落下する感覚はあったものの、ゆらゆらと浮遊する様にゆっくりと地面に着地。



ブゥゥン!「!?」




紫の粒子は空中に霧散する訳でもなく、身体に吸い込まれるように消えた。







「おいおいおい!身体に害無いのかよコレっ!、、、、で、ここはどこだ?やたら暗いな。。」






真っ暗という訳でもないが、辺りを照らすのは燃える松明がいくつか。焦げ臭いのはそのせいか。


足元に感じる床の感覚だと石の床の様だ。


目が慣れ始めた時、松明の一つがゆらりと動いた。





「、、、、お、終わったのか??あれで?」


渋い大人の男性の声だ。






「だ、誰だ?おっさん?」


姿は見えなかったが、多分ナイスなおっさんだろうとの読みだ。







「・・・おっさんではない。私はオスタ、パラネラ法学院の学者をしておる。」



見ると他の松明も動き出した、囁く様に話し声も聞こえ始めた。どうやら結構な人数の気配がする。



「オスタ・・・?パラネラ?日本人、、じゃないのか?やたら日本語上手いけど。」


「それはありがとう、どうやらそちらの世界との言語交換魔法は正常に作用しておるな。」


「そちらの世界??」


明かりを灯せ!(ニーアライティング)



途端に辺りの壁に、天井に、柱にやわらかい光が灯る。壁材が直接発光しているのか?

石造りの高い天井、どこかのホールの様だ。


周りを見れば、やはりといった感じだが結構な人数に囲まれている。


中世の騎士と見紛う様な形の鎧を着た男が、分厚い無骨なタワーシールドらしき盾でこちらを警戒し、いかにも魔法といったローブや杖を持った女性達が、半透明の膜の様なもので更にタワーシールドを補強している様だ。


いやいや、その布陣でどんだけびびってんだよ。


と、内心毒づいた時、ホールの内部が異常な事に気が付いた。





石造りの床はレンガをほぼ中心として真っ黒く煤けており、辺りのランプらしきものも熱の為か半分溶けている。後ろを振り向けば、背面の壁のほぼ全面にわたって焦げ跡が残り、この地点で爆発的な熱量の何かがこのホール内全体を焼き尽くした様に見える。



「マジかよ、、、、。何があったんだココで。」



背中に冷たいものを感じながら、もう一度おっさんを見る。




警戒したレンガの視線に、オスタはやわらかく笑い、目を細めながら答えた。





「ようこそ、転移者のキミよ。自由と探究者の街、浮遊都市パラネラへ。」






しっかりと作り込んで行く為には、、時間との戦いですね。。六苑寺家については、後々また突っ込んで描いて行きたいと思っています。

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