どうしてこうなった
酔った勢いで投下。プロローグ的なモノ。
「……ファッ!?」
とある真夜中、尿意から目を覚まし、自宅トイレへ向かった俺だったが、突然目の前に草原らしき景色が広がっていた。
なんやのん、これ?
「……んー……暗い」
草原『らしきもの』ってのは、あまり視認できないからである。
まあ、真夜中ですし。
「……うん、夢だな」
寝ぼけ眼の俺は、夢の中と判断。なんか尿意も収まってるし、きっと出すもん出して再びベッドに潜り込んだのだろう。よし、問題ない。
「夢の中なのに超眠い……おやすみなさい」
男の独り暮らしも、長く続けば独り言が増える。
そんなことを思いながら、ふかふかの草の上で横になって俺は瞼を閉じた。
(しかし、さすがは夢だな、呟いていた俺の声、超くぎゅーだったわ……)
―――この世界に来て、初めての記憶が、そんな曖昧な記憶だった。
■
「おはようございます。どこでしょうか、ここ」
超くぎゅーな声で呟く俺であります。おはようございます(2度目)。
ハハハ、俺ってばまだ夢の中なんだな。
「しかし、沸き起こるこの尿意、如何ともしがたく……」
さっきトイレに行ったような気もするんだが……そう言えば、なんだかんだで致した記憶が無い。
「くぎゅーーーー!!!」
早朝の中、俺の超くぎゅーな声が空しく響き渡る。
い、いかん、尿意が俺の集中を苛むが、何とかして落ち着こう。
大事。状況整理、超大事!
問、まずここはどこだ?
答、わかんない。たぶん夢、だと思いたい。
問2、今は何時だ?
答、わかんない。まだ薄暗いから、たぶん早朝。体感としてはさっき一度起きてからおそらく1時間くらい。ていうか夢だってばよ。
問3、なんか声おかしくない?
答、わかんない。そんなことよりトイレはどこですか!? 目覚めろ俺!!(中二的な意味でなく)
状況整理、失敗!
「ううううう、そろそろ限界……」
これが夢だとした場合、この状態で致すことは即お漏らしを意味してしまう。僕もう三十路なのに!
「……なぁに、どうせ一人暮らし、いざとなれば起きてすぐシーツとパンツを洗ってしまえば無かったことに……出来る! 否、してみせる!」
よし! 決めてしまえばあとは致すだけ!
幸い周りは草木が茂る草原! 人目に付く恐れも少ない(そもそも人影が無いし、夢の中なら、見られたところでなんてことないのだが)。
「程よい茂み発見! これより立ちション行為に移る!」
そして、寝巻(どっかのホテルからがめてきた浴衣)を肌蹴て臨戦態勢に移ろうとしたその時、俺は問3の真の答を導き出した。
―――居るべきはずの、象さんが、居ません。
ファイナルアンサー。今の僕、女の子です。
「くぎゅーーーーーーーーー!!!!!!」
もはやパターン化していた叫びを漏らしながら、俺は漏らした。
■
「……なんじゃ、こりゃあ……」
力なく呟く。
とりあえず出すもん出してすっきりしたのは良いんだが(パンツが濡れてるので良くもないが)、頭の中もすっきりしたことで幾つかの事柄に気付き、俺は呆然とする。
一つ。これ、たぶん夢じゃないです。
たまにある明晰夢かとも思ったけど、頬っぺたつねったら普通に痛かったです。ていうかこのパンツ濡れてる感覚が夢じゃないです。
一つ。どう見ても自宅付近じゃありません。ていうか、まわりの植物を改めて観察したところ、恐らく日本じゃないです。
だってあんな青くて六芒星みたいな葉っぱの植物、ネットでも見たことないです。ていうか、地球レベルで存在が怪しい。
ということは、ですよ。
「……異世界じゃないですかーやだー」
そんな俺の言葉を裏付けるがごとく、二つの太陽が昇ってきた。
「異世界、異世界かあ……。最近のイージーモード異世界の場合って確か、いくつのパターンがあったよなあ」
零細企業勤めの三十代独身、趣味はネット小説乱読です。異世界だからと言って、動揺なんてありませんとも。
「まずは、どのように異世界に来たのか」
今回の場合だと、事故に遭って云々は無いな。直前の記憶、自宅の廊下だし。
自称神様にも会ってない。何かきっかけとなるゲームとかをしていたわけでもない。
でもって起きた時点で周りに誰もいないってことは勇者召喚とかの類でもない、と。
神隠しパターンだな。比較的難易度が高いパターンだ。
「で、何かしらのチートアイテム的なものがあるのかないのか」
手には当然何も持ってないし、周りに特に何かが落ちているということもない。寝巻の中も漁ってみたが、特に何もない。
更に難易度が上がった。
「ならば何かしらのチート能力を持っていないか」
徐に『ステータス』と念じてみるが、何も起こらず。『アイテムボックス』とか『ストレージ』とか念じても何も出ない。
……この時点でイージーモードの線は消えたな。
「……で、身体能力的なチートは……」
その場で飛び跳ねたり、少々ランニングなどを行ってみる。
比較的、身体能力が上がった……というより、中学時代の全盛期の体力に戻った感じ?
いや、これってむしろ戻ったというより……、
「多分、若返ってる? つーかそれも驚きなんだろうけど……」
はい、ここまでで一番の特異点、というか謎事象を直視してみましょう。
先程ランニングして辿り着いた水場で、その水面を覗き込んでみた。
「物凄く、美少女です……」
やっぱり俺、女体化してます。
興味本位で体触ってみたら、お肌すべすべで、更になんか胸の辺りがぷにぷにしてました。あと、髪の毛めっちゃ伸びてます。
「どどどどどどないなっとんねん工藤……」
やばい、混乱が止まらない。
動揺なんてありませんと言ったな? あれは嘘だ!
「異世界ってだけでもアレでナニなのに、ナニが消えてるとか、って誰ウマーーー!」
日が昇り切るまで、動揺を堪能しました。
■
ジャブジャブと水場でパンツを洗う美少女こと俺。
いやはや、近場に川があってよかったよかった。
見た感じとても透き通っていて、試しに飲んでもみたが、特に問題はなかった。
これで食糧さえ確保できれば飢えることはなさそう。幸い、周りには木の実みたいのが沢山茂ってるし。
あ、でも毒とかあったら困るな……。まあ、何かしらの動物が食べてないかどうかを観察してみるしかないか。
ていうか動物って言ったって野生動物だろ? ワイルドライフでしょ? 俺、獣医免許持ってないけど大丈夫か?
一種の現実逃避ではあるが、生死に関わりそうな彼是を考えて(?)一心にパンツを洗う。
ちなみに寝巻きが浴衣だったおかげか、被害はパンツのみだ。
この状況を客観的に捉えるならば、動揺して漏らしちゃった美少女が無心にパンツを洗うの図である。女物の下着でないのが残念でならない(?)。
洗い終えたパンツは、その辺の木の枝に引掛ける。幸い、日が昇ったばかりなので、お昼前には乾くだろう。
なーに、いざとなればノーパンだって大丈夫だろ。だって美少女だし!
うん、普通に現実逃避してますけどなにか?
だってさー。この状況って控えめに言ってもアレだろ?
「……どうしてこうなった」
この一言にしか集約されないじゃん……orz
酔った勢いでこれから続きを書くのです!なのです!
2015/9/8 段落や行間を修正。